パン粉特集
◆パン粉特集:家庭用、5年ぶり生産量前年超え 業務用の回復が課題
20年のパン粉市場は外食向けなど業務用が減少の一方、家庭用は5年ぶりに生産量が前年を上回った。世帯人数や調理機会の減少もあり家庭用は縮小傾向にあったが、新型コロナウイルス感染拡大で内食需要が高まり家庭で揚げ物を作る機会が増加。パン粉を使用したメニューも広がりを見せ、パン粉の価値があらためて見直されている。(三井伶子)
●見直されるパン粉の価値
20年のパン粉生産量は前年比3.8%減の15万5206tで、家庭用は7.0%増の1万9709t、業務用は5.2%減の13万5497tだった。家庭用は5年ぶりに前年を上回ったが、業務用は外食、業務用冷食向けが激減。市販冷食向けは伸びたが業務用全体をカバーできなかった。市場は9割近くが業務用で、パン粉事業者は前例のない収益減少に苦しんでいる。
家庭用は休校要請、外出自粛や緊急事態宣言発令により販売額が増加した。宣言解除後も高止まりで推移。巣ごもりを契機に揚げ物を作る機会が増加し、一部定着したとみられる。
新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、多くのスーパーでは惣菜のばら売り・量り売りが中止となり、これまで惣菜で買っていた豚カツやエビフライを家庭で揚げるようになったと考えられる。
パン粉のメーン購入層は60~70代だが、休校要請によって給食に代わる子どものランチ問題が浮上したことで40代の主婦層が加わり、宣言期間中はより幅広い層へ拡大した。
容量別では200~300gが減少傾向、100~200gが増加傾向にある。ある調査では、パン粉購入者の6割以上が「賞味期限内に使い切れないことがある」と回答。世帯人数が減少傾向にある中、賞味期限内に使い切れる100g台の商品へと需要が集中していくと考えられる。
パン粉はシンプルな原料による、極めて差別化のしにくい素材型製品である。パン粉メーカーは原料の小麦や製造方法にこだわるほか、さまざまな機能性を付与して製品の差別化を図っている。チャック付きのパッケージ、小麦粉・卵いらずといった利便性の高いパン粉のほか、近年は低糖質タイプの支持層の幅が広がっている。あくまでメーン食材を支える脇役ではあるが、最近はパン粉自体のおいしさにこだわった製品も目立つ。
家庭用の動向を見ると、フライスターは主力の「フライスターセブン」が好調に推移。「サクサクパン粉」は前年の3割増と大幅伸長した。巣ごもりでフライ料理を食べるシーンが増え、時間がたってもサクサクした食感を保つ商品特徴が支持された。
旭トラストフーズは、健康志向・省エネ志向に対応した家庭用商品の定番化を目指し、今期は「国内麦無添加にこだわったパン粉」「素材を生かす細目パン粉」「低糖質パン粉(低吸油タイプ)」や「ノンフライ調理パン粉」「少量の油で料理可能なフライパン調理パン粉」などの提案を強化する。
雪和食品は付加価値品の品揃えを強化。発売以来好調を維持する「冷めても美味しいパン粉」は継続して配荷が進んでおり、導入店舗でもリピーターを獲得している。
大川食品工業は、おいしさをより高められるパン種「ルヴァン種」を使ったパン粉を開発。おいしさにこだわった「ルヴァン種使用生パン粉120g」を今夏発売する。
●値上げ必至の局面に
食品値上げの波はパン粉業界にも押し寄せている。小麦粉、イースト、油脂の原材料に加えて、運賃、人件費などの上昇が追い打ちをかけ業界の収益を圧迫。設備更新や品質衛生管理への対応など原材料以外のコストも増えている。家庭用・業務用など製品カテゴリーにもよるが、ここ数年で10%以上のコストアップとなり、製品価格の値上げが必至の局面を迎えている。
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