飲食トレンド 米飯新時代、多様化する流通・広がる選択肢

1995.10.16 87号 1面

いよいよ11月から昭和17年に制定された規制だらけの食管法から自主性が尊重された新食糧法に改正される(表参考)。ヤミ米が正当化されただけ、自由化の背中合わせにリスクがあると冷めた見方がある一方で、「コメビジネスがおもしろくなる」と一部生産地、流通、小売、末端ユーザーはもとより、炊飯機メーカーなどコメ・炊飯に関わる業態がそれぞれソロバンをはじいて動き始めている。「外食のご飯は炊きあがりがふんわりと見た目も味もおいしく、価格が安ければそれにこしたことはない。銘柄単品のブランド志向と価格重視のブレンド志向に二極化するのではないか」(全糧連業務部大進部長)と見ており、新米の便りと同時に米飯新時代が幕開けした。

新法の規制緩和により、コメの販売が許可制から登録制になることから販売を手がけるところが続出、「かなり売り込みが多くなりました。よりよい条件のところと契約できるのでありがたい」(飲食店)。半面、売る側としては値崩れが懸念されるところだ。特別栽培米(有機・低農薬)を生産者指定で二~三割位高く値付けして商品化していたが、コメの価格破壊が始まったら採算がとれなくなってしまうと言う声もある。

もっとストレートに問屋無用論もある。すかいらーくグループの食材仕入れを一手に請け負うSGMは「産地から直接仕入れる」(横川社長)。中間物流費の削減と品質管理の両側面からである。当面はペーパーのみ卸・小売経由とするが二年もしたらそれもなくしたい方向だ。コメは熊本県と栃木県の経済連が集荷した銘柄米を指定して仕入れる。

また、同社は一部実験として、有機米を試作している。食材としてのおいしさと健康を要求されているということと、有機栽培によって収量が約二割増しになることが見込まれるため、生産者側、外食側ともにプラスになり安く仕入れた分、レストラン利用者に還元できる環境が成り立つと想定している。

有機栽培のコメを使用したら販売量が急増したというのはニチレイの関連会社で惣菜店や外食店などを経営する日本ばし大増である。新食糧法を機に米穀小売店として登録、首都圏で展開する持ち帰り弁当店「大膳」で11月から岩手県東和町産の有機栽培米「ひとめぼれ」を販売する。農薬などを使用した同銘柄米よりは一〇~一五%ほど高くなる見通しだが有機に対するニーズは高いとみている。

このようなブランド志向とは相反してブレンド米、外国産米ニーズもこれまた高い。「牛丼にはブランド米は合わない。少し硬めで、タレを含んで肉をまぶしてちょうど良い具合になるようにブレンドしている」のは牛丼の吉野家。将来的には現在肉を吉野家スペックとして購入しているように国内の産地や農協とタイアップして吉野家スペック米を作りたいという。輸入米を意欲的に検討しているのは給食大手のシダックスである。

いずれにしても流通経路が今までの一本から多岐になるこの機をいかにうまくつかむかがコメ離れした客をつなぎ止める好機であることは確かのようだ。

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