リンゴ加工特集

◆リンゴ加工特集:不安定続く加工原料事情 産地構築や生産性向上取り組む

農産加工 2021.11.24 12327号 08面

 東北農政局は、5月20日現在の2020年産東北のリンゴ結果樹面積、収穫、出荷量をまとめ発表している。それによると、結果樹面積は2万6800haで前年と変わらず収穫量60万0700t、出荷量54万0600t、それぞれ10%増だった。県別では青森県46万3000t、前年比13%増、岩手県4万7200t、同3%増、秋田県2万5200t、同9%増、山形県4万1500t、同2%増、福島県2万1100t、同9%減。なお長野県は13万5400t、同6%増。全国に占めるシェアは青森県61%、長野県18%、岩手県6%となっている。(東北支局長=三沢篤)

 ●20年産加工用原料集荷 前年比25%増、7万4900t

 1年半に及ぶコロナ禍で消費生活が大きく変わり、最大のリンゴ生産県青森ではねぶたをはじめとした全国的に知られる夏祭り、イベントがことごとく中止となり、県経済を支えるリンゴも大きな影響を受けている。「日持ちの良さから、家庭向けの需要が高まった一方で、宿泊施設、土産物店、飲食店向けの業務用の落ち込みが懸念される」(青森県りんご果樹課)とみている。

 10月に発表された20年産(20年8月から21年8月)の青森県リンゴ販売額は1008億円。7年連続で1000億円台を超えた。しかし、前年比では8%減。販売数量は41万9000t、金額では前年を下回ったものの同17%増と伸びた。ミカンや他県産リンゴなど競合果実が多く出回り、相場を下げていった。直近5ヵ年平均5%増。仕向先別では県外販売が935億円、前年比8%減、数量では同15%増。県内販売42億9000万円、同1%減、数量同11%増。

 加工仕向けは29億5000万円、前年比14%(4億8000万円)減、数量は7万5000t、同25%増、5ヵ年平均の数量では3%増。原料価格は1kg33円、前年比31%減。消費地市場価格について同課では「年明け以降引き合いが強まり、価格は一時平年並みになったものの、入荷量の多さ、競合果実も潤沢で安値で推移した」としている。

 20年産青森のリンゴについては、おおむね順調に肥大が進み、県でも前年を10%上回る45万1100tと見込んでいた。数量もそうだが、品質、食味とも良好に仕上がったとした。競合果実については、春先の低温の影響で、和ナシが不作となり、9月までは果実全体に入荷量が少なく高値基調となったが、その後は天候に恵まれ、ミカン、イチゴなどは潤沢な入荷となった。県産リンゴは大きな気象災害もなく豊作で、入荷量は大幅に多く、しかも果実品質が高く評価され、価格は平年並みに推移した。

 20年産の加工仕向け原料集荷量は、青森県りんご加工協会加盟11社でまとめたものが7万4893tで前年比25%増となった。県内にはこのほかJAの産直所や小規模な施設、自家消費分の搾汁を行っているところが多々あり、この分が約1万3400t。県の調査でも毎年変動があり、正確には捕捉できていない。

 20年度の加工協会集荷量を月ごとに見てみる。9月8122t、前年比33%増、10月1万6424t、同22%増、11月1万9102t、同10%増、12月9614t、同26%増、1月3623t、同4%減、2月2920t、同19%減、3月4329t、同20%増、4月3207t、同39%増、5月2795t、同185%増、6月2519t、同356%増、7月1090t、同341%増、8月522t、同260%増。累計7万4893t、3ヵ年平均対比4%増。

 加工仕向け量はここ7年、7万tから9万t台で推移しているが、平成を振り返ると2003(平成15)年6万1000t、05(同17)年6万3000t、06(同18)年6万8000t、09(同21)年6万1000t、11(同23)年5万7000t、13(同25)年6万2000tと同23年を除き6万t台に止まっている年も多かった。

 「記録的な不作で、価格高騰」(同23年)、「品質良好で品薄感を背景に高値」(同25年)。霜やひょう、低温といった気候変動、特に台風による落下など避けられない中で、生果の価格安定機能を加工は果たしてきた。加工原料の安定確保は難しく、原液を供給する大手ボトラーの需要と原料価格の変動で加工場の経営はかじ取りが難しい。

 「加工用リンゴは需要を満たせない状況にある。加工用園地の定着に向けた産地体制づくり、高齢化などにより、通常の栽培管理が困難な園地が増えていることから、生産組織の協働運営による加工リンゴを生産する体制の実証などに取り組む」(りんご果樹課)

 シャイニーの県りんごジュースは1982年から、鰺ヶ沢町の契約栽培園地で紅玉を中心に加工用リンゴを育ててきた。10人の生産者、専用園地15haの規模。契約書を取り交わし、さまざまなバックアップも行っている。

 一方、JAアオレンは19年度から板柳町の生産者と加工用リンゴの生産を始めた。10a当たり4tだったものを23年に6tにする計画は2年目で達成している。収穫日をずらしたり、作業時間の軽減を図るなどで生産性向上に取り組む。

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