オリーブオイル特集
◆オリーブオイル特集:家庭用、500億円へ試金石の年に
●鍵はトライアル加速・リピート定着
家庭用オリーブオイルの20年市場規模は、前年比微増となる約430億円(本紙推定)となった。コロナ禍での内食増を背景に物量ベースでは拡大したものの、巣ごもりや節約志向で安価な大容量輸入品などの需要が高まったことで平均単価が下落、金額ベースでは微増にとどまった。一方で、家庭内調理の増大を背景にトライアルが進み、市場の間口は通年で拡大した。内食需要の定着が見込まれる21年は、20年からのトライアルをさらに誘発・定着させ、“奥行き”につなげられるかがカギを握る。原料事情など不透明な要素も多いが、参入メーカーでは20年に行えなかった店頭施策を順次行っていく予定。家庭内調理の機会増加に伴い、多彩な料理への活用が広がれば、拡大基調に入ることが予想される。(村岡直樹)
欧米諸国と比較してわが国のオリーブオイルの歴史はまだ浅く、家庭用市場は90年代のイタメシブームを契機に本格形成された。95年当時の市場規模は現在の約12分の1の35億円程度だったが、主要メーカーの仕掛けにより規模が跳ね上がり、以降100億円台を安定してキープしている。
爆発的伸長の契機となったのは「健康感」と「生使いの拡大」によるもので、瞬く間に200億円、300億円を突破。食用油屈指の成長カテゴリーとして全体をけん引し、以降、総じて右肩上がりを続けている。「健康感」と「生使いの拡大」での需要増は、アマニ油などサプリメント的オイル、ごま油、こめ油など現在の家庭用食用油の成長エンジンの礎となるもので、オリーブオイルはこれらの草分け的存在といえるだろう。
こうした中、同市場は20年、新型コロナの影響により、特に上期は店頭での販促機会が激減。一方で外出自粛や巣ごもりなどを背景に需要は高まり、参入企業では供給最優先の施策を敷いた。同時に家庭内での使用頻度が急増する中、生活防衛意識や節約志向を背景に、輸入品などの安価な大容量品への需要シフトが発生。これにより物量ベースでは前年比約6%の伸長を見せたものの、金額ベースは前年並みから微増にとどまり、家庭内調理の増加を受けて拡大したキャノーラ油が17年以来の食用油トップカテゴリーとなった。
大容量品の需要増は原料事情にも関係し、19年から軟化した相場を背景に、国内輸入のボリュームゾーンであるスペイン産の貿易取引価格が安定。他国産もおおむね環境は安定した中、コロナ禍での備蓄需要や巣ごもり需要もあって、PB品を含めた大容量品の需要が強まった形だ。
一方で家庭内調理の増加により、若年層やこれまで料理をしなかった生活者層からのトライアルも進んだもよう。中でもエントリーしやすい、癖の少ないピュアタイプの小容量品は大きく伸長し、通年で間口拡大の立役者となったとみる声も多い。伸長する市場規模に対し、購入経験率の低さがこれまで課題視されてきたオリーブオイルだが、今後のプラス要因として位置付けられるだろう。
21年市場だが、当然これまで同様、食用油屈指のプレミアムカテゴリーとして成長基調が期待される。内食需要の定着で物量ベースでは安定した動きが見込まれるが、まずは20年に進んだ間口拡大をさらに進める各社の活性化策に注目したい。
大手では、日清オイリオグループが20年に行えなかったトマトやチーズなどと連動提案を実施。家庭内調理は引き続き増加・定着していることから、有効なクロスMDとしてさらなる店頭活性化が期待される。Jーオイルミルズは新イメージキャラクターによるTVCM投下やメニュー提案を加速。間口拡大に積極姿勢を見せ、市場拡大を後押しすることが予想される。
商社・製粉メーカーでも展開ブランドの強みを生かした価値戦略の動きが見られ、いずれも市場全体の底上げにつながりそうだ。もちろん、大豆や菜種、パームなど食用油主原料の価格高騰の波及に伴う原料環境の悪化に対応することは大前提で、適正価格での販売が必須となる。
総じて見ると21年の家庭用オリーブオイル市場は、20年に見られたトライアルを加速させ、いかにリピートとして定着させることができるかがカギとなりそうだ。本紙では前回特集(20年7月)で、「潜在需要をさらに発掘できれば、異次元となる500億円台も夢物語ではない」と断言した。店頭施策が徐々に本格化する今シーズンはまさに、来年度以降の実現を占う上で、重要な試金石となる。
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