再び“外食のときめき”を:FRの世界=課題は業態の多角化

1998.12.21 168号 3面

FRの最大の課題は業態の多角化だ。ガスト、ビルディ、すかいらーく、ガーデンズ、グリル、ジョナサン、バーミヤン、藍屋、夢庵、という多角化を成し遂げたすかいらーくと、その戦略を踏襲するチェーンの動向だ。しかし、多角化には企業としての体力が必要であり、多角化を成功させたのはすかいらーくグループだけであり、それに追随したFRチェーンは体力を消耗している。

すかいらーくは海外や国内の不採算業態の一掃を行い、より身軽になり、積極的な業態開発に乗り出すだろう。問題のあった低価格業態のガストもブラッシュアップを強力に行い、好調だ。

ジョナサンはやや息切れを示しているが、首都圏などの新規マーケットの開発に成功した。バーミヤンは絶好調であり、中華のジャンルで王将という強大な競争相手のいる関西の出店が好調であり、今後の全国展開に向けてばく進中。藍屋、夢庵もメニュー開発が成功し好調だ。

このすかいらーくの低価格と多ブランド化に追随したサトなどのチェーンは、体力がなく新業態を軌道に乗せることができず、効率を落としている。今後はより専門の分野に集中して展開せざるを得ないだろう。

洋風FRは不調の半面、和風FRが好調だ。すかいらーくの和食業態の藍屋、夢庵の展開がスローダウンしている間隙を縫って、ライフコーポレーションの華屋与兵が首都圏で積極的な展開を図っている。屯田も主力の北関東では京樽の後に店舗展開を行ったり、神奈川地区への進出など積極的。サトも和風FRに主力を移すようで、今後、競合の厳しくなる分野だろう。

FR業界の最大の課題は、コンセプトの陳腐化。すかいらーく、ロイヤル、デニーズが急成長したのは、住宅のドーナツ化の波に乗り、郊外型の新しい生活の提案を成し遂げたということ。その新鮮さが薄れる中、店舗コンセプトを変えないで、メニューだけ増やした店舗には顧客の飽きが出ているようだ。

FRは、FRというくくりの中で、和・洋・中と何でも提供するという店舗形態をとっている。しかし、顧客の求めているのは単なるメニューバラエティーではなく、鮮度の高い店舗コンセプト。それを物語っているのはサンマルクの成功だ。

サンマルクは通常のFRよりも加工度の高い調理済み食材を使用し、店舗では単に加熱調理と盛りつけだけという徹底でありながら、焼きたてパンやピアノの生演奏という店舗イメージにより、顧客に昔のFRのようなときめきを与えて急成長した。今後のFRは、リーズナブルな価格の中で専門料理を提供できるところが生き残るだろう。

FRにとって今後強敵なのは新進気鋭の中小のチェーンの勢いだ。

低価格イタリアンで価格競争力抜群のサイゼリヤ、郊外型の店舗展開を狙う居酒屋のワタミフードサービス、ケンズダイニングバーや熱熱食堂/橙家を展開するちゃんとフーズ、ロイズやNOBUを抱えるソホーズ、中華の強い際コーポレーション、ZESTなどのサービスの良い都会的な店舗のグローバルダイニング、オバカナールなどの個性的な店を抱えるオライアン、イタリアン・チャイナなどと多角化を進めるキハチ&エス、女性に大人気の豆腐懐石梅の花の梅コーポレーションなどが続いている。

これらの個性的な企業は、店舗のイメージ、サービス、バリューというバランスを武器に昔のFRで感じた「外食のときめき」を再現している。

また、ライフスタイルがカジュアル化、個人化に変化する中、サービスと雰囲気に自信のある米国の外食チェーンが続々と進出を図るようだ。ワタミフードサービスと提携するTGIフライデー、米国で急成長中のアウトバックステーキハウスなどが準備中。今後のFRは業界の淘汰、買収、外資の進出などと波乱が予想される。

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