可能性が広がる大豆ミートの強みは 「使うメリット」の訴求が普及の鍵
大豆ミートは間違いなく、今年のトレンドの一つになると思われる。「大豆ミート」「大豆肉」という言葉もすっかり定着した感じだ。昭和時代は「畑のお肉」といわれていた。個人的には、この表現のほうが情緒的で日本人らしいと思うが、昨今は「大豆ミート」の方が主流だ。
使用法のバリエーションが増える
大豆ミートは脱脂大豆を加工・加熱して繊維状に成形し、高温乾燥させたもの。以前からベジタリアン・ビーガンの人には欠かせない植物性のタンパク質として活用されてはいたが、今はビーガンではない「雑食」の人の間でも人気に。コンビニなどでも大豆ミートを使用したさまざまな食品を出しており、特別な存在ではなくなりつつある。大豆ミートは、今後もさらに広く周知されていくのであろうか。
大豆ミートを使用した商品は、ベジタリアン・ビーガン以外では、おしゃれ、ヘルシーな生活、ダイエットなどに関心が高い若い女性たちが注目している。高タンパク質で低カロリーといった数値的なメリットがうたわれた。
かくいう筆者は、ベジタリアンではないが、20年ほど前から大豆ミートの愛用者だ。「ホビークッキングフェア」という東京ビッグサイトで開かれるイベントで「畑のお肉」を紹介する講演をしたこともある。わが家での常備食材の1つで、バリエーションも揃えている。
バリエーションというのは、形状のこと。通常の食肉は、ひき肉、ステーキ用、薄切り肉など用途別に売られるが、大豆ミートも同様で、作るメニューによって選ぶことができる。ひき肉タイプは麻婆豆腐やミートソースに適し、細切りタイプは青椒肉絲を作るのに便利だ。また、各メーカーによっても味や匂いが違うことも挙げておく。
大豆ミートの7つの強み
前述したように、ベジタリアン・ビーガン以外の人にとって大豆ミートはヘルシーな視点から使われてきた。今後さらに各家庭に浸透させるには、もっと食肉にはない「使うメリット」を訴求することが必要だ。
<なんといっても利便性>
乾燥させているので、保存がきく。それも常温で可能。水さえあれば軟らかくなるので、非常時用にも対応可能なタンパク源となる。
<加熱時のストレスが少ない>
食肉の場合、「果たしてきちんと加熱されたのか」と外見ではわかりにくい場合もある。鶏のから揚げの外側がカリッと焦げ目もついているのに、中はまだ赤みが残っていた!なんてことは、大豆ミートには無用な心配なのだ。加熱時間が少なくても食べられるため、調理時間の節約にもなる。
<味がしみこみやすい>
味付け次第では、食肉と遜色(そんしょく)ない味わいとなる。
<フレキシブルに対応可能>
調理法は、食肉と同じだけ考えられるので、活用できるメニューも豊富。
<食物繊維が豊富>
商品による誤差はあるが、100gで換算するとキャベツの約3倍だという。
<低カロリー・低脂質>
具体的にはタンパク質はおおむね豚肉と同等だが、熱量は100gで110kcal前後。脂質に至っては100gで約0.7g。これはかなりのインパクトだ。
<言葉がもつイメージ>
「畑のお肉」よりも「大豆」と、食材そのものを打ち出すことによって、選択しやすくなっただろう。
食肉に求める「そそられる」要素とは
では課題はあるのだろうか。「豆乳のにおいが苦手」な人がいるように、大豆タンパク特有の匂いや乾燥食品の匂いがある。先入観を持つ人も少なくない。
また、なんといっても食肉にある「脂身」の魔力がない。人間は体に脂肪を蓄えるように生体ができている。そのため、脳も脂身をおいしいと判断しやすいし、欲するのだ。焼いているときの、焦げた匂いもない。このような食肉にある「そそられる要素」が乏しいのが難点でもあろう。
この点は脂身を欲する本能に近い部分の難点だ。そのため、味付けを強めにすることや、油いためや揚げ物などにすることで、「たんぱく」な味わいを軽減させる調理法が多くみられる。
近年の肉ブームは、コロナ禍においても衰え知らずで、外食でも焼き肉店だけは人気とも聞く。しかし、大豆ミートのもつ利便性が周知されれば、さらなる伸びしろは考えられる。たっぷり食べても罪悪感が出にくいことは、食べる側の精神安定にもよい食品といえそうだ。
次回は、各企業の大豆ミートへの取組みからの可能性について続ける。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)