育てよう新野菜・地の野菜

1998.07.06 155号 2面

使用者が本当に欲しがっている野菜は流通しているのか。生産者が手塩にかけて育てた自慢の野菜は、欲しいと思っている使用者にキチンと届けられているのか。両者の接点はうまくかみ合っているのか。直販、宅配など、生産者と使用者との流通パイプが太くなってきている現象は何を意味しているのか。大量生産された画一的な野菜から、個性豊かな野菜へのニーズが背景にあることは否定できない。

個性豊かな野菜とはどんな野菜か。昔から特定地域だけで栽培されてきた伝統の野菜、外来種を改良し地域の野菜として根付かせた地の野菜などさまざま。

「私の店では健康イコール野菜のイメージが強く、健康を配慮する層に応えて野菜メニューを六~七割置いています。そのためお客が喜ぶ野菜を手に入れようと大変な努力を払っており、手に入らなければ北海道でも沖縄でも出掛けて行き、直接仕入れ交渉しています」(三國清三オテル・ド・ミクニオーナーシェフ)

そこには、野菜を扱う料理人が、野菜本来の持っている独特の味わいがなくなったと嘆きながらも、なんとかして「うまい」と言える野菜を手に入れようと奔走する姿がみえる。

また一〇〇人の会員を擁する「クラブレゾナンス」を主宰する倉田栄示シェフ(レストランネプチューン料理長)は「生産者がはっきり分かり安心できる野菜とか、メニューの差別化を図る意味から地の野菜や珍しい野菜を使ってみたいが、一店では運賃が割高。会で共同購入し、同ルートでの混載も考えています」と、産地との直接取引に意欲を示す。

一方、生産者はどうか。静岡県の食用ホオズキ生産者はこう語っている。

「出荷の初年度は市場を通していたが、次の年は価格を大幅に下げられ、こちらの価格を通すため直売に力を入れるようになりました」

流通段階でも変化が現れている。首都圏の台所である太田市場にある東京青果(株)に個性園芸室が設置されたのは二年前。市場内の個性化農産物コーナー、地場野菜コーナーには有機野菜を含む新野菜や地場の野菜が並べられているが、その一角には生産者からのメッセージが顔写真入りで紹介されている。

「設置当初は野菜を置く場所はほんのわずかだったのが、今では三倍もの面積を占めるほど。取引高も五億円から一一億五〇〇〇万円に伸びています」(島本保弘室長)

生産者の自信作であるこだわりの野菜は、時季のものだけに市場を通っても数量が少なく認知度は低かった。有機野菜でスタートしたこだわり野菜は、今、使用者の本物志向ニーズに応え少しずつだが確固とした地位を築き始めてきた。

旬を見直そう農水省が支援

また、農水省は輸入野菜の増加に対応し、国産野菜の需要確保と有機、おいしさ、栄養などの質的特徴を生かした野菜生産の確立・拡大の趣旨のもと、外食・中食産業ニーズに応じて「業務用需要対応野菜安定供給推進事業」を今年の4月からスタート。6月から本格活動を開始した。

具体的には、まず、失われつつある旬を見直そうと「旬の野菜」の統一マークを設定。以後各県の野菜へのアピール活動計画を審査し、産地から外食・中食産業へ確かな野菜が流れるよう支援をしていく。

大量生産、大量流通がこれまでの主流だったが、ここにきてこだわりを求める使用者とこれに応じる生産者との間に新しい流れが生まれつつある。今後はこれらの流れがしっかりした信頼関係で結ばれ、太いパイプとなることが期待される。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら