「コト消費」でも進化を競うコンビニスイーツ

コンビニ大手3社が、同時期に同じカテゴリーの商品をそろえることがある。わかりやすくは「おでん」「肉まん」などの季節感がある定番商品はもちろんだが、類似カテゴリーの製品をコンビニ各社が同時期に再現したり、販売強化することがある。中でもスイーツはトレンドが絡む背景もあり顕著なので、比較してみると面白い。

著名パティシェとの共存共栄?

「コンビニスイーツのクオリティーが上がった」という声は、近年そこかしこで耳にする。“クオリティー”なるものを、どの視点からどうとらえるのかにもよるが、最近は著名なパティシェ・パティスリーブランドとのコラボ商品も次々に生まれて、本家では考えられないような安価で購入可能だ。

今まで「ご褒美」だったブランドスイーツを、「デイリー」だと思う消費者も増えるかもしれない。本家を知らないまま、「パティシェ○○のでしょ、週一で食べているわ」と思う人もいるだろう。こうした現象に「コンビニでそんな商品を出されたら、たまったもんじゃない」と戦々恐々としているところもあろう。しかし、ブランド側からしたら広く幅広い世代にブランドを周知させられるチャンスでもある。考え方次第だろうか。

ローソンの「ウチカフェスペシャリテ」

本家をよりシンプルに、コンパクトに

専門店でヒットした商品の類似タイプをコンビニは次々と商品化していく。企画から販売までのスピードが早いのだろうか。さらに、持ち帰りが便利なパッケージや、1人でも食べきれる量や形状にアレンジされている。本家をよりシンプル化し、コンパクトにまとめた商品になっている。

消費者は、利便性とクオリティーと価格のバランスがうまくかみ合っていると判断すると購買行動に出る。最近では、パッケージにエンターテイメント性も加えており、「モノ」の代表だったコンビニスイーツが「コト」にシフトしている。

ファミリーマートの「デザートモンスター」

例えば、冬から春にかけて各社が出す同じカテゴリースイーツに「テリーヌ」がある。まったりとした食感が好まれているテリーヌは、濃厚な食感が特徴なので、夏より冬に好まれる“旬”のあるデザート。そして、その“ちょうどいい”食感を作るために完成に苦労するスイーツと言われている。

専門店のテリーヌは、型に入れて作った形状を保った状態で販売するため、客は自ら切り分けながら食べていく。しかしコンビニ版では、最初からスライスし食べきりサイズにしているので、包丁を用意したり、その包丁が油脂でベタベタになることもない。

スイーツ専門店はどう差別化

また、同じカテゴリーの製品を食べ比べすると、各社の原材料の特徴や原価率の視点など、個性とともに社風も見えてくることがある。特にスイーツは、相違点はわかりやすいので、ぜひ注目してみてほしい。

セブンイレブンの「つぶもち発芽玄米大福」

しかし、コンビニスイーツにはできないこともある。ショーウインドー内に広がる圧巻の美しいケーキの陳列や甘い香り、シズル感、スイーツをこよなく愛していると感じられるスタッフの対応などは不得手分野だ。こうした違いを徹底的に調査し、いかにコンビニの弱点を見つけ差別化していくかが、専門店のこれからの課題だ。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)

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