清酒特集

◆清酒特集:消費者ニーズに対応した商品提案 欠かせないブランド力強化

酒類 2020.11.06 12143号 08面
パックや中小容量瓶など多彩なラインアップ

パックや中小容量瓶など多彩なラインアップ

GI灘五郷「ひやおろし」商品の発表会

GI灘五郷「ひやおろし」商品の発表会

 秋冬の最需要期を迎える清酒業界。コロナ禍の中、業務用市場の落ち込みの影響を受けているものの、「巣ごもり消費」の広がりによる「家飲み需要」が高まったことを受け、近年は低迷していた大容量パック系の動きが好調に推移。日常の中で「ちょっと良いもの」を求めるニーズも見られ、特定名称酒の四合瓶の堅調な動きも見られる。健康志向の高まりから、「糖質ゼロ」などの機能性商品も伸長が続く。販売チャネル別では「非接触」の観点からEC事業が伸びている例も。例年は各社から多くの新商品が投入される時期だが、コロナ禍の今季は、定番商品の販売に注力する動きが顕著だ。一方で新商品のラインアップでは、「冷やして飲む日本酒」需要に応じたものや割り材としての提案、日本酒ベースのリキュールなど、消費者ニーズの変化に対応した展開が見られる。(藤林敏治)

 ●コロナ禍で定番訴求も

 20年1~8月の全国清酒課税移出数量は23万3757.2kl(日本酒造組合中央会まとめ、一部概数)で前年比12.6%減となった。コロナ禍で苦境が続く業務用市場の影響が出た。また8月下旬から9月にかけては、前年の消費増税前の仮需の裏返しにも見舞われている。

 ただ日本酒の魅力を広く訴求していく上で明るい話題も。兵庫県の伊丹・西宮・灘の400年を超える伝統と革新の酒造りのストーリーが、「『伊丹諸白』と『灘の生一本』下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷」として、文化庁から20年6月、日本遺産として認定された。

 日本遺産とは、文化庁が地域の歴史的魅力や特色を通じてわが国の文化・伝統を語るストーリーとして認定するもの。日本酒をテーマにしたストーリーが認定されたのは、今回が初めてだった。

 また清酒の需要を振興していく上ではブランド力の強化は欠かせない。国税庁は、清酒の地域ブランドとして独占的に名乗ることができる「地理的表示(GI)」について、今年に入り3月に兵庫県播磨地域の「はりま」、6月に三重県の「三重」を新たに指定した。

 また国税庁は8月、すでにGIに指定している「灘五郷」の生産基準について、新たに「秋上がり」の酒である「冷卸(ひやおろし)」を定義化。ひやおろしは、灘五郷ブランドにおける特徴的な品質を有する酒として、消費者の商品選択に資するとした。これを受け9月以降、灘五郷の6酒造メーカーから計7種のひやおろし商品が発売され、清酒の最需要期に向け、機運を盛り上げた。

 新型コロナウイルスの感染防止対策として、10月1日の「日本酒の日」に合わせて毎年開催される「全国一斉 日本酒で乾杯!」や各地の酒蔵イベントは、今年はオンラインで開催する動きが広がった。「新しい生活様式(ニューノーマル)」の中で、清酒市場の活性化を模索する動きは続く。

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