海外通信 外食ビジネスの新発想(99)連日行列の高級グローサリー

2026.04.06 566号 06面
惣菜類は時期によって入れ替わる。人気のチキンナゲット($17)は定番商品

惣菜類は時期によって入れ替わる。人気のチキンナゲット($17)は定番商品

サラダはドレッシングを回しかけたら蓋をして容器ごとシェイクして完成する仕組み

サラダはドレッシングを回しかけたら蓋をして容器ごとシェイクして完成する仕組み

チキンナゲット6個入りはグルテンフリーの粉を使用しハニーマスタードを添えた人気商品($17)

チキンナゲット6個入りはグルテンフリーの粉を使用しハニーマスタードを添えた人気商品($17)

辛酸っぱい味付けでグリルされたバッファローカリフラワー($14)

辛酸っぱい味付けでグリルされたバッファローカリフラワー($14)

チキンサラダはパンにのせたりサンドイッチの具として使用する($12)

チキンサラダはパンにのせたりサンドイッチの具として使用する($12)

主力の惣菜や飲料を並べる冷蔵棚

主力の惣菜や飲料を並べる冷蔵棚

レジコーナーの奥に花店コーナーも

レジコーナーの奥に花店コーナーも

平日昼時は、昼食を求める様子の女性客が目立つ

平日昼時は、昼食を求める様子の女性客が目立つ

 ●NY食文化をセンスごと提供

 ニューヨーク・トライベッカで連日行列を生んでいる「Meadow Lane(メドー・レーン)」は、自らをレストランでも惣菜店でもなく、「高級グローサリー」と定義する新しい食の業態である。外食と中食の中間に位置し、調理済み食品を軸にしながら、空間や体験を含めたライフスタイルの提案を行う点が特徴だ。

 2025年11月、待望のオープニング当日には、冷え込みの厳しい天候にもかかわらず、建物をぐるりと囲むほどの長い行列ができた。この盛り上がりは偶然ではない。創業者兼CEOのサミー・ナスドルフ氏は、開業準備の過程を約2年間に渡りTikTokでほぼ毎日発信し続け、12万人を超えるフォロワーを獲得した。視聴者は実在する通り名が店名の由来にもなった避暑地ハンプトンズの明るい自宅キッチンでバラエティー豊かなメニューの試食が繰り広げられる様子を楽しみ、許認可や工事の遅延により、開業は冬から春、夏、秋へと何度も延期される様子を見守り、その過程も含めて共有したことで、彼個人とプロジェクトの行方に強く感情移入するようになった。メドー・レーンの開業は、人気シリーズの最終回を待つような一大イベントとなっていた。

 店内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、フラワーアレンジメントの数々と、壁面に配されたアート作品である。買い物かごとして美しい籐かごが用意され、食品売場でありながらギャラリーのような演出が施されており、従来のグローサリーとは明らかに一線を画す空間だ。色とりどりの野菜やドリンク類、そして看板商品である惣菜が美しく陳列され、視覚的な訴求力も高い。入口すぐ左手にはコーヒースタンドが設けられており、コーヒーを片手に店内を回遊できるのも特徴の一つだ。買い物というよりも、空間を楽しみながら商品を選ぶ体験が意識されている。扱われる調理済み食品のレシピは、同社の調理担当チームが手がけており、家庭では再現しにくい完成度と、日常使いできる現実的な価格帯を両立させている。

 ナスドルフ氏は「グルメなテイクアウト食品は、自炊と外食の中間にある」と語る。時間も手間もかかる自炊と、コストの高い外食。その間を埋める選択肢としてのグルメ惣菜は、忙しい都市生活者にとって極めて合理的だ。また、かつてニューヨークの食文化、ライフスタイルを象徴したDean&Delucaの閉業も、構想の原点になったという。食、デザイン、花、空間を一体化させた高級グローサリーを、自らの手で再構築したいという思いが、メドー・レーンに結実した。

 SNSによる事前の関係構築と、店内体験まで含めた業態設計によって、メドー・レーンは開業直後から強い支持を獲得した。中食に物語性と感情価値を付加した点が、行列を絶やさない要因となっている。(井澤歩)

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