バオバンなどアジア系ストリートフードが英国で人気急上昇

いま英国で注目されているのがストリートフードである。貧相なイメージが根づいていたストリートフードだが、英国でおしゃれに生まれ変わった。ちょっと粋な食体験の場として多くの人々をひきつけている。この人気にあやかり、食品企業もミールキットの開発に乗り出している。今回は、ストリートフードが人気となった背景と注目の商品を紹介する。

グルメな人々が注目

ストリートフードの人気が年々高まっている。2018年には前年度売上げの9.1%アップが見込まれ、12億ポンドに達すると予想されるまでに至った。コロナまん延によるロックダウンのため数字は明らかではないが、今でもストリートフードには長い行列ができるほど。以前の英国ではまったく考えられなかった現象かもしれない。

かわいい「バオバン」(筆者撮影)

ストリートフード人気の起点はグルメと称する人々。かつては、軽トラックで売られる淡泊で粗末なハンバーガー、ホットドッグやアイスクリームが代表的なストリートフードだったが、今や「質が高い」「おもしろい」「本場の味」と人々に絶賛されるまでに成長した。

本場の味を手軽に体験

なぜ人気があるのだろうか? まず、世界中の多種多様な料理が味わえることが魅力の1つ。しかも、レストランでは味わえない珍しい味や本場の味が楽しめる。例えばメキシコ料理であれば、アボガド・タコスなどとのフュ―ジョン風料理が味わえる。またインド料理であれば、インドの特定地域のみで味わえるエキゾチックな料理が売られていたりするのだ。

パンダの「バオバン」(筆者撮影)

ストリートフードの多くは本場の味そのままで、レストランと同様にメニューの数も多い。グルメをうたう英国人が増える中、食事の場所にこだわらず、本場の味を優先する消費者が多くなっている。マーケティング企業Catere.comの調査によると、回答者の約50%が「ストリートフードは、レストランよりも本格的な味が楽しめる」と感じており、37%は「グルメな食体験ができる」としている。

参照サイト:
Street food: the new trends shaping foodie culture | Reports | The Grocer
Street success – How street food vendors are impacting UK consumers | UMi

味噌ラーメンやカツカレーも

どんな食べ物に人気が集中しているのだろう? アジア系食品の人気がすごい。特にバオバン、韓国バーベキュー、日本の味噌ラーメンやカツカレーなどが目立つ。本場のバオバンは、日本の肉まんに外見こそ似ているが多少異なる。バオバンは中央に切れ込みがあり、タコスのように具を挟むことができる。英国でその具といえば、日本風の揚げ豆腐や味噌味ソースのナスの炒め物が入ったりする。バオバンは台湾由来と聞くが、日本のものと勘違いしている人も多いそうだ。

バオバンとして売られるスイーツもある。バオバンをドーナツ風に油で揚げてクリームなどを挟んだものや、「あんまん」型のスイーツもバオバンと称して売られている。日本の「かわいい文化」を意識して開発されたかのように愛らしい外見が人々にアプローチしている。

野菜カツカレーや豆腐カツカレーも販売中(筆者撮影)

食品企業も次々とミールキットやインスタント食品を売り出している。例えば、M&Sが販売開始したホイシンソース味のキノコ入りバオバン。これはパンダの形がかわいい。ミールキットであれば、Schwarts社によるカリビアン・ジャーク、韓国バーベキュー、アフリカ系のチミチュリソース、タイのシラチャーソースなどの短時間で作れるものが人気だ。

ストリートフードは、食を楽しむ機会を広げるだけではなく、起業家を志す者にスタートアップとしての機会も与えている。ますます発展しそうな事業エリアである。(フードライター ラッド順子)

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