台湾カステラが人気の理由は「究極のフワシュワッ」と「安心感」

以前のコラムで書いたマリトッツォ以外で、今年のトレンド食品の1つに「台湾カステラ」がある。専門店が東京、九州、大阪、名古屋などにもオープン。むろんコンビニ各社も提供していて、売れ行き好調だ。台湾カステラは、長年なじんでいる長崎カステラとはどう違うのか。コロナ禍でなぜはやるのか。その魅力に迫ってみよう。

噛まなくてもいい「フワシュワッ食感」は現代人の大好物

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プチ征服感を満たす「ギルティーパン」が人気 日本食糧新聞電子版

まずは食感だ。台湾カステラは、長崎カステラとは大きく違ってフワフワな軟らかい食感がウリだ。口の中でシュワッと溶ける感じもある。この「フワシュワッ」食感は、日本人が好きな食感の1つ。ロールケーキ、パンケーキ、スフレ、蒸しパンなど、大ヒットしたスイーツにはこのフワシュワッがある。

チーズケーキは、フワシュワッなスフレタイプが大ヒットした時があった。パンケーキブームにおいてもさまざまなタイプのパンケーキが生まれたが、最終的にフワシュワッなスフレパンケーキがカテゴリーの1つとして残っている。かき氷もフワシュワッタイプが新しさを運んだ。

今年のトレンドになった台湾カステラ

「口に入れたら溶けた!」「噛まなくても、すぐになくなる!」などの表現は、食レポでもよく耳にする表現だ。噛まなくてもよいことが、すなわち、おいしいイメージにつながってしまうのは、現代人の味わい方の特徴の1つである。

対比の理論、「甘さ控えめ」と感じる誘惑

台湾カステラは、「甘すぎない」とも表現される。しかし実際に、甘くないのだろうか。いやいや、立派に糖質ありますよ! ちゃんと甘いです、はい。でも、多くの人が「甘く感じない」のである。なぜか。

それは、ネーミングにも理由があると推察する。ネーミングに「カステラ」とあるため、無意識に人間は通常の長崎カステラと比較して思考する。ザラメがついた、しっかり甘いカステラと比較すると、「甘さ控えめ」に感じるのである。また、食感が軽く食べやすいため、甘さも軽く感じる。罪悪感を覚えにくいスイーツといえるだろう。

「フワシュワッ」な台湾カステラ

さらなる台湾カステラの強みは、台湾発であること。かき氷、タピオカミルクに続いて、台湾カステラは台湾スイーツの第3弾といえる。台湾に対しての良好なイメージが、コロナ禍の中で、安心して食べられるイメージにつながっているのだ。また、タピオカやかき氷の成功体験によって、「台湾だから大丈夫」と感じさせることがある意味、容易であり、よいイメージ作りが出来上がっているのである。

巣ごもりに強いスイーツ

そして、テークアウトしやすい形状の商品であること、さらには、シンプルでわかりやすい素材による安心感があること、加えて、シンプルな商品なだけにアレンジもしやすいことなどがあり、コロナ禍において消費者に受け入れられやすい要素があれこれ満載なのである。巣ごもり需要にピッタリなのだ。

実際に、自宅でホットケーキミックスなどを使って自家製台湾カステラを作る人が多く、誰でも簡単に作りやすいスイーツといえる。また、購入してからホイップクリームを挟んだり、フルーツと合わせたりなど「ちょい足し」「ちょいアレンジ」をして、自分流におうちスイーツを楽しみやすい。

「台湾カステラソーダ」(チェリオジャパン)

コロナ禍の不安な中、「安定している要素」と「安心できる要素」が存在するのが台湾カステラといえるだろう。このような「安心感スイーツ(筆者の造語)」は、近年ブレイクしたロールケーキ、パンケーキ、かき氷、タピオカ、バスクチーズケーキなどにも共通している。わかりやすい安心感を、不安な時期には求めやすいといえる。そして、ロールケーキ、パンケーキ、かき氷にも「フワシュワッスイーツ(同じく筆者造語)」が通じる。

さらに1つ、台湾カステラのメリットは温めても冷やしてもおいしいこと。夏に冷やしたものを食べるのもおいしいが、秋冬にかけて温めて湯気を立てながら食べるのもお薦めだ。2021年の後半戦にも売れ行きを維持する可能性があるだろう。(食の総合コンサルタント小倉朋子)

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