英国のサンドイッチが革命的に進化 背景に健康意識や移民増加
英国のサンドイッチがいま面白い。ダイエットブームや環境保護への意識の高まり、移民増加による需要の変化がサンドイッチにも反映し始めた。個人のニーズを満たすサンドイッチとは?英国のトレンドを紹介する。
体に良いといわれる食べ物を好む英国人が増加
英国人にとって、サンドイッチは、昼食の定番メニューである。毎年、最も人気のあるサンドイッチがマスコミを通して発表され、興味をそそられる。自分のお気に入りのサンドイッチのランキングが気になるという英国人も多い。
こうしたサンドイッチの定番と言えば、サーモン、ツナ、卵、エビやチキンを白パンで挟んだ三角のシンプルなサンドイッチ。だが、その様相がここ数年間で急激に変化している。
その主な理由は、消費者の嗜好(しこう)の変化である。2011年以降、健康的な食事を意識する英国人が急激に増え始めた。加工食品よりも、自然食品や体に良いといわれる食べ物を好む傾向が続いている。
また、旅行先で味わったエキゾチックな風味を求める英国人や移民も多く、多様なスタイルや風味への需要が高まっている。さらに、肉食ベースから植物ベースへと食生活を切り替えたり、低カロリーを好んだり、グルテン食品を避けるといった人々も多い。
国際色豊かなサンドイッチも登場
消費者は、ニーズや気分に合わせて選ぶことができる。最近のトレンドを紹介する。
伝統的な三角形のサンドイッチを追い越す勢いで、トルティーヤで巻いたラップサンドの種類が年々増えている。野菜やスパイス入りのカラフルなトルティーヤも最近のトレンドである。
また通常のサンドイッチに加えて、ベジタリアンやビーガンを対象としたサンドイッチが増えている。2020年早々、グルテンフリーのサンドイッチも登場。グルテンフリーへと食生活を切り替える英国人のニーズに応えている。
高級サンドイッチというカテゴリーもある。高級スーパーマーケットのMarks & Spencerは、「ベストエバー(best ever)」 シリーズの一環として、通常のサンドイッチを高級化した「ベストエバー・サンドイッチ」を販売開始した。
また消費者はカロリーも基準にして選択できる。サンドイッチの具の種類は限られているが、カロリー控えめのバージョンがある。こうしたサンドイッチは、一目でわかるように「40%脂肪減(40% reduced fat)」といった表示がされている。
国際色豊かな風味とバラエティーのある材料、さらに、年中行事を意識した風味とスタイルが消費者を引き付ける。例えば、クリスマスシーズンには、七面鳥とクランベリーソースのサンドイッチが店内に並ぶ。
また、ギリシャやインド、中近東や南アメリカなどの名物料理をサンドイッチで味わえる。例えば、チキン・タザキ、チキン・ファヒータ、インド風ビリヤーニなどである。
代替食を使った革命的なサンドイッチも
2020年1月に登場したビーガン用サンドイッチが面白い。英国のタイムズ紙が1月後半にビーガン食品のベスト30を発表した。そこで、ベスト・オフィス・ランチとして絶賛されたのが「ノー・エッグ&クレソンのサンドイッチ(No Egg & Watercress Sandwich)」と「ノー・スモークサーモン&ポテトのサンドイッチ(No Smoked Salmon & Potato Sandwich)」である。
前者は、卵の代わりに豆腐と白豆などで卵の食感と風味を実現している。後者は、燻り砂糖と海藻などを使い、サーモンの風味を引き出している。マイクロプロティン使用のビーガン用サンドイッチが多いなかで、他の素材でそれぞれの風味を実現した珍しいサンドイッチである。(フードライター ラッド順子)