ワイン特集
◆ワイン特集:業務用苦戦、家飲みに活路 10月の増税に懸念も
新型コロナウイルスの感染拡大でワイン業界に強い逆風が吹いている。外出自粛や料飲店の営業自粛で業務用ワインの需要が大きく落ち込んだ。ワイン各社は家飲み需要に活路を求めるが、業務用の減少分を家庭用で補いきれていない。ワイン業界がコロナで疲弊する中、10月実施のワイン増税に対して懸念もくすぶっている。(岡朋弘)
国内ワイン市場は外出自粛や料飲店の営業自粛が響き、1~7月までで前年比5%減程度で推移しているもよう。毎年ワイン需要が盛り上がる11月のボージョレー・ヌーボー(BN)商戦についても、20年は業務用不振に加えコロナの影響でBNに対する興味・関心が薄れ、前年より苦戦を強いられるとみるインポーターが多い。20年年間ではワイン総市場で同4~5%減で着地しそうだ。
政府は4月7日、東京都や埼玉県など7都府県に対して緊急事態宣言を発令し、外出自粛やバーやクラブといったナイト業態には休業を要請した。ナイト業態での取り扱いが多かったシャンパーニュなどの高級ワインを中心に、業務用の需要が大きく落ち込んだ。
4、5月は業務用のワイン需要が大きな打撃を受け、特に業務用比率が高いインポーターはコロナの影響が直撃する格好となった。6月に入り業務用に回復の兆しが見えてきたものの、コロナの拡大を受け、7月には都が料飲店に対する営業時間の再度の短縮要請を出して以降、需要が停滞していると思われる。
感染防止対策が求められる中、ワイン各社は料飲店との商談や営業活動にも制約が課されている状況だ。コロナの影響で先が読み切れない中、業務用に対する具体的な打ち手に頭を悩ます企業は少なくない。業務用への商品の供給量の見極めが難しく、インポーターにとってはワインの仕入れにも影響が出てくる問題と言える。
4月には国税庁がコロナの影響で経営が圧迫されている料飲店に対し、持ち帰り用に在庫酒類を販売できるようにするため新たに「期限付酒類小売業免許」を設けた。料飲店の資金確保を図る狙いだったが、実際に店舗で扱ってるワインを小売販売するのは難しい側面もあるようだ。ネットを見れば同じ商品でも割安で手に入るからだ。
業務用の先行きが不透明なため、今後は家庭用への取組み強化が求められる。当面の間、業務用の減少分を家庭用でいかに補っていくかが各社共通の課題となりそうだ。
コロナの流行を機に、外飲みから家飲みへと需要がシフトし、家庭用市場は好調に推移している。「巣ごもり」需要を追い風に、普段より上質なワインを飲みたいというニーズも生まれている。
健康志向などを背景に、オーガニックワインの需要が高まりつつある。下半期はワイン各社の間でオーガニックワインの提案を強化することで単価アップを図る戦略が目立ちそう。また、業務用で消費されていたシャンパーニュなどの高級ワインが家庭で飲まれている傾向も見られる。コロナ前と比べ、百貨店やEC(電子商取引)での販売が伸びているようだ。
日本のワイン市場では一般に、ワイン選びが難しいという課題が指摘される。量販店のワイン売場では商品説明が不足し消費者はどの銘柄を買えばいいのかわからない。その点、ECでは詳細な商品説明が可能で、特に中高級ワインについては安心感を与えられるのが強み。だが、EC販売が伸びている中で物流費の上昇を懸念する声もある。
コロナ禍でリアル店舗でのワインの購買行動にも変化があるようだ。メルシャンによると、感染防止を意識した行動として量販店のワイン売場で滞在時間が短くなるなど消費者の購買行動が変化しているという。そのため、普段から見慣れている「強いブランド」が選ばれる傾向が強まっているようだ。19年に関税が撤廃された欧州産ワインについても前年を上回って推移しているのは一部の強いブランドに限られ、大半の欧州ブランドは前年割れで推移しているとみる。
20年上半期の輸入ワインの通関統計(2L以下のブドウ酒)を見ると、輸入量の上位10ヵ国でチリを除く全ての国で前年実績を下回った。
インポーターによると、海外ワイナリーの生産現場では現状、コロナによる生産面への影響は見られず遅延なく稼働しているという。ワイナリー自体が自然環境の中に位置している場合が多く、外部環境から守られているためだ。
海外産ワインの輸入ではおおむね遅延などの影響はないものの、一部でコンテナ船やトラックが遅延するなど、物流の混乱が続いているところもあるようだ。今後もコロナによる影響で遅れが発生するなど不確実な場合が考えられる。物流への影響の見極めが難しく、遅れを見越した上での仕入れも課題となる。
コロナでワイン業界全体が厳しい状況下で、10月1日にはワイン増税が控える。ワインの税率がボトル1本(750ml)当たり7.5円引き上げられる。家庭用商品を中心に若干の仮需が発生すると思われるが、19年の消費増税時と比べて市場への影響は軽微にとどまるとみる企業が多い。同時に酒税改正されるビール類に消費者の関心が向くことが予想される。だが、コロナで疲弊しているインポーターにとって見積もりを提出したりする作業など負担増となる懸念材料が発生する。
●KSP-POSで見る家飲み需要 生活環境変わり増加
20年上半期は業務用需要が減退した一方で、小売店の家庭用ワインの販売が伸びた。通常、酒類の販売金額はゴールデンウイーク前の4月末から5月初めにかけてピークを迎えるが、KSP-POSによると5月2週目以降も売れ続けたことがわかる。5月4日から10日週には、来店客1000人当たり販売金額が前年比39%増となり、最も高い伸び率を示した。
1000人当たりの販売金額(20年1月6日から7月26日に集計したデータ)では、3月2日週以降、全ての週で前年を上回って推移した。3月2日週からは全国の小中学校などで臨時休校が開始されるなど生活環境が大きく変わり始め、自宅で過ごす時間が総じて増えた。
6月以降もほとんどの週で同2桁増で推移しており、ワインの家飲み需要が拡大していると言える。5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された後も伸びが続いている。感染防止を意識した行動としてテレワークやテークアウトが広がり、外食を控え自宅でワインを楽しむ機会が増えたためだと思われる。
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