なめ茸・山菜加工特集

なめ茸・山菜加工特集:定着進むボトルタイプ 脱「ご飯のお供」

漬物・佃煮 特集 2019.11.01 11965号 07面
半世紀にわたって親しまれている偏平型ガラス瓶のなめ茸(テーブルランド「信濃高原うす塩なめ茸」)

半世紀にわたって親しまれている偏平型ガラス瓶のなめ茸(テーブルランド「信濃高原うす塩なめ茸」)

用途拡大と新世代ユーザーの開拓が課題(長野興農の親子料理教室、8月長野市)

用途拡大と新世代ユーザーの開拓が課題(長野興農の親子料理教室、8月長野市)

●多彩メニューの訴求が鍵

小ぶりな偏平型のガラス瓶。「なめ茸といえば、まずこの形を思い浮かべる消費者は多い」(ナガノトマト・井垣孝夫社長)。形の由来は定かでないが、現在はほぼ、なめ茸用に特化されたこの容器を、メーカー各社はいずれも定番品に採用している。

独特の形状は市場認知の原動力である一方、「ご飯のお供」「廉価」イメージを固定化させている側面も持つ。「新しい食べ方、メニューの訴求、定着を図るためには、時流に合った新しい形が必要」。ナガノトマトは14年秋から、ケチャップなどと同じ形状のソフトボトル容器をなめ茸にも採用し、現在、家庭・業務用で5アイテムを展開している。

「ボトル容器はガラス瓶に比べて軽量で破損しにくく、破棄しやすいのもポイント。瓶詰よりハンドリングが良く、あえ物やパスタソースなど『ご飯のお供』以外の用途にも使いやすい。スプーンなども不要なので、瓶詰と比べてカビが発生しにくいのも好評」だという。

18年夏には、全国のご当地チューブ食品を特集したTVの人気バラエティー番組で取り上げられ、一気に知名度がアップ。全国のスーパーなどから問い合わせが殺到し、現在は量販店をはじめ高速道路のサービスエリア、「道の駅」など、さまざまなチャネルに販路を広げている。

ただ、井垣社長は「今は話題性が先行している部分がある。幅広い用途、メニューをどれだけ定着させられるかが鍵」と分析する。

家庭用では現在、レギュラータイプに加え「明太子」「梅じそ」「キムチ味」のフレーバー3品を展開し、それぞれメニュー提案を積極的に行っているが「売れ筋は、やはり定番のレギュラータイプ。フレーバー系で目指す用途拡大は、まだまだ進んでいない」。展示会で行っているアレンジメニューの試食提案は、「非常に評価が高い」といい、「店頭MDなどを含め、引き続き提案強化を図っていく」構えだ。

新しい容器と用途に向け、他社もアプローチを強める。なめ茸市場でトップシェアを持つテーブルランドも、「軽量で破損しにくい容器」(営業担当)を研究中。「輸送時の安全性やコスト、ユーザーの利便性を考えれば、ガラス瓶に替わる容器の必要性は高まっており、引き続き検討を続けていく」とする。

長野興農は、「これまで以上に、『食べる調味料』や惣菜用途を意識した提案が必要」(営業部)。同社が毎年行っている好評イベント「なめ茸をめぐる親子工場見学ツアー」では、なめ茸を使ったアレンジメニューの料理教室を行い、「相当な数のレシピが揃ってきた。一般ユーザーに向けて、情報発信していきたい」と意気込む。

○「なめ茸」認知度、若年層で低下顕著

なめ茸の購買層は40~60代が中心で、「なめ茸を知らない子ども、なめ茸がエノキ茸からできていることを知らない親が増えている」(長野興農)ことから、世代交代への対応も急務だ。

ナガノトマトによると、ある女子大学で食物・食品関連について学んでいる学生50人に、なめ茸を知っているかどうか聞いたところ、知っていたのは2人だけ。認知度4%という「ショックな数字」(同社営業部)だった。

長野興農は11年2月に、長野県産農産物の普及キャンペーンの一環で県内の小中学校600校に、県産エノキ茸が原料のなめ茸21万本を無料で配った。「当時、なめ茸をもらった世代が20代になり、これから消費の中心になってくる。同様の取組みを、今後も考えていきたい」(同社営業部)

○売価の下振れ進む 中国産へシフトも

なめ茸は、エノキ茸の固形分60%が中心のいわゆる「普及品」と、固形分80%が一般的な「JAS特選品」に大きく分けられる。普及品の価格はスタンダードな瓶詰120gタイプで税別100円前後、特選品は170~180gタイプで250~270円で推移している。

ただ、市場構成比率が高いPB製品を中心に、一昨年ごろから廉価な中国産製品へのシフトが再び強まり、ボリュームゾーンは下振れが続いている。

なめ茸市場では、極端な低価格路線でシェア2位を占めていた小松食品が15年9月に倒産。これを機に適正価格への見直しムードが強まり、多くのメーカーが16年春ごろからNB製品で5~10%の値上げを行ったが、PB製品に価格を抑え込まれる形で実勢価格は思うように伸びなかった。

また、小松食品の脱落で開いた約20万ケースの穴は大きく、製造・供給体制が限られる中、急きょ輸入で埋めざるを得なかったことが、中国産再シフトのきっかけとなった。「小松の穴は結局、同じような低価格の商品でしか埋まらない」(テーブルランド営業部)

期待のボトルタイプの実勢価格は、家庭用270gタイプで400円弱。一般的な普及品より1.8倍ほど高く、土産物系チャネルでは500円前後で販売しているところもある。

「スーパーの、いわゆる『300円の壁』をどう超えていくか。短期的には難しいが、製造効率の改善などを進め、価格を抑えていく必要がある」(ナガノトマト・井垣社長)。また、ボトルの背丈が高いため、メーンの瓶詰売場の棚に収まりきらないこともあって、「高さを抑えたタイプ」(同社営業部)の投入も計画している。

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