国産・日本ワイン特集

◆国産・日本ワイン特集:家飲み傾向続く 「新生活様式」へ新施策

酒類 特集 2020.06.03 12060号 08面
自宅での飲用シーンが広がるか注目される

自宅での飲用シーンが広がるか注目される

新型コロナウイルス感染症の影響で、国内製造ワインの業務用需要が急減した一方、「家飲み」需要が増えた。緊急事態宣言が全国で解除され、今後は政府が求める「新しい生活様式」を国民が取り入れていく中、感染予防のため家飲みの流れが続きそうだ。ワイン各社による量販店やEC向け施策が増えるとみられる。(岡朋弘)

外出自粛の広がりで「オンライン飲み会」など家庭内での新しい消費行動も見られた。他方、新型コロナの影響が落ち着いた後も業務用の早期回復は見通せない。「新しい生活様式」によるテレワークの実施や「三密」回避、食事の持ち帰りや出前などの推進で、「コロナ前」より外飲みの機会が減りそうだ。

政府は5月25日、緊急事態宣言を全国で解除した。4月7日に7都府県で出された宣言が全面解除されるまでの間、ワイン総市場では新型コロナの感染拡大を受けて業務用が大きく落ち込んだ。4、5月は外出自粛が広がる中、料飲店でよく使われる輸入ワインが大きな影響を受けた。業務用の構成比が高い国内製造ワインの商品も販売が低迷した。

国内製造ワインを製造する国内のワイナリーや工場では、生産・物流面で大きな影響は出なかった。平常時と同様に製品の安定供給体制を継続した。

業務用の消費が減少した半面、外出自粛による巣ごもり消費で家庭用のワイン需要は増えた。「酸化防止剤無添加」といったデイリーワインが伸長している。また新規トライアルしやすい小容量やフルーツワインも需要が高まってるとみられる。

コロナ禍の中、ワイン各社はさまざまな対策を講じ需要活性化に取り組んでいた。

メルシャンは3月から外出自粛生活を少しでも楽しんでほしいとの考えから、SNSやWebサイトを活用し生産者の声を発信してきた。今後は外飲みから家飲みにシフトする消費環境の変化をとらえて、単価の高いワインの販売も検討する。家庭でいつもより少し良いものを飲みたいというニーズがみられ、実際に若干価格の高いプレミアムレンジの商品が好調だという。

アサヒビールも家飲み需要の高まりなどを受け、家庭用商材の売上げが好調だ。量販店でのまとめ買い需要に対する販促やEC業態での取り扱い拡大に取り組んでいる。サッポロビールは「節約志向・定番回帰・健康安心志向の高まり」をキーワードに、自宅でワインを飲用するきっかけ作りに向けた施策を検討している。

10月1日には2段階あるワインの酒税税率改正の第1段階目が実施される予定だ。1本(720ml換算)当たりの税額は58円から約65円に引き上げられ、約7円の増税となる。すでにアサヒとメルシャンなどは改正に合わせて生産者価格を改定すると発表した。

ワイン増税に加えてコロナ禍による景気後退でさらなる節約志向の高まりもあり、改正前には仮需が発生すると思われる。サッポロはこれまで以上に健康への意識が高まることを想定し増税後も機能系の大容量品の需要が伸長するとみている。

●ワイナリー新設相次ぐ

国内ワイナリーの新設が相次いでいる。和食ブームを追い風に、国産ブドウだけを使い国内で造る「日本ワイン」と和食の相性提案も広がる。酒類市場が縮小する中、日本ワインは中長期的な成長が期待できるカテゴリーとされている。

国税庁の調べによると国内のワイナリー数は18年に331場と前年から28場増えた。日本ワインは品質の向上に伴い、国内外の品評会で多数の賞を獲得し、海外でも需要が高まりつつある。

国内ワイン市場は輸入ワインが約7割を占める中、日本ワインのシェアは4.6%といまだ小さいものの前年から0.5ポイント増えるなど着実に拡大している。出荷量は前年比4.6%増(約1万6000kl)と増え、輸出量も同24%増(72kl)と堅調な伸びを示す。

新規参入者が増え、原料ブドウの調達が各社共通の課題となる中、大手各社が自社ブドウ畑を広げる動きが目立つ。品質の高いブドウを安定調達する狙いがある。

日本ワインは、日本固有のブドウ品種「甲州」や「マスカット・ベーリーA」を原料とした商品が多く造られている。繊細な味わいの日本ワインと、微細な味付けの和食との好相性を提案する動きが、メーカー間で広がっている。

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