関東歳暮ギフト特集

関東歳暮ギフト特集:首都圏百貨店=テーマは「自宅でぜいたく」

小売 2019.11.08 11968号 10面
送料への抵抗感を和らげる工夫が重要

送料への抵抗感を和らげる工夫が重要

世界初出荷のコーヒーをギフト化(高島屋)

世界初出荷のコーヒーをギフト化(高島屋)

サワラをしゃぶしゃぶセットで提案(松屋)

サワラをしゃぶしゃぶセットで提案(松屋)

首都圏百貨店は、贈答需要が漸減を続ける中、自家消費の開拓に活性化の道を探る。歳暮ギフトは年末の特別なシーンを演出するキーアイテムであり、商品開発ではコト提案と、なぜこの商品なのかというワケ(理由)づくりに重点が置かれている。今年の場合、軽減税率の対象となるギフトは外食をするよりも「お得」と訴求し、自宅での食事シーンをぜいたくに楽しもうという提案が目立つ。自宅で楽しむという「コト」は共通で、そのシーンにどのような「ワケ」のある商品を提供するか、そこに各社の特色が出ている。

●中元期、ネット比率上昇

夏の中元ギフトは、今年も総じて低調だった。贈答文化の担い手は高齢化し、各種調査を見ても40代以下に贈答の慣習はあまり継承されていないため、この用途に関する限り漸減傾向を変えることは難しい。また、今夏は7月の低気温でビールや乾麺など夏物商材への影響も大きかった。

総需要が縮小する中でも、ネット販売に限れば2桁伸長も珍しくなかった。理由の一つは、ネットでの購入特典として配送料無料とするケースが多いこと、もう一つは時と場所を選ばず購入できる利便性が挙げられる。百貨店のように来店に時間のかかる広域型の業態だと、ネットの利便性は一層生きる。配送料のコストをいかに吸収するかという課題はあるものの、ネットの拡大戦略なしにギフト販売の維持は見込みづらい状況にある。

●新規性や地域性で訴求

従来型の贈答用ギフトが苦戦する中でも、巻頭特集などで仕掛けた商品は売上げを伸ばしている。伸長した商品に共通するのは、贈答用にも自家用にも訴求できる点だ。どんなシーンで使える商品なのかというコト提案と、なぜこの商品なのかというワケが明確な場合が多い。

歳暮ギフトの各特集も、基本戦略は中元期の成功事例を踏襲している。特に消費税で複数税率が導入された今季は、軽減税率の対象となるギフトで、自宅でのプチぜいたくを楽しもうというコト提案が各社共通のテーマだ。松屋は「おうちで贅沢ごはん」、大丸松坂屋は「仲食(なかしょく)」、高島屋は「冬の集い」など、自宅での消費シーンに注目する。これらのテーマは、自家消費を促進する切り口でもある。クリスマスや年末年始は、自宅でのごほうび需要やパーティーシーンが自然と増える。人が集まる場にふさわしい商品を歳暮ギフトとして提案する。

プレミアム消費の場に適した商品のワケとして、百貨店ならではの上質品の提案も各社に共通している。こだわりの商品づくりや名店とのコラボは、確実に有効な常とう手段だ。そのような上質を前提に、プラスアルファの価値を加える工夫もある。

高島屋は、食事シーンだけでなくティータイムに着目、自宅で味わうぜいたくなティータイムを演出する商品として、世界初出荷となる「セニカフェワン」を提案する。原産国コロンビアが出荷まで20年をかけた新品種だ。

松屋は、三重県産の「答志島トロさわら」のしゃぶしゃぶギフトを開発した。サワラは通常、春の魚として知られているが、伊勢湾では秋から冬にかけて脂が乗ったものを旬とする。しゃぶしゃぶで楽しむ食べ方提案にも新規性がある。

大丸松坂屋の「ハートベア カロ」は、見た目に驚きがある。クマのぬいぐるみのようだが、すべてチョコレートでできている。

商品を選ぶワケとして、環境配慮はいっそう重視されるだろう。そごう・西武はサステナブルな素材原料として「アラスカシーフード」を特集する。健康志向によっても選ぶ商品は変わる。高島屋の「グルテンフリー パウンドケーキ」は、アレルギー配慮よりもライフスタイルとしてのグルテンフリーに注目している。

地域志向も商品選択の理由になる。そごう横浜店では地域商品が売上げの約3割を占めるという。今冬は全館のコンセプトである「美と健康」に地元食材を絡めた鍋ギフトを提案する。京王百貨店は、東京・多摩地域の食を特集。鉄道グループの沿線戦略とも通じた取組みだ。小田急百貨店は、恒例の地域特集として「東京」を選んだ。新宿店、町田店の地元エリアであるだけでなく、東京オリンピックへの関心の高まりも意識している。

●配送料は市場変革への課題

百貨店ギフトのネット販売が伸びている理由として、配送料無料が支持されていることに触れたが、店頭でも配送料無料ギフトの構成比は上昇している。今年は増税前から節約志向の高まりが指摘され、歳暮商戦でも配送料への抵抗感はいっそう強まりそうだ。顧客の抵抗感を和らげる手段として、配送料無料や、商品売価を配送料込みとする工夫は不可欠のものになっている。配送料込みを前提とした本体価格の設定は、ネット販売が拡大するほど重要になる。

抵抗感を和らげることは、漸減傾向が続く贈答需要の喚起策として有効なだけでなく、掘り起こしを進める自家消費にとっては前提条件になるはず。自家消費のためなら、多くの消費者は配送料を払うより、むしろ持ち帰りを望むだろう。歳暮ギフトが贈答の枠を超え年末のプレミアム消費向け催事にシフトするほど、販売方法の変化対応が求められる。(宮川耕平)

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