旧ソ連ならでは?「シェアしやすい」スナックがジョージアでは人気

小腹が空いたときのおやつやリラックスタイムのお供に、あるいはお酒のおつまみとしてもピッタリのスナック菓子。日本でももちろん人気であるが、東欧・ジョージアにおいても好んで食べられる食品のひとつである。
夕食の後などのリラックスタイムはもちろん、公園で駆け回る子どもから路端でボードゲームに興じる老人まで、手元には色とりどりのスナック菓子が置かれている。現代ジョージア人の生活と切っても切れない嗜好(しこう)品、それがスナック菓子なのである。

日本人には馴染みのない「イクラ」フレーバーも

幅広い性年代に愛される理由の1つは多彩さにある。プリングルスやLay’sなど、世界中で見かけるブランドのものもあるが、ロシア語やジョージア語でパッケージングされた、他ではあまり見かけないものも多い。

また、素材もポテトだけでなく、コーンのものや小さなラスクのようなものもあるし、形状もさまざまである。もちろん、食感や満腹感も商品によって大きく異なる。

売場にはさまざまなスナック菓子が並ぶ

特に驚かされるのはフレーバーである。塩味やチーズ味といった定番フレーバーは特に年配の女性に好まれて食べられることが多い。一方でトマト味やサワークリーム味など、ジョージア料理に欠かせない素材のフレーバーをつけたスナックもあり人気である。

最近見つけて驚いたのは「イクラ味」。ロシア料理ではキャビアやイクラは好んで使用される食材であるが、まさかスナックにも取り入れられているとは思わなかった。

何事も経験と思い、勇気を出して食べてみた。結論としては、おいしい。味の再現度はかなり高く、口に入れた瞬間、イクラの香りが鼻に届く。独特の生臭さのような香りまで感じたので驚いた

一見するとぎょっとする、イクラ味のスナック

しかも、その生臭さが不快ではなく、スナックの塩味やうまみとよく調和している。ポテトチップスではなく、硬めのラスクのようなスナックなのだが、その噛みごたえとフレーバーがよく合っている。噛めば噛むほどイクラのうまみが口内に広がり、しかも後味には爽やかな小麦の香りが残る。

ジョージアで出会ったスナックの中でも特においしい。ぜひ日本でも発売して欲しいフレーバーである。

1人では食べきらないジョージア人

ご存じの通り、ジョージアは旧ソ連国家のひとつ。そのため、今でも日常生活のさまざまな場面で社会主義的な価値観や行動を見ることがある。スナック菓子の食べ方ひとつとってもそれを感じる、というと大げさと思われるだろうか。

ジョージア人は、よほどのことがない限り、何かを1人で食べ切るということがない。食事も必ずといっていいほど大皿に盛られて出てくるし、菓子類も必ず何人かでシェアして食べている。

棒付きアイスやロリポップなど、直接口をつけて食べるものですら、親しい間柄ではシェアしている光景をよく目にする。そのため、個包装の小さな菓子よりも、袋に入ったシェアできるものが断トツで人気だ。

スナック自体は小さく、たくさんピースが入っているものが人気

スナック菓子のフレーバーは、前述した通り世代ごとに好みが分かれる傾向が見られる。若い世代には、紹介したイクラ味のような目新しいフレーバーや、トマト味などジョージア料理に通じる味が人気である。

しかし、この「シェアできるものが良い」という傾向は、年齢・性別による差は見られない。ジョージア人全体に見られる傾向である。子どもたちはお小遣いが限られるので、小さなピースがたくさん入っているタイプの小袋が人気である。

スナック菓子からも文化が見える

今や、世界中どこに旅をしても、スナック菓子を目にしない国はないと言っても過言でない。しかし、棚に近づきよく見てみると、同じように見えていたスナック菓子であっても、その国・文化圏ごとに特徴があることがわかる。

食感やサイズ、食べやすさや手が汚れないこと、その国の文化ごとに、さまざまな工夫がなされている。もちろん、フレーバーもそのひとつである。

建物や自然、宗教施設など、そこにしかない光景も、その国の魅力を見せてくれる要素である。しかし、世界中で見つかるものだからこそ、その文化の特徴が見えてくることもある。グローバル社会だからこそ見えてくるユニークネス。そんな視点で見てみると、スナック菓子の見方が少し変わりそうである。(フードライター 加藤麻結)