巣ごもり需要のなかに免疫力アップも期待できる食品が
前回のコラムで、食べる時の気持ちを変えるだけでも、免疫力を上げることにつながると書いたのだが、もちろん、免疫力を高めるには何を食べるかも大事だ。過度な買い置きは控えるべきだが、自粛が続く中、家庭や職場内で食べやすいものから食材を選択したい。巣ごもり状態になり、売上げが急増している食品もある。
免疫力アップの基本は腸内環境の整備
前回のコラムはこちら
「免疫力を上げる「ポジティブ脳」な食べ方」
新型コロナウイルス感染拡大で将来が見えない現状でぜいたくを控える傾向や、家庭で食事をする家族の人数が増加している。心理的に(1)経済的バリューの高い食べ物(2)毎日食べても飽きない食べ物(3)保存性の高いもの(4)利便性の高いもの(5)免疫力を上げる食べ物――などが需要の高い共通項として挙げられるだろう。
そもそも、免疫力とは何なのか。免疫とは体内で発生したがん細胞や外部からの細菌やウイルスなどを撃退しようと戦う自己防衛システムのこと。免疫のシステムは多くの免疫細胞の働きによって成立しており、免疫細胞のおかげで、私達は体内の「害」が増殖しないよう防御することができている。もしも免疫細胞がなかったら、あっという間にわれわれは病気になってしまうだろう。
免疫細胞の約6〜7割が腸内に存在するといわれる。そのため、免疫力をつけるには、腸内環境を良くしておくことが基本なのだということがわかる。腸内環境を整えるには、腸内の善玉菌を増やし、免疫細胞の餌になる食べ物を食べる必要がある。
免疫力アップも期待できる納豆・コメ・牛乳
ではいま売れているものはどういうものなのか。震災の時にも強かったが、最近も増産している納豆は、いつの時代にも無敵な存在だといえそうだ。業務用を含めた2019年の市場規模は約2503億円(全国納豆協同組合連合会調べ)で、マーケットは8年連続で拡大し、2016年以降は過去最高を更新し続けている。さらに今年においても強みを発揮し、スーパーでは売り切れる店が続出して2月以降は特需となっている。
参考記事:納豆特集:市場規模、8年連続の拡大 死亡リスク低下発表で特需
納豆は、発酵食品でもあり、善玉菌を増やし免疫力を高めることに役立つ水溶性の食物繊維が豊富だ。安価で栄養価が高く、毎日食べても飽きにくい。保存性もあり、そのまま食べられるため、前述に挙げた(1)から(4)までの全てに当てはまっている。
新型コロナ関連で消費者の購買数の傾向には変化が見られる。冷凍食品やレトルト食品などの利便性のある商品のほかに、新型コロナ前には伸び悩んでいたコメや牛乳が家庭の購買数としては伸びを見せている。コメは飽きない主食として「とりあえず絶対ほしいもの」として売れていると考えられる。備蓄もできる。
参考記事:コメビジネス最前線特集:主食米=家庭用、急激な需要増も在庫十分
牛乳も子どもが家にいるため小売店では品薄になったのだが、一方では、学校給食への供給がなくなったことのよる牛乳の廃棄を回避させるため、農林水産省は、牛乳の購買を一般消費者へ促すことや、バタ―などの加工品の増産をする協力要請を19億円の予算を立ててメーカーへ働きかけた。
コメも牛乳も免疫力を高めるために期待できる。コメにある糖質は、体を動かすエネルギーに変わる。ただ、やはり摂取し過ぎると肥満にもつながるため、野菜や豆などとともにバランス良く食べることも肝心だ。牛乳はカルシウムを含む良質なタンパク質でもあるため、筋力をつけるとともに、気力を上げることにもつながる。前回のコラムにも書いたが、気力と免疫力は連動する。
毎日摂取しやすい海藻類を食事のお供に
「巣ごもりしていても簡単に毎日摂取しやすいもの」を選ぶ基準にした際に、免疫力を上げ、おすすめしたい食べ物の一つが海藻類だ。海藻類にはアルギン酸という体調を整える植物繊維や、免疫力を上げるマグネシウムや亜鉛が含まれている。
「海藻は味噌汁やサラダに入れるくらいしか…。」と思う方には、ひじきが便利だ。湯煎して冷凍しておけば、何にでも使える。肉野菜など炒め物や、煮物に入れたり、先ほどの納豆に加えたり。ハンバーグやギョウザ、コロッケなどに入れるとプチプチとした食感がアクセントになる。
さらに利便性を重視すれば、焼き海苔がある。味噌汁や炒め物の最後にふりかけたり、麺類であれば和洋中問わず全て相性が良い。サンドイッチやハムなどコンビニエンスストアなどで手に入る食べ物に挟んだりしてもうま味が加わる。何に入れても問題ない食品なのだ。
「新型コロナ対策」をキーワードとして、売れ筋商品は今後も変わる可能性は高い。ただ、発酵食品や旬の野菜などは、いかなる時でも、体の流れを促し、結果的に免疫アップの効果が期待できる安定食材といえそうだ。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)