こうや豆腐特集

◆こうや豆腐特集:活況続く市場 機能性認知に手応え 消費基盤を底上げ

農産加工 2019.10.09 11954号 07面

こうや豆腐市場の活況が続いている。主要メーカー各社の4~9月期カテゴリー売上げは、5~10%近い伸びで推移。こうや豆腐が豊富に持つレジスタントタンパク質の脂質代謝機能などがTV番組で取り上げられた昨年秋以降、話題性がブーム的な売れ行きをけん引している格好だが、「機能性の検証とその情報発信に取り組み続けたことで、『体に良いこうや豆腐』の認知度が高まり、消費の底上げに結び付いている」(こうや豆腐普及委員会・木下博隆委員長=旭松食品社長)。一方、高止まりが続く原材料価格や物流費、人件費の高騰などコスト圧迫の強まりで、メーカーを取り巻く事業環境は厳しいまま。「価格転嫁と、それに見合う高付加価値化」(木下委員長)が急務となっている。

誕生から1000年近いといわれる、こうや豆腐。その伝統が紡いできた潜在的な消費基盤は底堅く、比較的安価な価格帯も手伝って、話題性が購買につながりやすい市場環境を作り上げてきた。健康志向が特定のニーズからより日常的な食生活に広がりを見せる中、業界はさらなる機能性のエビデンス確立やメニュー・用途提案を進めながら、「古くて新しい伝統食」への進化を目指している。(長野支局長=西澤貴寛)

●進む機能性のエビデンス確立 メニュー用途多様化も鍵

旭松食品によると、人口100人当たりで見た2018年度(18年4月~19年3月)のこうや豆腐年間購入金額は1ヵ月平均8328円。前年度より665円、8.6%伸び、11年度以降で最高額となった。

「『こうや豆腐は体に良い』という漠然としたイメージは、長い歴史の中で醸成されてきたが、具体的な機能性のエビデンスが確立されるにつれ、消費に結び付く訴求力が伴ってきた」と、こうや豆腐メーカー5社でつくる、こうや豆腐普及委員会の木下委員長は話す。

同委員会はこれまで、こうや豆腐が豊富に持つレジスタントタンパク質による脂質代謝の促進効果、血中コレステロールの調整機能などの研究結果を公開している。5月の会見では、こうや豆腐の摂取が床ずれなどで起きる褥瘡(じょくそう)の治癒を促す可能性を発表した。

「現在も、旭松食品研究所を中心にいくつかの調査、研究が進んでいる。引き続き論文発表を経て成果の公開につなげていきたい」とする。

こうや豆腐ブームは、ダイエット効果がTV番組などで取り上げられた03~04年をはじめ、これまでも何回かあったが、具体的な検証が足りなかったことなどから、短期で終わってきた。ただ、昨秋からの売れ行きは夏場を前に一度、落ち着きを見せたものの、再び上向き始めるなど、粘り強さを伴っている。

「ブームを数回経たことで、こうや豆腐の健康効果に対する消費者の認知度が段階的に高まってきた。また、健康志向がより普遍的になったことで、こうや豆腐のような普段の食事に取り入れやすい食材が見直され始めていることも追い風」

ブームの収束を速めたもうひとつの要因、メニュー・用途の乏しさについても、粉末タイプの「粉豆腐」がひとつの回答を見せている。

成形後の余剰部分や規格外品を粉末状に加工した第二次製品が原点の「粉豆腐」はこれまで、メーカー各社がそれぞれの地元で限定的に展開してきたアイテムだったが、「昨秋同様、TV番組などで取り上げられ始めた5年ほど前から全国区の商品になりつつある」。いり豆腐など定番のメニューからハンバーグやお好み焼き、ケーキなど用途も多彩で、ユーザーがレシピサイトでアイデアメニューを発信するケースも、ニーズの幅を広げている。

一方、大きな課題が原材料費や物流費、人件費などのコスト悪化。「適正な価格に見合う価値を、どう創出していくかが鍵。グローバルGAP認証大豆など、SDGs(持続可能な開発目標)視点の新たな国際規格原料も広がり始めており、さまざまな形で高付加化価値化を目指していきたい。ユーザー以外へも広くアピールしていけるよう、記念日『こうや豆腐の日』の制定なども検討していきたい」と力を込める。

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