麦茶・健康茶特集
◆麦茶・健康茶特集:好調続く市場 原料産地限定品が増加
麦茶市場が好調だ。18年のリーフ麦茶販売数量は前年比4.1%増、麦茶飲料生産量は24.3%増となり、麦茶全体で需要が押し上げられた。伸長要因は、これまで夏の定番だったものが、通年商材化されたことが大きい。もともと飲用層が子どもから高齢者まで幅広いのが強みで、カフェインゼロの特徴も支持されている。昨年は夏場の猛暑で熱中症対策需要が増した。ここ数年人気なのが原料産地限定の商品で、麦茶向け大麦の生産拡大が課題になっている。(三井伶子)
●「ポスト滋賀」を探せ 国産大麦の生産拡大へ
麦茶用玄麦を共同購買する全国麦茶工業協同組合によると、18年度の麦茶用玄麦販売は9万tと過去最高を記録。全国清涼飲料連合会調べによる麦茶飲料生産量は102万3700klで、9年連続の大幅増となった。昨年は夏場の猛暑が貢献したが、好調の背景にはさまざまな要因がある。
ここ数年、飲料メーカーが新商品を投入し、市場を活性化している。今年、サントリー食品インターナショナルは業界初となる缶容器入り濃縮タイプ麦茶を発売。“持ち運びが大変”な大型PETと“抽出するまでに手間と時間がかかる”ティーバッグの悩みを解決する商品として開発された。
一方、リーフ麦茶は徳用パックが主流で、大手一極集中の構図は変わらない。価格も50パック入りが150円以下で販売され、低価格化が進行している。
「麦茶を安売りする時代は過ぎた」と、差別化が図れる付加価値商材に注力する動きも見られる。オーガニック製品や、はと麦、ルイボス、ショウガなどをブレンドした健康茶が女性を中心に支持され、市場にとってプラスアルファになっている。
売り先の分散・多様化も進む。大手以外のメーカーはなかなか一般市場に入り込めず、ネットやカタログ販売といった新たな販路を開拓。徐々に売上げが伸びている。「スーパーの棚に入らない大容量サイズでも、ネットやカタログ販売なら玄関先まで持ってきてくれる。高齢化が進む中、スーパーにはない隠れた需要がまだ潜んでいる」(メーカー)
○麦茶は「スリーK」
消費がリーフからPETに移行しているとはいえ、小さな子どもがいる家庭ではリーフの徳用を買って、家で煮出したり水出しで作るのが一般的だ。ティーバッグ1袋当たり1~2円レベルと極めて経済的で、夏場の熱中症対策や水分補給にもこの上ない飲み物だ。全国麦茶工業協同組合は「パックの麦茶はスリーK(健康的、家庭的、経済的)」をキャッチフレーズに、まだ知られていない麦茶の機能性や手軽に飲める経済性をアピールしている。
○産地の囲い込みも
ここ数年人気なのが、原料の大麦産地を限定した商品だ。麦茶向け大麦の生産地では関東のシェアが高く、長野、岐阜といった新たな産地も増えている。ただ、大麦はコメや大豆と比べて収益性が低く、需要がある一方で全体的な生産面積は増えていない。また、同じ大麦でも、もち麦の生産にシフトしてきている。
業界は麦茶向け大麦の生産拡大に向け、産地へ働きかけている。例えば、滋賀県はこれまで1000t程度だった小粒大麦の生産量について、20年産は3500tを予想し、有望な麦茶向け大麦の産地として注目されている。「ポスト滋賀を探せ」と、新たな産地の開拓が課題になっている。