巣ごもりでも専門店のバナナジュース人気 タピオカの次のトレンド候補の強みは

バナナジュース専門店が都内中心に出店ラッシュだ。行列を作っている店もあり、コロナ禍においての行列は新鮮にさえ映るが、タピオカミルクティーの次のトレンド候補としても「バナナジュース」は人気が高い。店舗数も増えたため、最近では各店舗が特徴を出し、味も細分化しつつあるといえる。なぜ今、バナナジュースなのか。流行る理由は? タピオカミルクティーとの相違は何だろうか。独自の考えを述べる。

ヘルシーな素材の強み

総務省「家計調査」によると、果実国内需要の中で生鮮用として438万7000トンが消費され、そのうちの96万トン、約20%程度がバナナだという。果物の消費が減少する中において、バナナは別格といえるだろう。実のところ消費される99.9%が輸入品なのだが、それでもバナナは愛される国民食のような存在になっている。

こういった素材そのものが愛されている地盤があるのがバナナジュースの強みのひとつだ。バナナのもつ、栄養価が高く健康的なイメージや効能が、「甘い」印象のタピオカドリンクからヘルシー感を強めた訴求力がある。実際にバナナジュースは砂糖を入れなくても十分にスイーツとして価値が出せる甘さを作れるのだ。これは強い。

都内で出店が相次ぐバナナジュース専門店

ビジネスとしてのバナナジュースの基本は、土台のバナナ+フレーバードリンク+トッピングの3つの構成となっている。この3要素を組み合わせてオリジナリティを作り出し、客はカスタマイズオーダーが可能となっている。このカスタマイズは、タピオカドリンクの際にも同様だったが、元来は日本人にはあまりない売り方である。

さかのぼればスターバックスが日本に入ったあたりから日本人にも慣れてきた手法だろう。そのため、バナナジュースに関しても、カスタマイズの楽しさをエンターテイメントとして店と客が共有することができているのだ。

また、コロナ禍において「巣ごもり」だったことも後押ししたと感じる。ミキサーがあればバナナジュースは手作りも可能だ。しかし、店のようなカスタマイズのワクワク感は出しにくい。馴染みのある味をベースにしつつ、さらに店ならではの「新しさ」を得られることが、不安感のある現代にフィットした、安心感のあるトレンドになり得ていると思うのだ。

バナナジュースはカスタマイズが無限に作れ、街ごとにも個性が出せる

例えばバナナそのものにも、産地や使う分量など特徴を作ることができる。また、フレーバードリンクは牛乳がメインだが、豆乳やフルーツジュース、チャイなどさまざまある。さらにトッピングに関しては無限大だといってもよい。「バナナはそれだけ何に出も合わせやすい」という点が大きなメリットだろう。

それだけにフレーバー数が多く、カスタマイズを楽しませる店舗は東京都内で増えている。メディア出演も多数あり多店舗展開している「Sonna banana」(そんなバナナ)」では八丁堀店のメニューフレーバー数が豊富で、ナッツ類やドラゴンフルーツなど目を引くトッピングも用意されている。

恵比寿にある「twinkle twinkle (トゥインクルトゥインクル)」は、バナナの本数まで選択することが可能だ。バナナを1.5本にするだけで、当然だが濃厚さが増し持てばズッシリと重い。吸うより「食べるジュース」の印象で、バナナ好きには満足度が高いだろう。さらにトッピング数も豊富で、ヒマワリの種、炭、モリンガ―などとともに、プロテイン、乳酸菌トッピングがあるのも特徴だ。

プロテイン、乳酸菌のトッピングは、昨今の健康志向やアスリート人気に見合ったトッピングだが、それだけではなく、恵比寿という土地にもフィットしている。トレンドに敏感な層がいる街ならではのトッピングだといえる。恵比寿にはサラダバー専門店が多く開店した時期があるが、その時どきの健康的なイメージのトレンドに、街がまるごと敏感なのだ。

バナナを使ったスイーツも

タピオカドリンクは、甘さがウリだったため、汎用性にはバナナに及ばない。バナナの場合は、朝食の代わりに飲むこともでき、多忙な現代人の「食事」の役目も補えるのが強みといえる。

バナナ愛にあふれる店も人気だ。東京スカイツリー駅から徒歩3分の場所にある「バナナファクトリー(Banana Factory)」は、バナナジュース専門店ではなく、バナナ専門店のようなイメージ。ジュースのほか、バナナパイ、バナナを使ったケーキやプリンなどのスイーツ、バナナサンドイッチなどまさにバナナづくし。タピオカミルクティーでは実現できない汎用性は、バナナの底力を感じさせる。

キュートなサルのロゴマークの「CRAMS BANANA(クラムスバナナ)」は秋葉原駅から徒歩10分という立地。「フラグラバナナ」というグラノーラ入りジュースが、サクサクとスプーンで食べるタイプで、食事、スイーツ、ドリンクの全てに“寄れる”のがバナナなのだ。

低リスクで出店しやすさはトップクラス

バナナジュース専門店は数坪で開店が可能だ。隙間スペースがあれば低資金で開店できる。さらに調理技術がない人でも心配いらない。火を使わず冷蔵庫とミキサーで商品が出来上がってしまう。

また、バナナそのものが日常食のため、トレンドといっても、若い人だけでなく、老若男女に訴求できる点が、タピオカドリンクより強みなのだ。そのため、表参道などの若い人で賑わう場所に限らず、住宅地でも出店されるのだ。

昨今は牛乳の消費が伸び悩み課題となっている。バナナジュースは牛乳を大いに使うので、それの点も私としては快く感じている。渋谷のんべえ横丁に出店した 「BANANA WOMAN」はバナナの濃さとともに牛乳の種類やも選択可能だ。バナナとともに牛乳の個性も垣間見ることができるので、昨今の牛乳離れの若者にもその奥深さに触れてもらいたいと願ってしまう。

バナナジュースとお菓子のコラボも

最後に紹介するのは、千駄木の「スウィーツ&じゅ~すばぁ7」だ。国産バナナにこだわり、一本1000円のバナナを使用した「奇跡のバナナ」が飲める。ほぼ輸入に頼るバナナにおいて「国産」のワードはそれだけで個性となる。国産バナナはさっぱりした味わいなのが特徴なのだが、ジュースになっても同様に飲みやすい。

この店ではないが、岡山に無農薬のバナナの「もんげーバナナ」というブランドがある。5分で完売するといわれている、このもんげーバナナは、味がさっぱりしているほかに、「皮も食べられる」というのがウリ。実際に食べてみると皮もさっぱりしている。輸入バナナの一房100円代の売価から、無農薬、“国産”ブランドによって“高級”になるのもバナナの面白さといえるだろう。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)