コメビジネス最前線特集

コメビジネス最前線特集:主食米=家庭用、急激な需要増も在庫十分

農産加工 2020.04.15 12039号 07面
食べやすくなった玄米商品が人気

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売れ筋中心の大量少品種型売場

売れ筋中心の大量少品種型売場

新型コロナウイルス感染拡大は、日本人の食糧を担う米穀業界を大きく翻弄している。政府や行政から大きな発表があるたび、多くの人がコメを求めて売場に押し寄せる。コメ離れが進むとはいえ、やはり主食。人々の生存本能だろう。

まず2月下旬、政府が全国の小中高等学校への休校要請を機に、売場にコメがない状態が4~5日も続いた。 さらに3月25日、小池百合子東京都知事の週末外出自粛要請がきっかけに、再度コメ売場が空になった。

だが2回目は、前回からの政府や業界による「落ち着いた行動を」という呼びかけに、消費者が反応したことに加え、流通側が前回の学習もあり、売れ筋に商品を絞るなど対策を講じた結果、この状態は1~2日で終息した。

7日に非常事態宣言が発令され、人々の反応は別にして、業界は原料手当や物流などすべての段階で、非常時に備えた対応が急務となっている。

一方、新型コロナウイルスの問題が出始めたころから、間違いなく家庭炊飯は増えている。KSP-POSデータによると2月第2週(10~16日)は前週(3~9日)と比べ、金額13.5%、数量21.3%も拡大。その後も、異常値が出た瞬間は別として、比較的落ち着いた状況の時も「前年より10%程度動きが良い」と、大手米穀企業の幹部は話す。コメ離れが進む中で、食の外部化による家庭炊飯の減少が顕著となっていただけに、家庭内食の増加がうかがえる。

売れる銘柄も変化している。近年、業務用米の逼迫・調達難が問題となる一方、「コシヒカリ」や「あきたこまち」など家庭用銘柄に余剰感が出る、需給ミスマッチが起きていた。だが直近では、家庭用の急激な需要増に対応するため、原料が潤沢にある「新潟コシヒカリ」や「秋田あきたこまち」、「北海道ななつぼし」など、生産量の多い有名銘柄に絞って販売する傾向が見られ、売れ行き好調となっている。その半面、業務用に向くコメがだぶつき始めた。

ただ、コメが不足する心配は無用だ。農林水産省が公表する19年産米の作況指数は「99」にとどまり、高温障害や病害虫の発生が多い上、総じて小粒で歩留まりが悪化。特に主産地新潟県は、盆休み終盤を襲った台風10号によるフェーン現象で、シラタ(乳白色の変色粒)が多く発生した。併せて太平洋側の関東から東北南部にかけて、7月の低温・日照不足と、8月の猛暑が生育に悪影響を及ぼし、確かに一等米比率は低い。だが、食味には問題がなく、コメ離れが進む中にあって、販売進度も遅かったため、産地の倉庫に多くのコメが眠ったままだ。

価格に関しては当年産米相場は高値スタートを切り、4年連続の値上げとなった。長年続いたコメ余りや価格下落対策で農林水産省が実施した飼料用米生産振興策で、需給が引き締まったことが要因だ。だが縮小マーケットはこれを容認することができず、市中相場はじわり下落に転じていた。新型コロナウイルス禍で一機に需要増に転じた後も、「下落傾向は変わっていない」とコメ卸は口を揃える。

今後に関して、消費者の非常時に備えた買いだめや在宅時間長期化による家庭炊飯の増加は確かに見込まれる。加えて「免疫力向上」が購買意欲をかき立てる、玄米に代表される健康米需要の好調も続くだろう。

家庭内コメ在庫が増えた反動減は必ず起こるとみていい。何より外食を中心とした業務用の落ち込みや年間3000万人を上回る訪日外国人による、大幅な胃袋縮小が及ぼす影響が懸念される。

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