ウィズコロナで飲食店に求められる「よいサービス」とは
今年も後半に突入し、飲食店は売上げの巻き返しを図っている。ウィズコロナを余儀なくされる中、接客サービスにおいても見直す必要が生じている。客の感じる「よいサービスのお店」になるにはどういったサービスが必要なのか。テークアウトで考えてみる。
コロナ対策が新しいサービスに
消毒液を置く。店員はマスクをする。席間を広げて席数を減らし、パーティションを立てる…。コロナ禍の前は誰も考えなかった一連のコロナ対策が、今は飲食店の新サービスになりつつある。そもそもそれがサービスと言ってよいかという疑問もあるが、とりあえず今回は「サービス」というくくりで書いてみたい。
これらの対策は、現時点ではほぼ常識のようになってはいるが、しっかりマニュアル化している店ばかりとはいえないのが現状だ。そのため、今後外食に客足が戻ってくると、毎回消毒していたテーブルも2回に一度、3回に一度、となり、なんとなくフェードアウトする店もあるかもしれない。コロナ関連で人員削減を行った店も少なくないため、手が回らなくなる可能性もある。どこまで徹底するのかに、今後は店の差異が出るだろう。
自粛要請期間の4~5月に何度かテークアウトをした。普段は予約が取りにくい人気店、近所の店、友人が経営する店、ホテルなど、ささやかな支援の気持ちも込めて。手洗い、マスク着用の重要性を政府もメディアも今以上に連日報道していた時期だ。しかしその頃でも、店の対応には差があった。
客への気遣いが「よいサービス」に
ある人気店は、料理を取りに店に入ると、清掃の行き届いた店内に予約対応の作りたて弁当が整然と美しく並べられており、料理を受け取るためだけに消毒液も2ヵ所に設置。スタッフもマスクはもちろん、ビニール手袋で弁当を手渡ししてくれた。
箸とお手拭きは、客が自分で取るスタイル。非常に気を配ってくれていることがわかり、印象がよかった。つまり「よいサービス」を受けた印象なのだ。コロナ禍における「よいサービスの店」は、客を安心させることにどれほど気遣いをしているか、だと感じた。
一方、スタッフがマスクをしていない店は、意外に多かった。1人で切り盛りする店や家族経営の店など、客がいない時には「マスク着用の必要がない」ため、客に対応する際につい忘れてしまう。また、調理をしている時にはマスクをすると五感が鈍るため、料理の味に関係してしまうという理由もある。
店内飲食とテークアウトの違いとは
テークアウトと店内飲食で何が異なるのか。大きな違いは「店と客との接する時間枠」ではないか、と思っている。店内飲食の場合は、料理をお客が食べて退店するまで店側は見ることが可能だ。客の食べる速度や量、食べる表情や好き嫌いなど次回につなぐ生の“情報”が店にはある。
しかしテークアウトでは、客が料理を購入すれば、店はもうその後を追うことはできない。どんな食べ方をしたのか、笑顔だったのか、満足してもらえたのか、残量はどれだけあったのか。それら一連の食事風景をライブで見ることができないのである。それゆえに、店はさまざまな工夫が必要だ。
外食で培ったサービスに留まらず、リピーター増、そして次回は店内飲食につなぐために、コロナ対策のマニュアル化に加えて、オリジナリティーのある新サービスが店のテークアウトには求められている。最新の気配りが、ウィズコロナ時代の「よいサービスの店」の評価につながるのだと考える。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)