コンビニ3社は顧客を巻き込みSDGsの見える化を推進
SDGsやサステナビリティなど世の中の流れとともに、企業は持続型社会に向けたさまざまな試みをしている。コンビニエンスストアも各社の目標設定や試算を出しており、客にとって身近でわかりやすいものもある。コンビニは客と店側がじかに接する場として、身近で影響力もある存在の一つであり、注目されるところだ。そこで今回は、客を巻き込んだコンビニのSDGs について考えてみたい。
【ローソン】量り売りでプラ削減
ローソンは、客が蓋つき容器を持参すれば、おでんの候補商品から5個以上購入することで39円(税込み)の割引を始めた。「捨てる容器」を持つ代表格ともいわれるコンビニの、容器持参を促す取り組みは新鮮に映る。また弁当、「MACHI café(マチカフェ)」、ドリアなど一定商品のパッケージを紙製に変えている。
ナチュラルローソンから始まり、昨年12月からローソン一部店舗でも始めたのは、プラスチック削減取り組みの一つとして、洗剤、シャンプーやハンドソープの量り売りだ。現在は「ドライフルーツ」と「ナッツ」など食品もある。
【セブンイレブン】コンビニに最適化されたエコバッグ
セブンイレブンでは、オリジナルのエコバッグが大人気となった。もともと「セブンマイルプログラム」の特典として作られた非売品で、セブンイレブンやイトーヨーカドーなどで買い物し、貯まったマイルと交換できる。しかし交換開始後、わずか1分で6000個の在庫がなくなったほど。さらに受注発売されることになり、今はオンラインで購入可能だ。
ヒットの理由は、デザインのユニークな発想と、使い勝手のよさだろう。いわゆる今まで無料でもらっていたコンビニのポリ袋のデザインなのだ。底のマチが広く作られているため、通常のエコバッグでは偏ってしまったり大きくて入れづらいコンビニ弁当が無理なくしっかり収まる。汁もれの心配も不要だ。素材は、ポリエステル素材だから破れにくいうえに撥水性もあり、冷凍食品を入れても結露が気にならない。小さく畳めて、すこぶる軽量だ。
このエコバッグを見ると、改めてこのポリ袋が合理的でコンビニ利用のコア層にとって精巧なデザインであったのかを認識させられる。これまで無料だった、特に意識もしなかったコンビニポリ袋のデザインを、視点を変えてヒットビジネスにつなげる企業姿勢は“さすが”といえる。
【ファミマ】エコ割で食品ロスを削減
ファミリーマートでは、バーコード付き割引シールを貼った商品を、会計時に値下げする仕組みの「エコ割」を導入している。それまでは、シールの割引率に応じた対応が必要だったが、バーコード付きシールによって効率化され、ミスも減少した。
1日に4回、消費期限を確認するタイミングがあり、これまで値引きシールの対応が難しかった加盟店でも、簡単に値下げできるようになったという。天候や近隣のイベントの影響などによる商品の売れ残りを減らし、効率よく販売できるようになり、食品ロスの軽減に期待を持てる。
環境の中長期目標である「ファミマecoビジョン2050」という目標を立て、その中で、商品の消費期限を伸ばす「ロングライフ化」にも取り組んでいる。また、地域に密着した取り組み「ファミマフードドライブ」は、客の自宅に眠っている保存食品を店舗内の専用ボックスに入れると、地域の「こども食堂」などに運ばれる取り組みだ。地元のNPOが回収と運搬を担う。
さらに、ファミリーマートは「ファミマ学園」と称して小学生から高校生まで幅広い学年に向け、「SDGs」や「キャリア教育」をテーマに社員が講師となって行う出前授業や企業訪問を行っている。
捨てることの「戸惑い」「罪悪感」のような感覚が大切
ほかにも各社はさまざまな取り組みをしているが、コンビニは取り組みを可視化させ、売上げにもつなげる戦略が上手だと思う。我々は、一度食べたら「ごみ」として廃棄する容器に慣れてしまい、ネット上も用が済めばその情報は「ごみ箱」に入れる生活だ。持続型社会を目指すにおいては、捨てることへの「戸惑い」「罪悪感」のような感覚が大切なのだと感じる。
先進国の中で日本の食糧自給率は40%以下で、世界で断トツに低い。いっぽうで食品の廃棄率も高い。将来、世界が食糧の争奪戦にでもなった際に、日本はどうやって国民の日々の食事を確保していくのか、問われている。
コンビニのコーヒーカップが紙製になることで、SDGsの意識改革に結びつけられるのか、それともコンビニ容器だけの話題に留まるのか、それは私たち一人ひとりにかかっているのだろう。しかし若い世代にとって、年間を通して訪れる頻度の高い場所は断トツにコンビニだ。コンビニの動向は、多くの若者の価値観に影響していくのだと思っている。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)