非常食にも「サブスク」「時短」など時代の波

自然災害大国である日本。2019年も、地震や記録的台風・土砂災害など例年以上にあらゆる自然災害が発生した。セコムが20代以上の男女に実施した「防災に関する意識調査」では、約9割が「今後の災害増加を懸念」と意識が高まっており防災対策をする人は4割超えている。そんな中、最も多くの人が実際に行っていると答えた防災対策が「食料・生活用品の日常的な備蓄(ローリングストック)」だ。近年、非常食は「賞味期限の長さ」だけでなく味のバリエーションや便利さが求められる傾向になっており、メーカー側も既存商品を新たな手法で販売する例も出てきている。

被災時も「非常食」より「日常に近い食事」を摂取できたほうが安心できる

ある程度の賞味期限の長さを持ちストックしておける食品を、日常的に消費し、使った分を買い足して備蓄しておく循環備蓄法が「ローリングストック」だ。レトルト食品・缶詰・フリーズドライなど、日常の食生活の中でよく消費する食品を、多めにストックしておくケースが多い。

日常の食生活の中でよく消費する食品を多めにストックしておく「ローリングストック」

フリーズドライで有名な「アマノフーズ」は、定番の味噌汁類だけでなく、親子丼や中華丼といった、ごはんの上にのせる「餡」やリゾットも部分もお湯を注いで完成させる商品も販売。これらをセットにした「食べながら備えるローリングストックBOX」(税込み5000円)も販売している。

食べながら備えるローリングストックBOX(アマノフーズ)

また、アマノフーズブランドを展開するアサヒグループ食品は、2017年に広島県福山市と災害時応援協定を締結。災害時には市からの要請によりフリーズドライ食品などの物資提供を行う協定を結んでいる。

実際に被災した経験のある方からは「温かい食事をして、やっと生きている実感がわきました」などの声が出ており、その食事は被災者の心をも温めている。

「水の確保が難しい」という声を反映して生まれた商品も

このほか、レトルト食品では飲料水の確保が難しいという被災地の声を反映させ、湯煎を必要としない「温めずにおいしく食べられる カレー職人」といった、商品も。

温めずにおいしく食べられるカレー職人(江崎グリコ)

このように味噌汁や丼、カレーといった “国民食” がどんどん、非常時にも食べやすくなってきており、保存食にできる商品が続々と増えている。

また、賞味期限の長さを備えつつ、バリエーションの多さ・パッケージのオシャレさで日常的消費にも気を配った、杉田エースの「IZAMESHI(イザメシ)」シリーズには、缶に入ったマフィンや、開封してすぐに食べられるごはん・おかずもある。

日常的に食べるイメージがつくこういったメニューなら、災害時だけでなく、仕事で疲れている時や体調を壊した時など、小さな “いざ” という時に役立つのが嬉しい。

あずきマフィン(540円税別)ほか(IZAMESHI)

カップ麺をサブスクで

カップヌードルでお馴染みの日清食品は、サブスクリプション(通称:サブスク)のサービスを開始している。

サブスクリプションといえば、最近では音楽配信からファッション・家電など、多岐にわたって「定額」「定期便」などのサービスが増えているが、ローリングストックもサブスクでと提案しているのが、日清食品だ。

カップヌードルローリングストックセット(日清食品)

日清食品が2019年9月に発売した「カップヌードル ローリングストックセット」は、カップ麺やカップライスなどおすすめの9食とカセットコンロ、カセットボンベ、保存水など必要なものをすべてそろえてボックスで配送してくれる。

このセットのみの購入も可能だが、サブスクリプションのサービスを利用すると、3ヵ月ごとに入れ替え用の商品が9食(13種類の商品から好み9食を選択できる)届くため、賞味期限の管理を自分ですることなく、備えておきたいカセットコンロなども付いてくるという便利さがある。

メーカーとしては定期的に商品を販売できるというメリットもあり、防災をキーワードとした商品やサービスは今後も増えていきそうだ。(メディアプロデューサー 伊藤みさ)