花粉症対策2004 大注目!予防、軽減に役立つ食品成分
最近、花粉症などのアレルギーを予防、軽減させる多種類の食品成分研究が進んでいる。アレルギー反応に関与する免疫細胞であるTh1/Th2細胞のバランス改善に役立つ乳酸菌類。一方、マスト(肥満)細胞からのヒスタミンの遊離抑制に役立つのがポリフェノール類だ。それらの優れた成果の一部を紹介する。
●花粉症発症のメカニズム
アレルギー患者の血液を調べるとTh1とTh2と呼ばれる免疫細胞のバランスが崩れ、Th2に偏った状態だという。通常は双方がバランスを保ち生体防御機能を担っているが、Th2型に偏ると花粉のように反応しなくても良い異物にまでIgE抗体(アレルギー反応を仲介する物質)を作り出し、過剰な免疫反応が起こる。マスト細胞に結合したIgE抗体がアレルゲンと結合すると、ヒスタミンが放出され、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状が発生するのだ。
このうちTh1/Th2のバランス改善に役立つのが次に紹介する乳酸菌類。一方、ヒスタミンの遊離抑制に役立つのがポリフェノール類だ。
●乳酸菌 Th1/Th2免疫細胞のバランスを回復
◆「L‐92乳酸菌」と抗アレルギー作用
カルピス基盤技術研究所は同社が所有する乳酸菌の中から「L‐92乳酸菌」を選抜し、その高い抗アレルギー作用に着目し研究活動を行っている。アレルギーモデルマウスの試験では、L‐92乳酸菌を投与した際にアレルギーの原因物質であるIgE抗体が最も減少することや、Th1型を活性化しTh1/Th2バランスの改善を確認。また三度の臨床試験とモニターアンケートなどの結果、花粉症・アレルギー性鼻炎の症状に効果があることを実証している。
◆「KW乳酸菌」と抗アレルギー作用
キリンビール基盤技術研究所は、小岩井乳業、昭和女子大学大学院生活機構研究科との共同研究により、アレルギー改善作用を有する「KW乳酸菌」を発見。アレルギーモデルマウスの試験でKW乳酸菌摂取によりアレルギー進行の指標(IgE抗体の血中濃度)が常に低くなることと、Th1/Th2バランスの改善を確認した。また〇三年1~4月に、花粉症患者二八人をKW乳酸菌ヨーグルト摂取群と従来のヨーグルト摂取群に分け、採血や自覚症状アンケートを実施。KW乳酸菌摂取群にTh1/Th2バランスの改善と喉のかゆみや眼の痛みなどの症状改善を認めたという。
●ポリフェノール類 マスト細胞に作用しヒスタミン放出を抑制
◆トマト果皮に含まれるポリフェノール「ナリンゲニンカルコン」の抗アレルギー活性
キッコーマン(株)は日本デルモンテ(株)と共同でトマト果皮に含まれる特有のポリフェノール「ナリンゲニンカルコン」の研究を進めてきた。その結果、強い抗アレルギー活性(ヒスタミン遊離抑制活性)を見出し、動物モデル試験でもその効果を確認した。さらに未病医学研究センターと共同で花粉症の男女二四人を対象に臨床試験を実施。〇二年2月二週目から一カ月、毎日トマト抽出物を三六〇ミリグラムずつ摂取した結果、花粉飛散ピークの3月上旬には、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼のかゆみなどに明らかな改善効果がみられた。また肝機能異常や眠気、喉の渇きなどを示す人もなく、安全性も確認できたという。
◆ペパーミント抽出物含有飲料の花粉症に対する有用性及び安全性
岡山大学薬学部薬物作用解析学研究室(亀井千晃教授)は、(株)コカ・コーラアジア・パシフィック研究開発センター、小川香料(株)との共同開発で、ペパーミント(以下PE)抽出物「ミントポリフェノール」に花粉症症状を緩和する作用があることを発見した。
ラットのマスト細胞を用いた実験でPE抽出物の抗アレルギー(ヒスタミン遊離抑制)作用を確認。動物の鼻アレルギーモデルでくしゃみや、鼻の掻痒感などへの効果も明らかになった。さらに総合医科学研究所の協力で〇三年の花粉飛散期に臨床試験を実施。花粉症の五〇人のうちPE抽出物三〇〇ミリグラム含有茶飲料摂取群に、鼻粘膜の腫れなど花粉症症状の有意な緩和が確認された。(研究結果は昨12月2日の第三回国際フードファクター会議で発表された)
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ペパーミントは、爽快な香りで知られるシソ科のハーブ。通常は葉から香り成分(精油)のみを取り出して食品や薬品などに利用されるが、香り成分を除いた残りの部分に含まれる成分(ルテオリン配糖体)にも優れた機能性があることが同研究で明らかにされた
ナリンゲニンカルコンは、市販の生食用トマトには通常ほとんど含まれず、トマトジュースやケチャップなどに使われる品種の加工用トマトに多く含まれている。また果皮が除かれるため、トマトジュース・ケチャップなどには通常ほとんど含まれないという