電化厨房特集:食品スーパーバックヤード電化厨房最前線=ヤオコー「ヤオコー岩槻西町店」
埼玉県を中心に展開するスーパーマーケット、ヤオコー。昨年10月には100店舗目となる「ヤオコー岩槻西町店」がオープンした。手作りにこだわる惣菜売り場では、デパ地下に負けない質とバリエーションが自慢であり、中でも、「手作りおはぎ」は、お彼岸時期ともなると約18万個も売れる超人気商品という。売り場に並ぶ約100品目もの商品は、同社初の導入となるオール電化厨房で作られている。
●ランニングコスト年間230万円減見込み
ヤオコーでは、これまでにも電化厨房機器を一部取り入れた店舗はあったものの、オール電化の導入は岩槻西町店が初めての試み。さらに同店に続いて2店舗をオール電化にし、実験店として使い勝手やお客の反応などさまざまな面でデータを集め、今後の電化厨房の導入について検討していくという。
オール電化のメリットとして、コスト削減を一番に挙げており、実際、惣菜部門におけるイニシャルコストは従来型店舗よりも520万円増であったが、電気料金に対してオール電化割引が適用され、ランニングコストは年間230万円削減となり、2、3年で回収の見込みという。
さらにCO2排出量も年間約2tの削減となり、環境にやさしい売り場づくりの実現に貢献することになる。
また、大勢のお客が出入りする店舗だけに、安全面の確保といった点でも電化厨房に優位性があるという。
同社では、「売り場の『専門店化』によるおいしさの追求」に取り組んでおり、商品に対するこだわりの1つが「手作り」である。
例えば、人気の手作りおはぎをはじめ、握り寿司のシャリ、いなり寿司、おにぎりなどすべて手握りしたもの。そして、炊飯はすべて店舗の厨房で行っている。
「これまで、ガスで炊いた方がご飯はうまいと言われていましたが、現在ではIH炊飯器でも性能が格段によくなり、ガスと同じ炊き方ができるようになってきました」と、(株)ヤオコーのIR広報室・内藤俊之部長。
現在、惣菜部門で使用している電化厨房機器は炊飯器、フライヤー、スチームコンベクション、餃子焼器、電気グリドル、IH調理器(丼物用)など。そのほかに寿司部門の炊飯器、ベーカリー部門のオーブン、さらに精肉部門ではローストチキン用のオーブンなどが導入されている。また、同店では売り場内に試食販売などのデモンストレーションを行えるオープンキッチンを設け、IH調理器が活用されている。
常時約100品目が売り場に並ぶが、売れ筋商品は「手作りおはぎ」「とんかつ」「鳥の唐揚げ」「お好み焼き」などで、売上げのかなりの部分を占めている。
惣菜商品をリピート購入してもらうためにも、味に磨きをかけることは必要不可欠。そこで現場では、パート従業員にアイテムごとに研修を受けさせ、必要な技術を習得させる技術認定制度を導入。品質の均一化のためにも、この制度は重要という。
ヤオコーの惣菜売り場の特徴の1つがオープンキッチンであり、ほとんどの店舗が導入している。もちろん、同店でもこのスタイルを採用しており、お好み焼きや丼物などの商品が並ぶガラス窓越しに、それぞれ調理の様子を見ることができ、屋台のような雰囲気である。
お客に調理の様子を見せることで、安心・安全をアピールするだけでなく、視覚や嗅覚、聴覚などから購買意欲を刺激する狙いもあるようだ。
現在、惣菜部門を運営する(株)三味の売上げ構成比は14%あるが、次期3ヵ年経営計画の中では16%まで引き上げる予定である。
◆現場のコメント:ヤオコー・新店トレーナー 須永直樹氏
使用頻度が多いフライヤーは、温度の上下幅は少ない方が、油をよい状態で保たせることができます。ガスではなかなか温度を安定させることは難しいのですが、電気は温度帯の復元力がよく、温度を一定に保つことができ、揚げムラを少なく抑えることもできます。
しかし、その一方で、現場で働くパートナー社員(パート)の中には、機械ものの扱いを苦手とする方が多いのも実情。さらに、ガス機器と比べて電化厨房機器はなじみが薄いという場合も多いので、安全に操作して品質の高い商品を作れるように、機器の取り扱いに関するマニュアルの作成や講習会を開くなどして対応したいと考えています。
◆対面調理で作りたてのうまさをアピール 「お好み焼き ミックス(豚・イカ)」(398円)「カツ重」(498円)
惣菜売り場で販売している全アイテム数は、常時約100品目。そのうち、丼物は親子丼、カツ丼など12アイテムあり、1日の平均販売個数は約150個。鉄板焼きは、お好み焼きや焼きそばなど8アイテムで同約140個。
写真の「お好み焼きミックス」は、年齢性別を問わず、幅広い客層から人気。屋台風の対面調理で1枚ずつ丁寧に焼き上げる様子を見せ、おいしさをアピールしている。
◆使用機器紹介:ニチワ電機(株)「電気天ぷらフライヤーSEFT-18K」
調理中、揚げかすが沈殿しないため、油槽底に揚げかすを貯めるスペースをなくし、油の投入量を減らすことで油代の節約ができる。
さらに、油量に合った新ヒーターを搭載することで、従来のフライヤーよりも消費電力を低減し(同社比)、省エネにつながるという。
店舗で使用しているSEFT-27KDモデルは、油量18リットル。スローダウン機構によってヒーター下降時の油はねを防ぎ、安全性も高い。
消費電力=3相200V/4.5kW
◆店舗メモ
●「ヤオコー岩槻西町店」/所在地=さいたま市岩槻区西町2-5-1/営業時間=午前10時~午後9時45分/目標月商=1億4000万円
●(株)ヤオコー/本社所在地=埼玉県川越市脇田本町1-5/事業内容=食品を中心とした小売業が主要業務。埼玉県をはじめ関東6都県においてヤオコー100店舗(2009年1月現在)を展開/企業年商=1853億円(2008年3月実績)
http://www.yaoko-net.com/index.html