健康志向が高まる英国で野菜入りカクテルが注目
猛暑が続いた今夏、英国では野菜入りカクテルが注目の的になった。ロンドンをはじめとする大都市には、このカクテルを味わいたいというグルメが続々とバーに向かった。今回は英国のカクテルのトレンドを紹介する。
砂糖を使わず野菜を使う
野菜入りカクテルといえば、すぐ思いつくのがトマトジュース入りのブラディメリーではないだろうか。知名度の高いカクテルである。英国で夏のガーデンパーティーといえば、「Pimms(ピムズ)」と呼ばれるカクテルが有名だ。優雅に浮かぶイチゴやオレンジ、薄切りキュウリが食欲をそそる。でも、キュウリとなると日本人にとっては少し奇妙かもしれない。
砂糖を使わず野菜を使うという発想がカクテルを変化させつつあるようだ。伝統的なカクテルの甘さが気になるという人は多い。特に米国では野菜入りカクテルの開発が非常に進んでいる。例えば、ニューヨークのバー「Mace」は数年前の開店と同時に、いち早く野菜入りカクテルをメニューに入れたことでも有名である。
廃棄されるアスパラガスの根元を活用
ロンドンのメイフェアにあるレストラン「Isabel」は、アボカド・マティーニやキャロット・カクテルなどさまざまな野菜入りカクテルをメニューに加えている。キャロット・カクテルの場合、純粋なキャロットジュースを使用するのではない点がおもしろい。ターメリックとコリアンダーシードをニンジンと一緒にウイスキーに漬け込み真空パック後、これを煮込んで裏ごしする。それをドランブイ(モルト・ウイスキーをベースに作られる、リキュールの1種)とミックスしてカクテルにするのだ。なかなか手がこんでいる。
廃棄物ゼロレストランで名高い「Apricity」は、通常であれば廃棄される運命のアスパラガスの根元をウオツカに漬け、アスパラガス・マティー二をつくっている。ニュージーランド産白ワイン「sauvignon」に入れて楽しめ、グリーンリーフの味がすると評判である。
ロンドンのホテルThe Langham(ザ・ランガム)で人気のカクテルといえば、「フューチャー(未来)」だ。材料は、ジン・レモングラス・ベルモット・ミント・オリーブオイル・・・そしてエノキ茸。エノキ茸をベルモットに24時間漬け込み、裏ごしする。エノキ茸のうまみを引き出すのだ。
参考サイト:
“Beetroot negroni-one of your five a day?” in The Times Saturday, June 11 2022
次のトレンドはチーズ?
The Langhamのバーテンダーは、次のトレンドはチーズと予想する。流行の先取りも早い。彼らはすでにブルーチーズとアーティチョーク・アンチョビのうま味を生かしたウイスキーベースの「ネグローニ」を発売している。
同様に、Sohoにあるレストラン「FireBird」では、ギリシャ風サラダ風味のマティーニのサービスを開始。フェタチーズとオレガノを煎じたジンと、キュウリや赤ピーマンを浸したベルモットを特徴に持つ。
時代とともにカクテルも変化。英国人の健康志向の高まりがカクテルにまで影響をおよぼしている。来年の主流はもう野菜ではなくてチーズなのか? 興味深い。(フードライター ラッド順子)