コロナ禍で「インスタ映え」は終わった? 今後も選ばれるテークアウトメニューは
飲食店では、テークアウトメニューを提供して売上げにつなげる店が増えた。消費者側からすればこれまで手作りの食事と外食、そして持ち帰り惣菜の中食の3つの選択要素があったが、コロナ禍では外食への自粛があり、その分をテークアウトやデリバリーへ転換する機会が増えた。しかし、テークアウトする店が増加すれば、やはり競争は激しくもなる。また企業がテレワークを導入した働き方へシフトするなどの要因を考えると、今後もテークアウトの需要は残り、成熟化していくだろう。選ばれるメニューを作ることは、選ばれる店になることにつながる。そのために店はどんなメニューを、どのように提供をしたらよいのだろうか?
外食のトレンドは一変
昨年までは、「インスタ映え」がはやりとなり、消費者にいかに視覚で訴えられるメニューにするのかにフォーカスが当てられてきた。また、外食のトレンドの1つとしてテークアウト専門店の開店が続いており、効率のよい一品主義の店も増加していた。例えばワタミの手掛けた鶏の唐揚げ専門店「から揚げの天才」や、𠮷野屋ホールディングスの鶏メニューに特化した店「鶏千」など、大手外食店の参入があった。
しかしコロナ禍でトレンドも一変。テークアウトやデリバリーにおいては、「インスタ映え」は作りにくい。まず容器に凝ったとしても、蓋が必要なので、高さのある演出や“モリモリ”なデコレーションは難しい。また、インスタグラムにアップしようとしても店内食事の場合と異なり、外装や内装などの店内装飾とともに料理を写真におさめることができないので、バックの作り込みなども容易ではない。
テークアウトメニューも見た目は大事
もはや「インスタ映え」というワードは陰をひそめたのだが、それでも「見栄え」のするメニューは人気になっている。例えば寿司屋のちらし寿司はインスタに挙げやすいテークアウトメニューとして人気が高い。
パッケージはシンプルながら、蓋を開けた時の彩りの美しさとのギャップに感動しやすい。豊富な配色、かつさまざまな形の食材が絵画のように目に飛び込む。ストレスがたまる生活の中で、プチ贅沢を求める感情にも訴求できそうだ。さらに、魚市場の売上げを応援するイメージも加わり、インスタにアップする側の自尊心を満足させるテークアウトメニューだろう。
このように、テークアウトメニューも見た目は大事。色彩を幅広くもたせて食材の形状や大きさを多種入れる、仕切りをきっちりしてソースが漏れないようにするなど工夫はできる。特に生野菜などは時間が経つとボリュームがなくなるので、気をつけたい素材。
通常の外食ではなかなか予約が取れない人気店には、テークアウトでさえも当然ながら毎日注文が殺到している。また、話題性があるためメディアが取り上げるので無料でPRがかなう。さらに予約ができない人気店では、通常のイートインではお任せコースのみを提供している場合も多いが、テークアウトであれば試しの量を味わうことが可能だ。
実のところ、人気店の場合は、さほどの見た目の美しさがなくても売れる。それは「味」に対して注文前から信頼できる情報を得ていると客が思えるからだ。食べる前に店と客のコミュニケーションがネット上でできているのだ。
お店のストーリー発信もより重要に
テークアウトに関しては、いかに事前情報を客に発信するかが、選ばれるポイントの1つだと考える。例えば、都内イタリアンレストランでは、店の窓に大きく紙で「助けてください」といったメッセージが書かれた紙を貼って話題となった。それを見た消費者が応援をしたいとテークアウトメニューの売上げに貢献する結果となった。
店側からのメッセージは、方法と文章とタイミングを間違えてしまうと逆効果になってしまうので難しい側面もある。しかし少なくとも、どのような内容のメニューが、どのような配置で入っているのか、どのような思いで作っているのかなどの情報は発信したほうがよいだろう。コロナ禍の現状では、ストーリーが加わることが客への購買力に影響を与えるので大事である。
コロナ禍において、店が新たに作成したテークアウトメニューは、弁当が1~5種類、それに一品料理が数種類というパターンが多いようだ。フレンチレストランやカフェダイニング、バーなどでは、家飲みを見込んでオードブル詰め合わせを出す店が目立つ。
また、コロナ禍の期間限定でイートインより割引している店舗は少なくない。ロイヤルホストはテークアウトの場合全品20%引きだ。今後も、仕入れ、店内飲食との兼ね合いなど総合的に見てメニュー構成は考えていくことが求められる。また、メニュー内容だけでなく、サービスにも店内飲食とは異なるポイントが必要になるだろう。
テークアウトメニューは、好印象であれば今後の店内飲食へつながる可能性は高い。今回のような非常事態において、店にとってPR戦略になり得る。次回は必要なサービスと、テークアウトの進化形について考えたいと思う。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)