ワインをおいしく飲むためにあるジョージア料理 日本人と相性の良い味わいも

松屋の「シュクメルリ鍋」など日本でも最近ジョージア料理に注目が集まりつつある。ジョージアといっても米国の州ではない。南コーカサス地域の旧国名グルジア。北にロシア南にトルコ、東にアジア、西に欧州と、さまざまな文化圏にはさまれており、さまざまな地域の影響が混ざり込んだ大変ユニークな文化を有している。もちろん食事に関しても例外ではない。どこかで見かけた要素がありつつ、他のどこにもない料理。それがジョージア料理ともいえる。今回はその魅力について紹介する。

ジョージアは「ワイン発祥の地」との説も

ジョージアは、一説にはワイン発祥の地と言われている。その説を裏付けるように、ジョージア人はとにかくワインを飲む。家族で食事に出て乾杯し、訪ねてきた友人に自家製ワインを振る舞い、祝事があれば朝まで飲み続ける。

ただ飲むのではない。ジョージア人はワインを飲むたびに「乾杯」する。その場の全員が立ち上がり、願いをかけ、杯を合わせ、一息に飲み干す。これを食事中に何度も何度も繰り返すのだ。

ジョージア人の愛するワインは食卓の主役

ジョージア人にとって、食事とは席についてゆっくりと味わうものではない。杯に注がれたワインをおいしく飲むための脇役なのである。

ジョージア人は、自分たちの誇りであるワインをおいしく飲むためにさまざまな文化を生み出してきた。料理もその一つなのである。ジョージア料理の多くは、ワインをおいしく飲むために生み出されている。ワインに合う料理は世界中に多くあれど、ジョージア料理をおいて語ることはできない。

ワインが止まらない定番ジョージア料理

ジョージア料理の代表格といってもよいほどの定番料理がヒンカリである。ひき肉・玉ねぎ・各種香草を混ぜて作ったタネを、小麦粉で作った皮で包んでゆでたものだ。

ヒンカリを食べる際は、カトラリーは使わない。ギュッとひねられた上の部分を素手でつまみ、そのまま手に持って食べるのがジョージア流だ。一口かじった瞬間に肉汁があふれ出してくるので、まずはその肉汁を吸って味わい、その後に皮と具をいただく。

ヒンカリの見た目は肉まん、味わいはまるでパスタ

肉と香草の香りとスパイス、強めの塩気がいっせいに口の中に広がる。追いかけるように酸味の強いジョージアワインを流し込むと、ブドウの若いフレッシュな香りとスパイスが口の中で芳醇なアロマに変わっていく。

ヒンカリは食事の一品としてではなく、それだけで楽しまれている場面が多い。大皿にこれでもかというほどの数のヒンカリをどっさりと盛り付け、ただひたすらヒンカリとワインを交互に摂取し続けるのが、ヒンカリの醍醐味でもある。

ヒンカリがレストランで食べるジョージア料理の定番なら、食堂の主役はオストリをおいて他にない。

トマトベースのスープにみじん切りの玉ねぎを同量程度入れ、たっぷりの香草・スパイスでぶつ切りの肉を煮込んだ、スープと煮込み料理の中間のような料理である。肉は鶏肉のこともあれば、牛肉や豚肉が使われることもある。

レストランによっては、石焼の器で提供されるオストリ

「オストリ」とは、ロシア後で「辛い」という意味。ロシアにほど近いジョージア北部で生まれた料理である。その名の通りピリッとスパイスのきいた、強い印象の料理である。

スープの上澄みで澄んでいるのは肉の油の層。ガツンとくる強い刺激と油の存在感で、後味だけで何杯も赤ワインが進む。甘味が少なくさっぱりとした味わいのドライレッドワインを合わせると、食後に胃がもたれる感覚が軽減されるように感じる。山が多く、特に寒い北部地方ならではの味わいといえよう。

ワインとのマリアージュを語るならば、シュクメルリは決して外すことはできない。クリームと大量のガーリックでチキンを煮込んだ料理である。

上品な見た目と、香りたつガーリックの存在感がたまらないシュクメルリ

一見するとクリームシチューのようにも見えるが、香りが全く違う。ガーリックそのものの強烈な香りとクリームの重厚な香りが混ざり合い、香りだけでよだれが出るほどである。やや強めの塩味とあまりに強いガーリックの香りは、一皿食べきるまで手を止めさせてはくれない。

こちらも単品で食べるとパンチが強く、ともすればクドく感じてしまいかねない味わいである。そこで登場するのが、軽い味わいのジョージアワイン。渋みが少なくさわやかな香りの白ワインは、口に入れた瞬間に油とガーリックの存在感をなかったことにしてしまう、不思議なコンビネーションなのである。

先日、外食チェーン・松屋において、このシュクメルリをイメージした「シュクメルリ鍋」というメニューが期間限定で登場したというニュースが、ジョージアにも届いてきた。クリームとチキン、そして食欲をそそる大量のガーリック。日本人が嫌いなはずがない。

知られざる美食の国ジョージア

ジョージア料理は、日本においてはまだまだ馴染みの薄い部類といえるだろう。「ジョージア?どこにあるの?」という声が聞こえてきそうだ。しかし、実は乳製品や新鮮な野菜、さわやかな香草など、日本人の舌に合う素材がたくさん使用されており、日本人にとってとてもおいしい料理であるといえる。

また、ジョージア人は自分たちのワインに強い誇りを持っている。ワインと、ワインに合う料理なら世界で自分たちの右に出るものはいない、とはジョージアでよく聞かれる言である。

ジョージア料理はワインをおいしく飲むための料理という表現がしっくりくる。日本でも人気のワインに合う新しい食の選択肢となるに違いない。(フードライター 加藤麻結)