そばレストランの事例研究 「家族亭」 大都市圏軸にチェーン展開
そば屋は多種多様な業態が登場してきている外食ビジネスにおいては、年々影がうすくなってきているという印象を受ける。たしかに、日本人のし好、食感にあった伝統フーズではあるが、その提供の仕方が地味で、精彩を欠いたものとなっているのである。
そば「ヘルシーフーズ」という切り札があるが、メニューは変りばえがしない。どこにいっても業界共通の定番メニュー、それ自体は一方においては安心することでもあるが、若い世代や時代の感覚に合った、新時代を予見するようなメニュー開発があってもいいのではないかという気がする。
店舗の造作、雰囲気も変りばえがしない。投資コストががさむ時代のため、器が小さいのはいたしかたがないとしても、もう少し清潔感を向上させ、装飾の面でも工夫ができるはでずある。
日本人の画一性といってしまえばそれまでだが、まるでハンを押したようにメニューも、店構えも同質というのはガッカリさせられてしまう。
同じ麺類でも、うどん、ラーメンの業態となると、時流に合ったファッション感覚の店を重視した展開は少なくない。
とくにラーメン店の場合は、ダシや具、麺の開発などにおいて、極めて意欲的なところが多く、テレビや雑誌などのマスコミのグルメ紹介では、変りダネ、個性のある店として日常的に登場してくる。
日本そばの場合は、ほとんどそういった状況は目にしないし、聞かれない。日本そばは単品それ自体としては根強いニーズがあるのであるが、レストランサービスの形態としてみれば、マンネリ化が指適でき取り残されつつあるという印象を受けるのである。
業態開発やメニュー構成、サービス形態などの改革でこれからの市場戦略を期待したい。なお、別稿はそばレストランの事例研究で、家族亭、満留賀、長寿庵、富士そばの四社を取り上げてみた。
創業昭和22年。四〇数年の歴史を有する。大阪地区を地盤勢力として出店を開始したそば専門店で、現在ではそばに加えうどんメニューも豊富にラインアップしている。
また、店舗出店については、昭和33年から東京にも進出し、以来、関西、関東の二大商圏を対象にしてチェーン化を推進、本年11月末現在、五八店舗を出店、年商(平成3年)六三億七〇〇〇万円の実績を上げている。(本年10月末より店頭株公開)
店舗展開については関西、関東合わせ年間四店舗のペースで出店しており、直営出店に加えてFC展開も推進しており、現在五店舗を開設し、店舗展開については関西、関東合わせ年間四店舗のペースで出店しているが、大阪と東京とでは市場の性格が異なってくるので、チェーン化といっても、それぞれの市場ニーズや消費者の嗜好に対応した店舗展開となっている。
つまり、味づくりしても大阪は「うす味」、東京は「濃い味」、大阪は「うどん」、東京は「そば」志向という背景があり、この市場特性に対応したチェーン戦略を展開しているのである。
もちろん、東京、大阪は日本の二大商圏として大きく交流し合っており、時代と共に市場の差はなくなりつつあり、そば、うどんの市場戦略は個人の好みの問題となってきている。
「でも、私どもは信州そばでの創業ですから、やはりそばが看板商品ということでして、大阪でも東京でもそばメニューを前面に打ち出しているのです」(家族亭・関東営業本部営業管理課課長櫻澤孝治氏)。
店舗出店の立地条件は、駅ビルや駅周辺の地下街、商業ビル、ショッピングセンターなど人の往来が多く見込めるところ、いわば都心繁華街型の出店戦略をとっている。
標準的な店舗規模は、四〇~五〇坪前後で客席数五〇席、月商一〇〇〇万円が基本ベースとしている。
メニュー構成はそば・うどんが中心になるが、店によってはアルコールを揃えて焼物、煮物、揚物、刺身など一品ものも多くラインアップして、食べてよし、飲んでよしの店づくりという運営形態も少なくない。
東京・有楽町店は昭和41年のオープンで、店舗面積約七〇坪、客席数九四席の規模で家族亭の代表的店舗として独自の集客力を発揮している。
有楽町店は例のJRガード下周辺に林立する焼鳥屋街の一角にあり、本来の家族亭の立地条件としては、むしろ特殊な立地環境にある。
このため、周辺の立地環境に合わせて、メニュー内容にも幅を持たせており、多様な客層、利用ニーズに対応する運営形態となっている。
店舗は“本館”と“別館”の二つに分かれるが、基本的にはそば・うどんとメニューが主力で、この中にあって、具や料理形態によってメニューのバリエーションを拡げる工夫をおこなっている。
まず、本館においては、看板メニューの「三宝そば」(七八〇円)をはじめ、「おろしそば」(七五〇円)、「田舎せいろ」(七〇〇円)、「田舎天せいろ」(一一四〇円)などがあり、すべてつなぎ粉を混入しない生一本の純そばで、三宝そばはこれに胡麻、かつお、海苔の三つをブレンドしたオリジナル商品。
このほかには、そば・うどんの定番メニューがあり、これは温・冷二つのアイテムをラインアップしている。人気メニューは、天ぷらそば(一〇三〇円)、けんちんうどん(九〇〇円)、山菜そば(七五〇円)、きつねうどん(五二〇円)、大名天ざる(一四〇〇円)、天ざるそば(一一四〇円)、お好みわんセット(海老天、山かけ、きのこおろし、野菜サラダのセット)(九三〇円)など。
冬場のシーズン商品として鍋焼うどん、みそ煮込みうどん、うどん雑炊(各一一〇〇円)など特製土鍋の名物あつあつうどんを揃えている。
「そばを鍋物とするには無理ですから、やはり冬場の商品としてはうどんメニューということになります。そばはざる、うどんは煮込みにピッタリというように、素材の性質を生かしたメニューづくりが大事です。やはり、冬場のうどんメニューは人気があるんです」(櫻澤課長)。