どうなるわが国のハンバーガーチェーン・米国の動向から 日本の実状
日本でマクドナルドが独走状態にあるのは、競合がないからだ。もちろん、モスバーガー、ロッテリアの競合があるが、マクドナルドに対抗できるだけの独創的な発想と積極的な対応ができないということだ。これは他社が、日本のマクドナルドしか見ていないから対応が遅くなり、マクドナルドへの対応が遅かったのではないかと思われる。
問題点は二つほどある。一つは他社が低価格路線に追随できなかったということだ。まずマクドナルド社は商品の規格を全世界統一しているから、あらゆる原材料を世界中から購入することが可能だ。特に円高を背景に海外に購入基地を移動した結果、他社より大幅に安い原材料の購入が可能になったわけだ。
また、他社がフランチャイズ店へのロイヤルティーが低い分、商品の売上げからマージンを取っているという点が大きな足かせとなっている。そのために供給する商品の価格を下げるより、単価の高い商品の開発が中心になり、低価格の商品の販売が遅れることになったようだ。
マクドナルド社は米国の独禁法のもとに商品から利益を取らず、高額のロイヤルティーから収益を得ているから、供給する商品の単価を下げても売上げが伸びればロイヤルティー収入は向上するという構造になっているわけだ。
また、低価格を実施する場合その事実を顧客に正しく伝え、今まで来店していない他社の顧客も取り込むという大がかりな広告宣伝活動が必要になる。しかしながら競合他社は広告宣伝費の投入量が少ないか、全くやっていないという状況では、低価格路線をとっても効果は少ないし、できないということになる。
二番目の問題点は技術的な遅れだ。マクドナルドが急成長を遂げたのは低価格戦略と同時に損益の低い小型店舗であるサテライト店を多量に出店したことにある。小型店舗を可能にしたのは、厨房機器の標準化により原材料と同じく世界中から性能の良い安い機械を購入できるということだ。世界中から購入できるということが一年間で五〇〇店舗以上も開店できる理由の一つでもある。日本の厨房機器メーカーだけに頼っていては価格が高いし、製造能力が不足するからだ。
また、サテライト店舗の損益分岐点を下げることが可能になったのは、その優れたトレーニングシステムによりアルバイトでも店舗を管理できるというスイングマネジャー制度のおかげだ。サテライトの管理を社員でまかなっていてはその人件費を負担できないが、アルバイトで管理できれば人件費は大幅に下がり、損益分岐点はモスバーガーよりも低くなるわけだ。
米国で元気の良いバーガーキングや、ウエンディーズは日本では勝手が違うようだ。二社の一番の課題は日本側のジョイントベンチャーパートナーだろう。バーガーキングは進出してまだ数年だというのにもうパートナーが変わっており、ウエンディーズも日本側のパートナーであるダイエーグループの業績不振という問題を抱えており、米国のように順調ではないようだ。しかしながら、両社の都心の大型店舗の売上げはかなり順調であり、店舗展開の手法によっては今後台風の目になる可能性は捨てられないようだ。
マクドナルドは絶好調のように見えるが問題点もいくつかある。マクドナルドは、実は日本で一番のレストランチェーンではないということだ。では一番のレストランチェーンはどこかというと、コンビニのセブンイレブンだ。セブンイレブンの売上げは一兆六〇〇〇億円を超え、その販売している調理済みの弁当などのファストフード部門の売上げは二二~三〇%であるといわれており、優に三〇〇〇億円を超えているわけだ。
総売上げでもセブンイレブンに負けているのはどうも日本だけのようである。その理由は、日本のセブンイレブンのフランチャイズシステムにあるようだ。米国マクドナルドのフランチャイジー比率は七〇%以上といわれており、日本の三〇%くらいと比べて大幅に高い。このフランチャイズ比率の低さが、店舗数がまだセブンイレブンに負けている理由の一つではないかと思われる。
つまり、上記の技術的な問題の解決による低価格の実現と、味の向上、それとフランチャイズシステムの向上がマクドナルドに対する対策になるのではないかと思われる。
いずれにせよ、他社は米国のハンバーガー業界を見てその対策を具体的に学び、積極的にチャレンジする時期にきているといえるだろう。
〈参考文献〉
『リエンジニアリング革命』M・ハマー、J・チャンピー共著、日本経済新聞社刊/『Nation’s Restaurant News』Lebhar-Friedman発行/R&I紙
<インターネット情報>
米国の情報をインターネット経由でほとんどの省庁、NRA、NRN(レストランニュース)などのホームページから入手することが可能。筆者のホームページからそれらのホームページにリンクしているのでご利用いただきたい。そのほか関連のホームページは以下の通り。
NRA http://www.restaurant.org/
Nation’s Restaurants News http://www.nrn.com/low/
R&I紙 http://www.rimag.com/
米国マクドナルド http://www.mcdonalds.com/
日本マクドナルド http://www.mcdonalds.co.jp/
Burger King Corporation Home Page http://www.whopper.com/
米国ウエンディーズ http://www.wendys.com/
KFC http://www.kentuckyfriedchicken.com/
ジャックインザボックス http://www.foodmaker.com/
モスバーガー http://www.mosworld.com/
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