ホットドッグがハンバーガーに続くブームになる可能性は

コロナ禍におけるハンバーガー専門店の強みについて、その豊富なバリエーションと、店側と客側の関係性から見たラーメン店との類似について前回のコラムで述べた。個人店からチェーン展開の店、イートインからテークアウト、食事需要からスイーツ狙い、ファストフードからグルメバーガーなど多角的な経営戦略は、さまざまな出店業態の選択肢を広げていると思う。ハンバーガーが日本国内で市民権を得たのには、マクドナルドの影響が大きいことはいうまでもない。では、そのプロモーション力がない場合、ハンバーガー以外のファストフードは今後、ハンバーガーに続くトレンドになりえないのか。例えば、北米ではハンバーガーと同等に市民権を得ている「ホットドッグ」はどうだろうか。

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コロナ禍においてハンバーガーが強い理由は 日本食糧新聞電子版

ハンバーガーとホットドッグの相違点

ホットドッグは、モスバーガーやフレッシュネスバーガー、ドトールなどのファストフードやカフェ業態、ならびにコンビニ各社の代表的メニューである。ウインナーソーセージのこだわりをうたった店も多い。しかしあくまでもハンバーガーやサンドウィッチと並列であり、ホットドッグでチェーン展開を狙ったブランドもこれまで出ていたが、目立った形の全国展開している専門店には至っていないといえるだろう。

気軽に手作りを楽しめるホットドッグ

ハンバーガーとホットドッグの違いは何なのか。10代から20代前半の若い世代にその違いを聞くと、「ホットドッグはお腹いっぱいにならない」「ハンバーガーは自分では作れないが、ホットドッグは簡単」「ウインナーは朝ごはんやお弁当などで食べるから」などの意見が多く出た。

筆者は、パンの違いも追加したい。ハンバーガーのバンズパンはパン屋やスーパーのどこでも売っているわけではないが、ホットドッグのパンはスーパーでも袋入りで結構売られている。またバリエーションにおいてもハンバーガーは何枚もパティや具材を重ねたりして、いろいろアレンジできるが、ホットドッグには限界がある。だから、ホットドッグにはハンバーガーのような成功体験が望めないのだろうか。

ハンバーガーとの共通項のヒットの導き方は

しかし米国やカナダ、オーストラリアなどでは、ホットドッグは市民に愛されている。町にはホットドッグ売りが、リアカーを引いて売り歩く光景があった。鉄板で焼かれた熱々のホットドッグはウインナーが大きく、口の中でパリンパリンとはじき、大変食べ応えがある。また、店によって個性があり、トマトケチャップとマスタードというシンプルな味付けの中に奥深さを感じた。

ホットドッグは米国の国民食

具材も、肉を使用していなくても「〇〇バーガー」と称しているように、ホットドッグでも「とろとろ卵ドッグ」「サーモンアボカドドッグ」「鶏ももジューシードッグ」など、いくらでも「〇〇ドッグ」が作れるだろう。少なくとも200種類以上の「ホットドッグ」新メニューが頭の中にはあふれ出てくる。実に楽しい。

もちろん、ウインナーのオリジナルを作ることもできる。その店でしか出せない特製ウインナーは、上記の若年層へのアンケートでも多く出た「ハンバーガーは家で作れないが、ホットドッグは作れる」という概念を崩す。さらにハンバーガーよろしく安価からプレミアムまでのバリエーションも可能であるし、イートインからテークアウトまで、販売業態においても自由がききやすい商材の一つだ。形からしても、むしろハンバーガーより食べやすいともいえる。

既存概念からの脱皮は新たなビジネスを生む

かつて「次のトレンドとして、かき氷が来るのでは」と筆者が説いた時、周囲からは「かき氷~? 氷とシロップだけじゃないか」と疑問視されたのだが、その後は大ブームとなった。既存の概念を外せば、ホットドッグに限らずファストフードの世界もまだまだ開拓の余地にあふれているという気がしている。

美ノ久の「フランスドッグ」

いや、フードサービスの世界に限ったことではない。潮流を変えることは簡単ではないが、コロナが収束した後は、発想を柔らかくすることがあらゆるビジネスにおいてもますます求められていく。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)