食の視点 来た・見た・食べた(9) トレンドを追え
《〈人は世に連れ…〉》 バリュー、カジュアル、そしてリーズナブル。米国で今、フードサービスのトレンドと言われている。お値打感、気軽さ、値頃感だ。ところで、トレンドってなに?
辞書を引くとトレンドとは、流行とか潮流とかであると書いてある。言ってみれば、その時何が流行っているのか、ということらしい。
なんだ…。昔から“人は世に連れ、世は人に連れ”などと言われるが、流行も人と世の中の流れに合わせて動いている。その流れを知ることなのだ。もっとも、人が流行に引きずられたりもしているが。
《〈ゴチャまぜ〉》 ちょっと前までは、フードサービスのトレンドと言えば、エスニック料理、その後がイタリア料理と、とりあえず名前をつけられたが、一九九三年現在、きちんと名前のつけられるトレンドは存在しない。しないどころか、どんどん分からなくなっていくように見える。
トレンドを追えって言われたって、何を追えば良いのか目標を教えてくださいな、という現状だ。
大体トレンドを追っかけて何の得になるっていのうか、という疑問もないではない。
しかし、真剣にクリニック、自分の勉強のための食べ歩きを始めるのならば、トレンドを無視することはできない。少なくとも、知識としてだけでも、トレンドを頭に叩き込んでおく必要はある。
実際にトレンドとして話題になっている店にいっても、おそらくその半分は味が分からない、おいしくないといった感想を持つことだろう。
《〈タデ食う虫も〉》 けれどもそれが大切なのだなとど言うと、おいしくもないものを食べて金の無駄使いじゃないかという声も聞こえそうだが、料理や飲み食物のおいしいとかまずいとかの判断が、それこそオフクロの味で育てられた記憶に頼っている部分が大きいことを思い出して欲しい。
食べたことのないもの、最初からおいしいと思って食べる体験はそうはないはずだ。
おいしいとかまずいは、自分の中の感覚なのだから、それを論理的な判断の規準にしてはいけない。危険だということだ。
例えば、カレーが最初に日本に紹介された時、ピリピリしていて、とてもおいしいとは言えないというのが大方の感想であったのが、それから半世紀経った今では、子供から老人までの好物、国民的アイドル料理になっている。
こんな歴史の証拠もあるのだから、簡単に判断を下しては駄目。その料理を好きな人がいるということは、必ずその料理に何らかの魅力があることだ。それを見つけよう。
タデ食う虫も好きずきというではないか。自分にはそれほど魅力的には思えなとしても、それが好きな人には大変なごちそうになる
もちろん、それを無理に好きになる必要は全くないが。
ところで、空腹の時にはおいしく感じたものが、満腹の時にはたいして感じないという経験。その経験も一つのクリニックの成果ではあるが、現在の飽食の日本にあって、大変な空腹を抱えて食事をするチャンスはあまりないように思われる。
《〈舌を養う〉》 では、少しばかりの空腹感と旺盛な好奇心と食欲を持った消費者の舌を満足させるにはどうしたら良いのか。自分の舌を今以上に養い、味の分かる舌を作り上げることだ。
それには、一にも二にもクリニック。食べ歩いて、見て、聞いて、感じて、経験して、ため込んで、考えて、選び抜くことだ。













