検証と対策 HMR(家庭内食事代行) 新時代型の買い物スタイル
ワーキングマザーは、毎日毎日悩んでいる。「勤めから帰って食事の支度をするには忙しすぎるし、外へ出て食事をするには疲れすぎている。やっぱり自分で手をかけた料理を家族に食べさせたい。だからといって、そこらの市販の惣菜では物足りないし…」。消費者のこの悩みを解決することこそ、今後の食品業界の使命というわけで、アメリカでは“ミール・ソリューション(食の解決)”が盛んに研究されている。その具対策として、「家庭内食事代行業(HMR)」という新業態が現われ、世界中の注目を浴びている。単なるスーパーマーケットでもない、レストランでもない、コンビニでもない、新時代型の買い物スタイルを検証した。
会社が終わって「まっすぐ帰宅」する人は、女性(四〇・六%)より男性(八二・四%)に多い。これは旭化成・共働き家族研究所が、仕事を持つ三〇~五〇代の男女に対して『アフター5の過ごし方』について調査した結果分かったもの。
八割方の男性が寄り道せずに帰宅しているのに対し、女性はどこで道草をくっているかというと…。「保育園やスーパーに立ち寄り帰宅」と答えた人は女性四九・一%に対し、男性はわずか三・九%。
ちなみに家事・育児以外の理由で「どこかに寄り道して帰宅」と答えた人は男性の方が多い。同研究所では「職場を出ると即家事・育児に対応せざるを得ない女性の生活ぶりがうかがえる」としている。
スーパーマーケットは単に食品、食材を売ることだけでは生き残れなくなったが、これは今に始まった話ではない。すでにアメリカのスーパーマーケットの七四%はデリカテッセン(惣菜)売り場を強化しており、しかも三四%のスーパーは二四時間営業体制に入っているという。
が、アメリカの現在のテイクアウトのシェアは、約半数がファストフード(マクドナルド、ケンタッキー)などで、スーパーマーケットのそれはわずか一二%にすぎない。低価格・安全素材…、消費者はいまそれ以上の「食の市場」の変革を要求しているのだ。
「家で食事をしなければ駄目だ。みんなバラバラでは家庭の崩壊につながりかねない」。
過半数の世帯が共働きのアメリカでは、家族関係への危機意識の高まりから、「家庭での食事」の重要性が見直されている。
家庭内の調理時間は、平均で三〇分を切っており、二一世紀には二〇分に短縮されると予測されている。昔のように女性が専業主婦に戻ることは、もはやありえない。家事をできるだけ効率化し、浮いた時間で家族と交流する、そうした新しいスタイルの「家庭回帰」が望まれている。
それだけに「食」の外部サービスの利用については積極的になる。よそで出来上がった食品をそこで食べるか、家庭に持ち帰ってみんなで食べる。
それは、従来の補足的なおかずのようなものでなく、本格的に、しかもおいしく、みんなが喜んで食べられるものでなければならない。