トップインタビュー サッポロライオン・山根義夫代表取締役社長
‐‐外食産業はいぜん混とんとした状態が続いているが、そのなかでビアホール業態の現状をどのように捉えていますか。
山根 競争は以前に増して熾烈化している。特に目立つのは大型居酒屋店との競合だ。物件の下落に伴い、いままで地力をつけて来た居酒屋チェーンが積極的に大型店の開発を進めている。和風ビアホールと位置けられるそれらの出現で、既存のビアホールではかつての存在価値が色あせ始めている。また、最近は食事を楽しみながらアルコールを飲むスタイルが増加しており、一般レストランも“アフター5”の集客戦略としてアルコールを充実させている。アルコールの場面は各方面に普及したことで、ビアホールとその他の業態との垣根が崩壊しつつある。
もとより外食産業は参入規制がないに等しい業種。景気低迷が続いている他業種からの新規参入も増える一方だ。それだけにさまざまな技術革新、多様な展開コンセプトが日々生まれている。ユーザーニーズ、時代の流れに敏感でなければ老舗といえどすぐに取り残されてしまう。厳しくともやりがいがあり面白い時代を迎えていることで、成長産業としての位置付けは今後もさらに色濃くなるものと見ている。
‐‐そのような現状に対し、どのような姿勢で臨むのですか。
山根 いままでサッポロライオンは生ビールの宣伝所という役割を果たして来た。だが生ビールが普及した現在は、そのコンセプトをさらに特化しなければならない。すなわちビアホールからビアレストランへの脱皮だ。“日本一おいしい生ビールを飲ませる”という既存の展開コンセプトに、“生ビールに合う日本一おいしいおつまみ”とする新たな題目を付け加えている。
株式上場を機に打ち出した合い言葉に“Joy Of living”がある。“生きている喜び”と直訳するがそれとは別に“ストレス解消”という意味が込められている。物が豊かになり情報化の進んだ現代は、人とふれ合う機会が減りストレスもたまっている。食事によるコミュニケーションはそれらを解消する最善策である。
食事で新たな活力をみなぎらせるためには、メニューやサービスに遊びを加えて場を盛り上げるなどの工夫が必要だ。だいたい日本人は欧米に比べて食事の時間が短すぎる。恵比寿ガーデンプレイス内の「タイユバン」では、お客の滞在時間は三時間が普通と聞いている。豊食の時代を迎えている現代、日本人は食事の楽しさをもっと追求すべきだ。また食事のもたらすさまざまな効果を享受すべきだ。サッポロライオンはそれらの啓蒙に注力する方針。
‐‐具体的な対策は‐‐。
山根 家族層に着目し、地方展開を積極的に進めるつもりだ。家庭料理が減って一家団らんの場がなくなりつつあるが、これは核家族の子供が成人化したことに起因する。つまり、現代の家族は一緒に住んでいるものの、それぞれがプライベートな生活を持ち始めており、コミュニケーションの機会が減っている。家族のきずなを保つために“週に一度くらいは家族揃って外食しよう”とする機運が高まると見ている。
そうなれば、家族全員が成人化しているのでアルコールは不可欠。それにユーザーがFRに飽き始めている現状を合わせれば、地方型のビアレストランのニーズは高まる一方であろう。
具体的な新規出店については、いままで一〇〇坪以上を基本とした店舗を三〇~五〇坪くらいに縮小して軽装備の展開を図る。また居酒屋が若者に受けていることに着目して、和風をキーワードとした店舗やメニュー開発を推進。若者層を集客して年配色の濃かった既存のイメージを少しずつ変えて行く。その他、FC展開、のれん分け制度、地域社員の採用を積極化する。
新業態についても三〇~五〇坪の軽装備出店を行い、それぞれに専門店化を目指す。もとよりサッポロライオンでは、さまざまな専門店を打ち出しているが、サッポロライオンと同じビル内で展開したり、メニューが相互に入り交じったりして、専門店としてのアイデンティティが色あせていた。これらのメニューや展開パターンをリニューアルして専門性をさらに研ぎ澄ましたい。
また、ビアパブのチェーン化にも乗り出す考えだ。日中は喫茶店で夜はビアパブにチェンジする二毛作型のもので、ビアパブ時には椅子を取り払い、つまみは二品位に絞り込む予定。気軽に立ち寄れる店舗展開を目指す。本社の一階に今月オープンするカフェでビアパブのノウハウ構築に先べんを付ける意向だ。個人的には駅そばのように日常化したビアパブのスタイルを打ち出したい。
‐‐さまざまな出店を考えているようですが、グループであるサッポロビールの得意先(飲食店)とのバッティングについては。
山根 いままでは生ビールの宣伝所という役割が大きかったので、出店についてはなるべく他店と競合しない場所とする制約があった。だが外食市場の急成長により、出店についても許用範囲が広がっている。いままでは物件の情報をいただき受け身の形による出店が多かったが、いまはグループ企業(サッポロビール)の支社に情報収集の援助をあおぎ、自ら積極的に物件捜しを進めている。
だが、グループ企業(サッポロビール)と足並みを揃える既存の基本路線は変えられない。サッポロライオンは生ビールを通じて地域を活性させることが目的であり、他店を淘汰してまでの無節操な出店は控えなければならない。グループ企業である限り宿命であると考えている。他店と共存共栄を図るのは至難の技であり、すぐに利益を出すのも難しい。しかし長い目で見れば、無節操な出店に比べて地域の信頼を得られるし、後々地域の飲食店を牽引する大きな役割を担えるはずだ。
‐‐ビアホールの雄として今後どのように業態をリードするか。
山根 ビール文化を構築する基本理念は変わらない。だが、それに付随するサービス、メニューについて、さらに工夫をこらして行きたい。それにはあらゆる合理化、コストダウンが必要で、ついては“協調と競争”がキーワードだ。同業種企業が提携して一括仕入れするなど、同業種企業が協調してスケールメリットを引き出す姿勢が必要。そしてユーザーへの提供方法で勝負すべき。サッポロライオンでは仕入れ提携の打診をすでに始めている。近いうちに実現するはずだ。
‐‐今後の活躍に期待します。ありがとうございました。
「サッポロライオン」(東証二部上場)=明治22年に日本初のビアホールを東京・銀座に開業したビアレストランチェーンの最大手。現在は看板のビアホールのほか、和食、フランス料理、焼き肉などさまざまな業態を展開。全国に二〇一店舗を有する総合レストランチェーンと化している。
昭和9年大阪市生まれ。大阪商大(現大阪市立大)卒業後、日本麦酒(現(株)サッポロビール)入社、同社常務取締役を経て今年の3月(株)サッポロライオン代表取締役社長に就任。
サッポロビール時代は業務用の営業一筋。ビール文化の最先端と透き間なく接してきたといっても過言でない。それだけに外食産業の厳しい現状を何とか盛り上げようと必死だ。「一番悪い時に就任したが、それだけに面白い」という言葉は、業務用畑の厳しさと、大阪という商売の地で長年過ごして来た自信の現れか。社長就任から六ヵ月してさまざまな具体策を打ち出し始めた山根氏の考えを聞いた。
(文責・岡安)














