ダイズルネッサンスの母は「モナリザ」 一晩浸けて…の大豆が簡単調理にも

2003.01.10 89号 2面

「ニュー大豆商品」は、ここのところ急激な勢いで世の中に登場していた。まさに新大豆生活、「ダイズルネッサンス」なのだが、これには訳があった。ルネッサンスらしく、「モナリザ」のもとでたくさんの新生児が育まれたのであった。

京都大学名誉教授・WHO循環器疾患予防国際共同研究センター長である家森幸男氏のモナリザ研究については、『百歳元気新聞』ではもうお馴染みだ。モナリザは、「健全な食生活の保全」というラテン語を縮めたもの。家森氏らは二〇年来、世界六〇地域の食と健康の関係の調査を実施、この間急速に失われつつあるそれぞれの伝統的な食文化にこそ、民族を健康に導くエッセンスが凝縮されていることが分かった。モナリザ研究は、そうした伝統的な良い食文化を次世代に伝えていくダイナミックな活動だ。

日本人にとっての「伝統的な良い食文化」とは、大豆・魚・海藻。この中で特に食習慣の存亡が危惧されているが大豆という。納豆・豆腐・味噌・湯葉・おからは、すべて典型的な和食食材。朝ご飯はトーストにサラダ、昼ご飯は麺類、晩ご飯はエスニックメニューと味覚も国際色も豊かなテーブルになれば、口にする量はどうしたって減少する。

豊かさを知って逆戻りができないのなら、新しい日本のテーブルにぴったりの大豆製品を作り出すしかない。新製品は、すべてここ半年以内に開発されているが、それもそのはず。全国約四〇社の食品メーカー・商社が集まり、家森氏の指導のもと研究開発を推進する「モナリザフード研究会」が、一昨年12月に発足したことから、話は始まった。

開発テーマは、大豆を丸ごと細胞単位に分離したパウダーを好活用していくこと。大豆の粉といえばきな粉だが、これは粉砕時に細胞膜まで破壊しタンパク質の酸化防止のため焙煎しているので、保水力を持てない。パウダーは酵素を用いて細胞単位にとどまって分解しているので水を抱くことができ、他素材との密着や発酵も可能となり、特有のにおいもクリアした。

その栄養価から「奇跡の作物」とさえ言われながら、一晩水に浸けておかなくては柔らかくならず、簡便食材にはなり得なかった大豆にとって、これは画期的なことだ。

◆女性ホルモンに似た働きで更年期・骨粗鬆症対策

大豆は「畑の肉」といわれるくらいに、タンパク質が豊富。植物性脂肪・ビタミン類・食物繊維も多い。さらに大豆といえばイソフラボンだ。動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞から心臓を守る。女性ホルモンに似た働きをし、更年期障害を軽減する。日本や中国の女性の更年期障害が欧米の女性に比べて軽いのは、イソフラボンを含む大豆を食べているからとされる。一方、乳がん・前立腺がんはかつて欧米人に多く日本人には少ない病気だったが、日本でも増えてきているのは、これもイソフラボン摂取量との関連性が指摘されている。骨からカルシウムが流出するのを抑える作用もあるので、骨粗鬆症の予防にもなる。

欧米人にとっては「どうしてもあの大豆の青臭さが苦手」という声があったが、今後はパウダーの活用で画期的なメニューが登場するかもしれない。

◆どうして大豆丸ごと食が大事なのか

もうすぐ来る節分。歳の数だけ大豆を食べる風習は良くできている。加齢につれて足りなくなる栄養成分を大豆で補えるからだ。

大豆はそのまま丸ごと食べるのが望ましい。豆腐のイソフラボンの量は元の大豆の約9%しか含まれていない。しかも元々は5種あったイソフラボン成分にバラツキも出る。豆腐の製造過程でつぶした大豆に水を加えて煮て布でこした「豆乳」、表面に張った薄い膜の「湯葉」、絞りかすの「おから」など、それぞれイソフラボンの含有成分が違う。昔、日本では、豆腐と一緒におからや湯葉も食べていた。「大豆丸ごと食」的に大豆加工物を食べる理にかなった方法だったのだ。

◆丸ごと大豆なら1日50グラム!

米国食品医薬品局は1999年、1日計25グラムの大豆タンパクを摂取することによる効能を認め、食品への表示を許可した。これは大豆に換算すると約60グラムだが、丸ごと大豆なら50グラムで適当だと、「モナリザフード研究会」は計算した。イソフラボンの摂取のみで考えると、その半分の25グラムでも十分とする。

◆モナリザフードワッペンをもっと活用

「モナリザフード研究会」は2000年10月、立ち上がった。参加企業は、伊丹かねてつ食品(株)・伊那食品工業(株)・インシーズン(株)・大塚化学(株)・オリエンタル酵母工業(株)・キユーピー(株)・太子食品工業(株)・東ハト・(株)ドンク・日清製粉(株)・日本セルフーズ(株)・(株)ノーブル・フジッコ(株)・ホーム食品(株)・(株)マル勝高田商品・(株)ユニセル・(株)よし川‐‐など。幹事会社は日清製粉(株)・キユーピー(株)。

大豆パウダーに関しては「いい素材の物でも、1社が独占して成功した例は過去にない。それより食品産業全体として活用した方がいいと意見がまとまった」(日清製粉 野村聡研究・開発本部長)。

今後は会が認定した商品についているモナリザフードワッペンの横に星のマークを入れて、「星1つごとに丸ごと大豆が10グラム入っています」と分かりやすく表示するのはどうかなど、検討している。

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