釜めしの素特集

◆釜めしの素特集:特需反落も好材料 若年層開拓、高級志向が焦点

調味 2021.09.08 12289号 10面

 釜めし・炊き込みご飯の素市場は今上期、前年比約5%減で推移し、前年のコロナ特需から反落した。一昨年の19年比でほぼ同規模とみられ、コロナ前に戻った。ただし、前年同期は特需のピークで反動減も大きく、コロナ禍当初の備蓄需要を失ったことが響いた。焦点は下期の回復に絞られ、好材料は若年層の開拓による間口、高級商材の成長による奥行き両面での拡大。最盛期の秋商戦で回復、成長に転じられるかマーケティングの成否が問われている。(吉岡勇樹)

 釜めしは旬の食材とご飯を一緒に炊き込み、素材の味わいを引き出す人気ごちそうメニュー。釜めしの素は常温で長期保存でき、コメと炊くだけ、炊き上がったご飯と混ぜるだけで出来上がり。簡単・時短設計で支持され、50年以上にわたって根強い需要を誇る。

 形態はレトルトパウチのカートン(箱)、透明パッケージで季節感を伝えるトレータイプに二分できる。相対的に安く、大手NBの多い箱が200億円規模で主流。トレーは主戦場のチルド売場が充実し、激戦に押されて箱へ消費が集中している。シェアは丸美屋が3割で先行し、続くヤマモリが2割、江崎グリコが1割で続くとみられる。

 コロナ前は主食のコメ周りならではの、需要が安定した優等生的存在だった。20年2月末からの感染対策による巣ごもり、内食増で消費が急増。3~4月は前年比2桁増で急拡大し、主要メーカーが安定供給を尽くして5~6月には在庫が行き渡った。以後は店頭販売も落ち着いたが、通年でも市場は前年比7%の大幅増。今期は前年、特に伸ばした上期に苦戦し、下期での巻き返しを主要メーカー各社が狙う。

 販売のハイシーズンは新米商戦と連動するが、お盆明けから9~10月。今季の追い風になりそうなのが商品価値の浸透。大手実績では上期の苦境も一昨年比では伸びている。炊き合わせ・混ぜるだけで具だくさんの主食ができる、経済性への評価が進んでいる。おかず1品が減らせる代替需要は、景気不安で底堅い。簡単で健康的と人気のワンプレートメニューにも最適。炊き込みご飯全体(素の不使用含む)の食卓への登場頻度は20年、前年比10%以上増えたとみられる。

 本市場は消費の多くをシニア層のヘビーユーザーに支えられ、2~3割と低い購入率が課題だった。20年の購入率は5ポイントほど高まったとみられ、特に子どものいる家族の、若年世帯がそれ以上に伸びた。苦戦した今上期も同世帯購入率では微増推移。ユーザーの若返りが徐々に進み、持続性を高めた。コロナ共存の悪環境だが、内食機会が高止まり。試用して基本価値を評価してもらう機会を得た。

 内食の深化は素材にこだわった、高級商材の成長にも現れた。自粛している外食、行楽の代替としてマツタケなどのアッパーメニューが好調。ヤマモリの「ご当地」の前年比2桁成長のほか、丸美屋の「おこわ」も拡大。メニューの広がりという奥行きの深まりも感じられる。

 このほか、レトルト具材の混ぜご飯人気が定着。キッコーマン食品の「うちのごはん」シリーズが代表格だが、積極販促と開発が実を結び、ビビンバやチキンライスといったレシピも定着。若年開拓で先行し、用途や食シーンを広げている。

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