巣ごもりでオートミールが伸長する6つの理由
巣ごもり状況が続いて、家の中での食事に飽きないように、新しい食品にチャレンジする傾向があるようだ。ご飯、パンに続く朝食の主役としてシリアル類も人気があるが、中でもオートミールは最近の注目株だ。売り切れになっている店舗もあり、有機食品を扱う専門スーパーでは、有機のオートミールやグラノーラが前年比売上げ1.5倍の店もあるという。国内のシリアル市場は、甘い味付けが施された商品が主流なのだが、砂糖やドライフルーツの入っていないオートミールが、なぜ今、人気になってきたのだろうか。シリアルの中でもオートミールが巣ごもり生活にフィットする理由を分析してみた。
シリアル市場に成長の気配
オートミールはオーツ麦(燕麦)を加工したシリアル食品の1つで、牛乳やヨーグルトなどをかけて食べる。欧州では牛乳で煮込むのが主流の食べ方だ。グラノーラは、このオートミールをシロップやドライフルーツを入れて食べやすく加工した食品といえる。
シリアル市場は昨年から今年にかけて、すでに成長の気配があった。KSP-POSデータの2019年3月~2020年2月販売実績は、数量ベースで前年比0.2%増、2月単月では、金額ベースで前年同月比21.8%増、数量ベースで21.1%増と高い伸びを示していたので、そこへ巣ごもりの後押しがあったと考えられるだろう。
参照記事:
シリアル市場に追い風 再評価の動きも高まる – 日本食糧新聞電子版
オートミールが巣ごもり生活にフィットする理由は以下の6つだと思われる。
栄養素を豊富に含む
オートミールには水溶性と不溶性の両方の食物繊維が含まれている、これは強みと考えられる。水溶性食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにさせ、不溶性食物繊維は便秘改善に効果的といわれている。オートミール100gに含まれる食物繊維は9.4gで精白米の約20倍、玄米の約3.5倍。そのほか、ビタミンB群や鉄分も豊富なので、疲労回復や代謝アップも期待できる。
さらに抗酸化力のあるビタミンEに加えて、たんぱく質も白米の2倍含まれているので、栄養バランスがよい食品の1つといえそうだ。コロナ太りを気にする人々には、うれしい食品でもある。運動不足の懸念、健康志向の高まりの需要にもフィットしている。
ダイエットに活用
オートミールは、玄米や全粒粉と同じように精白されていない食材で、GI値が低いとされている。GI値とは、食品を食べた際の血糖値の上昇スピードを数値化したもの。GI値が低いほど緩やかに血糖値は上昇する。血糖値が緩やかに上昇することで、脂肪分解を抑制するインシュリンの分泌が抑えられるため、太りにくいといわれているのだ。
糖質を減らしたい料理にも活用できる。例えばハンバーグにはパン粉の代わりに入れたり、パンケーキの小麦粉を減らして入れたり。うまみや栄養もあるため、味にも深みが出る。
常温保存ができて便利
常温保存が効くオートミールは、買い物に外出しにくい時期にはありがたい食品だった。常温保存ができるため、使いたいときにササッと加えれば料理になるので便利である。水さえあれば、ふやけて軟らかく食べられるので、非常時にも役立ちそうだ。というか、コロナの状況もある意味非常時なのだろうか。
新たな朝食の主役に
毎日食事の用意をする家事担当者にとっては、より「調理が楽なもの」を求めている。牛乳をかけるだけで食べられるのは利便性も高い。日本の朝食はご飯とパンが主流なのだが、在宅が続き、新たな「朝食の主役」を求めた場合、シリアル類は便利である。中でもオートミールは甘味を入れていないので、主食代わりに食べられる。
スイーツからおかずまで抜群の汎用性
オートミールは、甘さを加えればスイーツになり、塩分を加えれば食事にもなる。朝食、おやつ、ともすれば昼食や夕食のご飯代わりにもなり得るのだ。例えば、メイプルシロップやドライフルーツなどと混ぜてオーブンで焼けば、ザクザクとした食感が楽しいクッキーに。
ヨーグルトやアイスクリームに合わせても美味。巣ごもりでクッキングをする親子も増えたといわれている。ヨーグルトを混ぜて一晩寝かせた「オーバーナイトオーツ」は、定番メニューの1つ。ハチミツをかけてもおいしい。
季節を問わずレシピは無限大
冬も楽しめるのも特徴といえる。シリアルは通常は冷たい牛乳を注ぐのだが、オートミールは温かく煮込んでもトロトロになっておいしいため、冬の朝食として体を温めるのにも有効だ。通常は牛乳を入れて煮るのだが、水で煮こんでも食べやすい。
塩昆布や鮭フレークなどをかけて和食のおかゆのように食べる食べ方は、10年ほど前から、実は筆者の親は朝ごはんに食べていた。食物繊維やミネラルも豊富な「おかゆ」になるので、高齢者にもおすすめだ。
オートミールは、日本では大手メーカーの日本ケロッグでも販売していないこともあり知名度はまだ低い。ふりかけにも合うシリアルなので、実は日本人になじむ食品だと広く気づいてほしい。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)