ユニークなスパイスラムが続々…英国でカクテルブームが再来

ジンブームが続く英国で、ラム酒の人気が高まっている。注目すべきは「スパイスラム」。甘ったるいイメージで敬遠され気味だったスパイスラムが、トレンディーなドリンクとして英国市場をにぎわせている。英国人を魅了するスパイスラムの人気の背景と商品を紹介する。

ラム酒がジンを追い越す?

「ジンネサンス(ginaisannce)」と呼ばれるほどクラフトジン・ブームが続く英国。しかし最近、ラム酒が爆発的に売れ始めている。

スーパーのラム酒売り場(筆者撮影)

Global Data Intelligence Centre によると、2017年から2018年にかけてラム酒の年間売り上げが7.8%成長した一方で、ジンは3.8%のみであった。Wine and Spirits Trading Associaiton(WSTA)は、ラム酒は2017年以降1億ポンド以上の売り上げを記録し、2019年以降ホワイトラムの売上げはスパイスラムに追い越されると推測している。

さらに、大手酒販売チェーンであるMajesticによるラム酒の販売数を見ると、2019年には前年比の46%も増え、そのうち、スパイスラムの売上げは、5年と比べて80%も上昇している。売上げだけでない、種類の増加も目覚ましい。スーパーなどで入手できるラム酒は2006年には約50種類だったのが、2019年には200種類以上にも及んでいる。

ラム酒は、ジンよりも高額であることが消費者には気になるが、今のところプレミアムなラム酒の需要が高いと言う。

参照サイト:
Rum fellows: spirit enjoys a spicy UK revival  The Guardian
Rum: Spiced and flavoured variants are picking up pace Drinks Retailing News  The Voice of Drinks Retailing
Rum in the UK: Rum is climbing in popularity at the expense of gin

スパイスラムが売れる理由は

人気の理由の一つには、カクテルブームのカムバックである。ラム酒はストレートでも十分に楽しめるが、カクテル用に購入する英国人が多い。また、スパイスラムのコーラ割りは、人気のあるカクテルの1つである。

ココナツライム風味のホワイトラムとボタニカルなスパイスラム(筆者撮影)

2つ目は、クラフトビールと同様に個人営業などの小規模蒸留所が増えていることである。「クラフト」に目がない英国人にはとても魅力的だ。

3つ目に、甘ったるくないボタニカルな風味がアピールしている。インスタグラム映えする独特のラベルや素敵なボトルも引き付けている。

塩キャラメル風味やランベンダー入りも

英国のマスコミに頻繁に取り上げられている商品と言えば、Rockstar Spirits社の「Pineapple Grenade(ボトル価格4320円)」。コーラとの相性を追求した傑作品と担当者は語る。

特徴は、3種類の高級なラム酒を65%含んでいることとパイナップル・塩キャラメル風味である。この他にシトラスと塩キャラメル、オレンジとショウガ、はちみつとグレープフルーツといった商品もある。

コーヒー風味のスパイスラムDeadman’s Fingers(筆者撮影)

ビールで有名なBrewdog社もラム酒の開発販売に踏み出している。11種類のボタニカルを使用した「Five Hundred Cuts Rum」が人気商品である。ジンブームからヒントを得ており、オレンジピールやラベンダー、カホクザンショウ、シナモン、ナツメグ、トンカビーンズ、ショウガ、オールスパイス、カルダモンなどが含まれている。

廃棄用バナナも酒に

英国では、サステナビリティーを強調するラム酒も発売されている。Willian Grant & Sons社による廃棄バナナを利用した「バナナピール・ラム」である。

さらに、有名ブランドのDead Man’s Fingers Spiced Rumのカンナビジオール(CBD)を浸出させたスパイスラムも見逃せない。まさに、健康ブームのトレンドにのった画期的な商品と言えよう。(フードライター ラッド順子)