外食史に残したいロングセラー探訪(33)にっぽんの洋食 赤坂 津つ井「ビフテキ丼」

2009.10.05 363号 10面
1人前120gとボリュームたっぷりのビフテキ丼。たれの香ばしさとバターのふくよかな香りも絶妙

1人前120gとボリュームたっぷりのビフテキ丼。たれの香ばしさとバターのふくよかな香りも絶妙

50年以上も前から赤坂の地で店を構え、多くの有名人も訪れる「にっぽんの洋食 赤坂 津つ井」だが、建物の老朽化に伴い、2007年秋に赤坂の南部坂に新しく店舗を移転した。創業者のアイデアによって生まれた名物料理「ビフテキ丼」は、30年以上も人気のあるロングセラーメニューだ。

「にっぽんの洋食 赤坂 津つ井」の創業者、筒井厚惣氏は福井県生まれ。料理の勉強をするために上京した厚惣氏は、銀座スエヒロで修業を積み、洋食の基礎を学んだ。

その後、厚惣氏は1950年に茅場町の新川に「津つ井」を創業。1955年に赤坂へ本店を移転する。

厚惣氏の目指した料理は、何度食べても飽きない味の「箸で食べる洋食」。

グラタン、カニクリームコロッケ、ハンバーグステーキ、オムライスといった洋食の定番メニューにはすべて、隠し味に醤油や味噌、酒といった日本人にはおなじみの調味料を使って味を仕上げ、店名通りに「にっぽんの洋食」にこだわり続けた。

その一方で、アイデアマンであったという厚惣氏は、さまざまなメニューを生み出した。例えば、人気メニューの「マルセヰユ鍋」(1890円)は、魚介類を卵でとじた、いわば和風ブイヤベース。また、現在は扱っていないが、食パンを油で揚げて作った器に、タルタルソースとエビをのせてオーブンで焼く「エビ津つ井」など、さまざまなオリジナル料理を提案し、お客を楽しませた。

白いご飯の上に、グリルで網焼きにし、たれを絡めたボリュームたっぷりの牛肉がのせられた「ビフテキ丼」も、厚惣氏が考案したメニューの一つ。仕上げに置かれたバターの風味が、食欲をそそる。

「ビフテキ丼は、ウナ丼をヒントにして生まれた料理と聞いています」と、代表取締役社長の宮下國雄氏。

たまり醤油をベースに数種類の調味料で作られる秘伝のたれは、30年以上も継ぎ足して使われている。

そして、ウナ丼の“サンショウ”の代わりに、ブラックペッパーを振ることで味をピリリと引き締めている。

ロングセラーを続けるビフテキ丼だが、実は10年前、宮下氏の手によってリニューアルされている。

従来のビフテキ丼は、薄くスライスした肉を使っていたため、焼き上がった肉が縮み、見栄えが悪く、「ビフテキ丼というよりも牛丼のような見た目だった」と宮下氏。そこで現在は、量は同じだが、厚みのある肉を、そぎ切りにして使っている。

「長年愛されてきた看板料理に手を加えることに怖さもありましたが、実際には見た目にも、より『ビフテキ』らしさをアピールできるようになりました。厚みを持たせたことで適度なかみ応えもあり、満足感も高くなったことで、常連のお客さまからも好評です」と宮下氏。

ブラッシュアップされたビフテキ丼は、さらにロングセラーメニューとしての歴史を重ねていくことだろう。

◆店舗データ

「にっぽんの洋食 赤坂 津つ井」/経営=(株)津つ井/店舗所在地=東京都港区赤坂2-22-24 泉赤坂ビル/開業=1950年5月/客単価=ランチ1200円、ディナー4000円/平均月商=1500万円

◆こだわり食材:牛肉とコメ

「シンプルなメニューだからこそ、素材の持つ味わいがダイレクトに伝わります」と宮下氏。

ビフテキ丼の主役である牛肉は、銘柄や産地は特に指定していないが、一定のランク以上の国産牛を使用。リブロースではやや脂身がしつこくなるので、サーロインを選び、さらに網焼きにして余分な脂を落とす。

「焼き方は、特にお客さまからの要望がなければミディアムレアでお出ししています」(宮下氏)。1人前に使われる牛肉は約120gと、「ステーキ」と変わらないボリュームがある。

また、コメは「味を重視」して、現在は山形産のコシヒカリを使っている。

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