ドラッグストア特集
ドラッグストア特集:数字から見るドラッグストア 食品比重高まる
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が公表した2019年度版「日本のドラッグストア実態調査」によると、全国総売上高は前年比5.7%増の7兆6859億円だった。店舗の大型化が進み、1店舗当たりの売上げも伸びている。ただ、主要企業の18~19年度実績は売上げの伸長率にばらつきが見える。M&A(企業の合併・買収)による拡大を除けば、郊外型フォーマットか調剤薬局の方がより多くの出店機会を得ている。郊外立地の大型店の増加は、食品売上げの伸長につながっている。19年10月の消費増税や新型コロナ拡大の際にも、食品の備蓄需要が向かう先としてドラッグストア(DgS)は存在感を示した。(宮川耕平)
●郊外型・大型化が進展 1店舗当たり年商3.5%増
全国の推定店舗数は2万0631店、前年に比べ1.9%増だった。総売上高の5.7%増に比べ店舗数は伸び悩んだが、一方で売場の大型化が進んでいる。1000平方m(300坪)以上の構成比は前年から3.3ポイント上昇し18.2%となった。1000平方m以下の各階層はいずれも構成比を落としており、DgSの大型化は顕著だ。この傾向を反映し、1店舗当たりの年商も3.5%増と伸びている。
商品分類別に見ると、食品を含む「その他」の伸長率が最も高く8.1%増だった。売上高は2兆1039億円、初めて2兆円台に乗せた。構成比は前年から0.7ポイント増の27.4%で、医薬品の31.2%に次いで高い。その医薬品も含め化粧品、日用雑貨は構成比を落としており、食品の比重が増している。
JACDSの統計と重なる部分の多い18年度の主要DgSチェーンの業績は、上位2社がM&Aで2桁伸長した結果、ツルハホールディングス(HD)が業界首位となった。しかし19年度には再びウエルシアHDが首位に返り咲く見通しだ。それも21年10月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合により首位の変更は確実で、統合会社は1兆円規模になる。業種としてのDgSの拡大は上位集約を伴っており、M&Aや大量出店による成長ペースは急速だ。19年度は上位6社の売上げが5000億円を超えており、さらに4社は6000億円を超える規模になっている。
3000億円以下のチェーンは上位と規模の開きは大きいものの、それぞれの地域で急成長を続けている場合がある。クスリのアオキHDは18年度からの2桁成長で19年度には3000億円に到達する見通しだ。1000億円規模のGenky DrugStores(ゲンキー)、薬王堂も2桁前後の成長を続けている。
食品売上高ではコスモス薬品が首位、18年度で3438億円だった。DgSで断トツというだけでなく、同社が扱う日配・グロサリーの売上高を比較すれば、食品スーパー(SM)首位のライフコーポレーションの19年度実績をも上回る。
食品の構成比が5割を超えるのは、表3でコスモス薬品とゲンキーの2社だった。3~4割台は4社、2割台が3社、ココカラファインは1割台、マツモトキヨシHDは1割未満とチェーンによって差は大きい。食品比率や調剤導入の割合で、同じDgSでも収益モデルは異なる。
ただ、食品の構成比は総じて高まる傾向にある。購入頻度の高い食品は客数アップに貢献するが、補充作業など売場の管理業務を増やす側面もある。恒常的な人手不足もあって18年度の販管費比率は増加傾向にあり、営業減益となるチェーンが増加している。食品構成比が高まる限り、オペレーション改善は各社の課題になる。
●備蓄需要のインフラに
経済産業省がまとめた商業動態統計を見ると、備蓄需要が高まる局面でDgSの存在感が増していることが分かる。19年10月に消費税で複数税率が導入された際、直前の9月にDgSの全売上高は前年比21.8%増となった。食品の増税対象は酒類などに限定されていたが、それでも同月の食品売上高は同15.9%増に急伸している。
直後の10月に総売上高は同0.2%増にとどまったが、食品は同7%台の伸長率とそれまでのペースを維持した。その傾向は、新型コロナウイルスの感染拡大まで続き、総売上高をけん引した。
感染拡大の影響が本格化した20年2月には、DgSの総売上高はマスクや除菌関連など衛生用品を中心に同19.1%増となった。同時に高まった食品の備蓄需要をとらえて、食品売上高も同17.9%増となっている。翌3月も、衛生用品は供給不足で伸長率が鈍化したが、食品は同18.2%増とさらに上昇した。
非常時の動向を見ても、食品の購入チャネルとしてDgSが定着していることが分かる。3月の食品売上高の伸長率は、SM3団体の統計が示す日配・グロサリーの伸長率よりも高い。低価格でSMよりも近隣にある業態として生活者に浸透していることが、備蓄商品の購入先としての支持につながっている。
このようなDgSへの期待は、自然災害の発生時などさまざまな局面で高まるはずだ。今後はヘルスケアに限らず、食のライフラインとしての機能も重視される。