喫茶特集 気軽にオシャレにニーズ掘り起こしで収益アップ
飲用場所の多様化が急速に進み、加えて運営コストの上昇で喫茶店の店舗数が激減。そのため平成4年の喫茶店の市場規模は一兆四八三三億円と前年より〇・六%減少した(外食総研調べ)。しかし、コーヒーの需要動向調査(全日本コーヒー協会)によると、喫茶店のコーヒーのオーダー率は七五・八%で二年前より五ポイントアップしている。競合店のレストランは五〇・七%、FFは三〇・五%。ということは、コーヒーを飲みたい人にはコーヒーを専門に売る喫茶店が支持されているのである。今回の喫茶特集では、店舗数が伸びているセルフサービスコーヒーショップの傾向、コーヒー需要動向調査から最近の喫茶店の動向、元気のいい繁盛店を紹介し、喫茶店の生き残り戦術を探ってみた。
低価格で気軽に、しかもオシャレにコーヒーを楽しめるセルフサービスコーヒーショップは、個人経営の喫茶店店舗数が減少しているのに比べ、どんどん増えている。ドトールコーヒーショップは現在三一〇店舗を運営しているが、ゆくゆくは一〇〇〇店を目指し、毎年三〇~四〇店出店している。いまのところ九割が首都圏と大阪なので、地方都市など、まだ需要はあるとみている。外食が不況といわれる中、同店は既存店ベースで売上げ二~三%増。
売れ筋は一八〇円コーヒーが主流だが、ジャーマンドック一九〇円は一三年間フードメニューで売上げトップにある。8月にミラノサンド三五〇円を投入してフード売上げの底上げが行われた。同店の特徴はフードメニューのツーオーダーシステムでできたてを提供していること。サンドイッチ類はテークアウトを狙って置いている。
また、二年前から大型インテリジェントビル向けにイタリアン&バー「エクセシオール」を業態開発し、横浜・ランドマークタワーなど四店を運営。コーヒーをセルフで二五〇円で提供、夜はアルコールを置く。フードメニューも充実しており、簡単なディナーもできる。同社は多目的型セルフサービスコーヒーショップとして、今後ドトールコーヒーショップに次ぐ柱に育てたいとしている。
先行しているドトールを追うのは二毛作を武器に急成長しているプロントである。10月1日、東京・青山に五〇店目を出店した。
初の試みとして、カウンターが二ヵ所設置されており、コーヒーとバーに分かれている。壁で仕切るとすみ分けができる構造だ。
「店の面積が広く、若者の町なので、あくまで特例」(ブレス)としているが、そのようなニーズもあるということなのだろう。
プロントの既存店ベースの売上げは寒かった7月は一〇〇%ぎりぎり、8月後半から持ち直し、一〇五~一〇六%にもどった。しかし、二桁で成長してきたので満足できる売上げではないという。
同店は一六〇円コーヒーと夜のショットバーが売りものだが、昼は店内で焼きあげるパイやデニッシュなどベーカリー類七〇アイテムの中から売れ筋をラインアップして豊富に揃えており、コーヒープラスワンで客単価のアップにつなげている。
ベーカリー類はタイムリーに常に棚に豊富に揃えておくのがポイント。将来は大都市圏の就業人口の多い地点に二〇〇店舗の出店は可能とみている。
アートコーヒーも駅周辺やターミナルを中心にヤングアダルト層を狙って四八店舗展開している。この分野には異業種の参入も多く、ダスキンはローコストでグレード感ある「カフェデュモンド」をカフェオレ二五〇~三〇〇円とベニエ(フランス風ドーナツ)で客単価四五〇円の店を一六店展開、最終的には三〇〇店舗目標。
キリンビールはコーヒーショップ、ビヤパブ、ショットバーの三毛作の新業態店「ジラフ」を一二店展開、積極的にFC展開を図るため独立会社を設立、キリンアクトが運営にあたっている。
このほかに、アサヒビールのピザとスパゲティ二毛作店「スタジオバール」、味の素のデリカフェ「PAL・IN」、伊藤園のアンテナショップ一二〇円コーヒーの「オレッツォ」など、各店とも主力のコーヒーに何かを結びつけて特徴を出している。今後、ファーストフード(FF)を卒業した年齢層をターゲットに、新たな業態を形成していくものと思われる。