外食史に残したいロングセラー探訪(100)釜たけうどん「ちく玉天ぶっかけ」
◆「グミもち!」大阪讃岐うどん 半熟卵の簡単なむき方を動画で配信
大阪讃岐うどんというジャンルをつくった「釜たけうどん」。漫才・落語・吉本新喜劇を公演している「なんばグランド花月」から歩いて数分。だし文化といわれる関西自慢のだしに、軟らかさを感じつつも、讃岐うどんのようなコシがあるうどんが食べられる店だ。店主の木田武史さんは、「ちく玉天ぶっかけ」の他にも、全国に広がるメニューの考案者でもある。
●商品の発祥:世の中にないものを出したい!
2000年、香川県で冷たい讃岐うどんにつけだしをかけた「ぶっかけ」を食べた木田さんは、そのおいしさに衝撃を受ける。当時、大阪の冷たいうどんといえば、冷やしうどん。そうめんのように、氷水を張った器にうどんを入れ、つけだれで食べるスタイルだ。会社員だった木田さんは、うどんを知りたくて、うどんブロガーとして約1年、大阪内を食べ歩く。03年にうどん店を開業。コシの強い讃岐うどんをそのまま大阪に持ってくるのではなく、研究を重ね、関西人がおいしいと思う、うどんとだしを完成させた。
●商品の特徴:インパクトある見た目と食感
大阪讃岐うどんの特徴は、口に入れた瞬間は滑らかで軟らかいのに、かむとモチモチしたしっかりした食感がある。「簡単にいうと、グミもち。ただ硬いだけではダメ」と木田さん。その麺が、真昆布とサバやウルメなどの雑節からとっただしと、いい相性で、お互いのおいしさを引き立てる。
具材も讃岐うどんからヒントをもらった。香川でも人気で、インパクトとオペレーションから、流通している中で一番大きなちくわと、人気の兆しを見せていた半熟卵の天ぷらにする。
●販売実績:普及させる方法とは?
「ちく玉天ぶっかけ」を普及させたいと考えた木田さんは、「他店でもやってもらおう」と思いつく。ネックとなる半熟卵のむき方をネットで公開。使用するスプーンも配った。採用店はホームページで紹介し、お互いに宣伝をして広がっていった。
メニューの中でも「ちく玉天ぶっかけ」は約70%のオーダー率。お昼のみの営業で100杯前後出ることも。11年には、「キムラ君」というキムチとラー油、豚肉などをのせたメニューを考案。ポスターも作った。商標登録をした上で、版権フリーにすると、1年で130店にまで広がり、コンビニ弁当やスナック菓子にもなる人気料理となった。「次なるメニューも考えています」と木田さん。うどんの定番メニューがまた増えそうである。
●企業データ
店名=難波千日前 釜たけうどん/所在地=大阪市中央区難波千日前4-20/店舗数=3店。難波千日前の他に、大阪・梅田、東京・八重洲にもある
事業内容=うどん専門店。営業時間は、午前11時~午後4時。麺が売り切れたら閉店で、ほぼ15時過ぎに終了。店主の木田さんは、うどん業界の活性化にも力を入れ関西を中心に「新麺会(しんめんかい)」を発足。年1回100軒近くのうどん店と、100人以上のブロガーやマスコミ関係者が集まり、盛大な情報交換の場となる。