シュウマイ市場拡大へ外食でギョウザとどう差別化

シュウマイ市場が広がっている。前回のコラムでシュウマイの冷凍食品について書いたが、外食においても専門店やシュウマイ居酒屋など、シュウマイにフォーカスした業態が開店している。これまで中華料理店では「ギョウザ定食」はあっても、「シュウマイ定食」はほとんどなかった。「ビールにギョウザ!」のキャッチコピーはあっても、「ビールにシュウマイ!」は筆者も聞いた記憶がない。どちらかというとギョウザの陰でひそやかに存在していたシュウマイをメーンに据える飲食店のメリットは何なのだろうか。そして、今後の消費者にとっての“シュウマイ”の価値はどうなっていくのか探る。

前回のコラムはこちら

好調の冷凍シュウマイはギョウザ人気に追いつけるか 日本食糧新聞電子版

クセになりやすくする方法は

そもそも、もはや中国料理の域を超えて日本の“国民食”ともいえるギョウザとシュウマイの違いは何なのだろうか。小麦粉で作られた薄皮に肉や野菜を合わせた具材を入れて包む、というスタイルは同じだが、ギョウザとシュウマイでは消費者の意識は違っている。その違いは何なのか。筆者は大きく4つの分類で考えた。

ネオ大衆居酒屋の看板メニュー「姫路発とり焼売」

まず1つ目はニンニクの有無だ。ニンニクは、エジプトのピラミッド建設の際にも滋養強壮として食べられていたともいわれ、世界で古くからパワーのある食材と考えられてきた。極寒のロシアでは、生のニンニクを朝食にかじる習慣もあると聞いたことがある。加えて、ニンニクが入ることで、全体の具材の味がまとまったり、味にインパクトが出たり、さらにはコクを出す効果もあるため、ギョウザがクセになりやすいのもニンニクの影響があると考える。

2つ目の違いは、“皮と具のあそび”だと筆者は考えている。“あそび”とは何か。外食におけるギョウザは皮と具の間に隙間がある。具がびっしり隙間なく入っているギョウザは滅多にない。この空間が、噛んだ時の肉汁を引き出し、口の中でバランスが良く、噛むごとに楽しみを与えるのだと推察する。

ご飯と合わせやすくするには

3つ目は、なんといっても“肉汁”だろう。具材からあふれ出す肉汁の量は、圧倒的にシュウマイよりギョウザが勝っている。ギョウザは肉汁や動物性の脂身によって、ご飯やアルコールに合う料理になっているといえる。

4つ目は、焼き目の魔力だ。焼いてほのかに焦げ目がついた全体像は、食欲をそそる。さらに、焼くことにより引き出される香りもある。油が焼かれて光る箇所と生地の白色、焼いた焦げ目の3つのコントラストがギョウザの魅力だ。

定食にしやすいギョウザ

本場中国では、焼きギョウザよりも水ギョウザが主流なのだが、近年では日本のギョウザスタイルが逆輸入されて、中国でも焼きギョウザが人気となっている。そして焼くことによって点心はご飯に合うおかずに変貌する。しかし、シュウマイは基本的には蒸し料理だ。さっぱりしている蒸し物は往々にしてご飯のおかずになりにくい。

ギョウザの成功体験の応用を

以上のことから、これまでシュウマイが“クセになる味”と思われにくかった理由が見えてくる。しかし昨今のシュウマイは、飲食店にしても冷凍食品においてもジューシーさが追加され、肉汁があふれるものや味が濃いものも多く、ご飯のおかずやアルコールのつまみに適応させている。

また前述のギョウザとの違いである点は、ほぼすべてシュウマイにも転換できる。蒸し物であることのヘルシーさはアピールポイントとして残しつつ、焼きシュウマイ、揚げシュウマイ、といった調理法のバリエーションや、既存にとらわれず具材や味付けはいくらでも変えられる。そうすることで、合わせる酒の種類も多岐にわたるだろう。

シュウマイをメーンにした飲食店の開店は、すでにある個性豊かなギョウザを出す飲食店から学びを得ており、ギョウザの成功体験があるためシュウマイにも応用できた、ということもあると推察する。そしてギョウザと同様に、シュウマイにポテンシャルがあることに人々が気づいたのである。

香港の飲茶、カニ卵のせ焼売

一方で、あまりにバリエーションが増えた場合、ギョウザと区別できなくなる懸念もある。例えばギョウザ型のシュウマイも作れなくはないが、コロンとした丸いフォルムはギョウザよりも品の良さを感じる人もいよう。それも今までのシュウマイの大切な個性だ。

今後、どこまでシュウマイは攻めるのだろうか。ムーブメントまでは難しいかもしれないが、もう少し幅が広がると面白いだろうとは思っている。(食の総合コンサルタント小倉朋子)

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