高度成長する惣菜・デリ 将来性でメーカーの参入相次ぐ

1993.10.04 37号 23面

食品メーカーにとって、惣菜・デリ市場の拡大、動向は単に“川下の出来事”として傍観しているわけにはいかない。内食の伸び悩み、食の外部化比率の高まりなどは、必然的に惣菜・デリ市場への係わりを深めている。食品メーカーの同市場への取り組みは大きく三つのケースに分けられる。

一つには、スーパー、CVSベンダー、持ち帰り弁当店向けの業務用食材の開発、販売である。冷凍のコロッケ・フライなどの揚げ物類が最も多いが、冷凍の天ぷら類、米飯類などの和惣菜やチルドのサラダ、和え物類、さらに冷凍・チルドの中華惣菜など、毎年さまざまな新製品が投入されている。

二つ目には、惣菜・デリ的な家庭用食品の開発、販売である。従来は、子供のお弁当のおかずとして利用される冷凍コロッケ・ミートボールなどが一般的だが、最近では電子レンジ、オーブントースター対応の調理冷凍食品の需要が拡大している。特に、ピラフ・焼おにぎりといった米飯類や、うどん・そば・パスタなどの麺類、さらに、たこ類、お好み焼、たい焼といった屋台系スナック類がかなり売れている。

これらの業務用、家庭用商材は、共に“日配惣菜のおいしさ、フレッシュ感をいつでも再現できる加工食品”が開発テーマとなっている。そうした意味では、技術革新著しい冷凍食品分野が最もそのコンセプトを吸収しやすいカテゴリーといえる。よって、今日の惣菜・デリの売れ筋アイテムは、いずれも冷凍食品分野でも商品化されヒット商品となっている。

最後に、食品メーカーが自ら惣菜・デリの生産・販売に進出するケースがある。大手CVSチェーンの全国出店展開に併行して、それらCVSへの商品供給に限定した惣菜会社の設立が各地に広がっている。食品メーカーが地域の中小惣菜メーカーを吸収あるいはジョイントする形が一般的。キユーピー、ニチレイ、ニチロ、日本水産、プリマハムなどがその例だ。

特定CVSのベンダーとして事業展開する場合、食品NBメーカーの営業活動において支障をきたすことが懸念される。そのためか、その存在自体を全く広報していないケースが多く、その全容は明らかではない。しかし、惣菜・デリ市場は長期的にも有望な成長市場だけに、食品メーカーの注目度は高く、今後も参入メーカーは増加するものと予想される。

そこで今回は、やはり、惣菜・デリ市場の将来性に着目し本格参入することとなった雪印乳業㈱の事例を見てみることにしよう。

今年8月2日、同社は大手惣菜メーカーのミムロ㈱と両者折半出資による合弁会社㈱フードピア(本社‐東京都新宿区、資本金一億円、代表・倉持康夫〈雪印乳業㈱事業開発部長兼任〉)を設立、惣菜・デリ分野での共同事業を展開することになった。

事業内容は、スーパー、CVS、業務用市場への惣菜・デリの販売。取扱商品は、「ポテトサラダ」「マカロニサラダ」「スパゲティサラダ」などの和え物類と、「きんぴら」「ひじき煮」「うの花」「切り干し大根」などの煮物類が主力。その他、洋風デリや米飯類など。

これらの商品には、日配チルドタイプとセミロングライフ(三〇~六〇日)タイプのものがある。当面は、これまで㈱ミロムが生産していた商品を販売するが、将来的には共同開発によるオリジナル商品の販売も手掛けたい考えだ。構想としては、乳素材を生かしたグラタンやピザなど洋風デリ類が有力である。

販売は首都圏を中心としてるが、セミロングライフ商品についてはその他のエリアへも拡販したい意向。9月1日から営業を開始し、初年度販売目標二〇億円、二〇〇〇年には一〇〇億円を達成したいとしている。

同社が販売する惣菜・デリの生産を担う㈱ミムロ(本社‐東京都狛江市、資本金二億八五〇〇万円、売上高約四五億円〈平成4年6月期〉、代表・三室征一)は、農産物を使った和・洋・中華惣菜をはじめレトルト食品、冷凍食品など幅広く手掛ける大手惣菜メーカーである。大手商社の丸紅㈱との資本、業務提携により、海外の食材調達ルートの開拓やデリカショップ「マイデリカ」の多店舗化など、業界内でも積極的展開をする企業として定評がある。また、本社狛江工場の他、千葉県に最新設備の整った成田工場を保有している。

今回の両社の惣菜・デリ市場での共同事業展開は、販売を目的とした合弁会社の設立に加え、雪印乳業がミムロへ資本参加し、生産合理化、品質管理など技術面や商品開発面強化のための支援を行う。さらに雪印乳業が持つ物流、販売、マーケティング力による支援も行うことになっている。すでに雪印乳業から、ミムロ成田工場長として一名、フードピアへは二名を派遣して、いよいよ本格的なジョイントベンチャーがスタートした。

雪印乳業が二〇年来手掛けてきた調理冷凍食品の開発技術と、乳業メーカーならではの品質管理、コールドチェーンのノウハウ。それと、ミムロが持つ惣菜の生産・供給力と農産品の調達力をうまく噛み合わせて、いかに惣菜・デリ事業を展開させるのか、食品産業、惣菜産業ともにかなり注目を集めそうだ。同社では、これを機会に各地の有力惣菜メーカーと手を組んだ形での惣菜・デリビジネスを推進したいとしている。

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