チーズ特集
◆チーズ特集:“ニューノーマル”迎えた堅調市場 底力発揮へ高まる期待
堅調な市場として裾野を広げてきたチーズ市場だが、今年度は新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響で、新たな局面を迎えている。消費行動など「新しい生活様式(ニューノーマル)」の浸透が進む中、家庭用市場は「巣ごもり消費」の定着で需要が高水準を維持している一方、外出自粛の継続などで業務用市場は苦戦が続く。各社、安定供給を最優先とし底堅い消費者ニーズに対応しているが、販促活動や商品理解の浸透についても、今までとは異なる方法がますます求められていきそうだ。先行きが不透明で暗い空気があることも事実だが、こうした時こそ、今では遠くなってしまった海外の空気を感じられるナチュラルチーズ(NC)や、家庭でのさまざまな楽しみ方を提供するプロセスチーズ(PC)の、カテゴリーとしての底力の発揮が期待される。(小澤弘教)
●生産・需給
農林水産省が7月17日に公表した19年度(19年4月~20年3月)の「チーズの需給表」によると、総消費量は前年比1.5%増の35万8229tとなり、5年連続で過去最高を更新した。NC輸入量も昨年に引き続き最高記録を更新し、同2.6%増の28万6938t。健康志向に加え、おつまみ・料理需要の高まり、外食メニュー定着などを背景にした堅調な需要が見られた1年となった。
内訳は、NCが前年比3.5%増、PCが同1.5%減で着地。両カテゴリーとも直接消費用(PC原料以外)での伸びが見られ、特に輸入NCでは前年比3.8%増となった。
一方、国産チーズ生産量は、NCが同2.2%減。PC原料は同7.0%減となり、合わせてPC生産量も微減となったが、直接消費用は同1.9%増となった。家庭用・業務用ともにチーズの使用が定着し、喫食機会も増加していることがうかがえる。
●家庭用市場
家計調査を見ると、19年度の1世帯当たりチーズ消費は引き続き前年を上回って推移した。各社取材を総合すると、家庭用チーズは金額で1~2%増、数量で2~3%増と推測される。PCは金額・数量ともほぼ前年並み、NCは約5%増で推移したとの見方が多勢だ。
PCは最大ボリュームのスライスと、ポーションがほぼ前年並みを維持し、ベビーが家飲み需要の高まりで伸長。NCはシュレッドが料理用途の浸透で、大容量化トレンドで数量が金額の伸びを上回った。カマンベールは一昨年の健康報道効果の裏年となったが、ブルーチーズと同様にベースアップが続く。
昨年度第4四半期(20年1~3月)からは新型コロナウイルス禍による影響で、需要が急激にアップ。外出・外食の自粛や在宅勤務の定着、臨時休校などさまざまな要因が重なったことで、「巣ごもり消費」による内食需要が高騰。全国に緊急事態宣言が発令されるなどした4~5月はピークを迎え、例年の最需要期である12月を上回る高水準で、前年比2桁増での推移となった。
時期を経るにつれてニーズの高まるタイプに変化が見られるのも特徴だ。感染拡大が問題化した当初は学校給食や外食の代替として、パスタと合わせて粉チーズの需要が高騰。その後外出自粛・テレワークの開始で朝食・昼食向けにスライス、シュレッドが伸長した。さらに自粛ムードが長期化を見せ始めると、ストレス・疲労感の蓄積から「楽しみ」の方向へ推移し、クリームチーズなど菓子調理用途や嗜好(しこう)性の高い商品が伸びてきている。
ただし、スーパーマーケットなどでの購入点数が増加している一方、販促方法や売り方にも変化が迫られている。店頭での試食販売が休止され、イベントなどでの理解促進が難しい状況にある。各社は供給責任を第一義に生産設備をフル回転させているが、デジタルコミュニケーションの活用や、ストーリー性を持たせた商品設計など、現在の状況での最善策を講じている。下期からも、新たな生活様式における消費者志向に応える商品展開を計画。最需要期に向けてPC、NCともにさまざまな取組みが進みそうだ。
●業務用市場
19年度の業務用チーズ市場は、家庭用同様、チーズ全体の消費量拡大を背景に、金額・数量ともに前年をクリアしたと推測される。
外食では、チーズタッカルビやラクレットなどが一過性のブームで終わらず、定着しつつあることで需要が継続した。宅配ピザなどでのチーズ増量や、これまで使用していなかったチーズレシピなども生まれている。製パンでは、ソフト系商材が堅調に推移。高級食パンブームが続き、生クリームなど他の乳製品同様、新たな使い方の兆しも見えてきた。コンビニエンスストア(CVS)のカウンター商材もアイテム数が増加。バスク風チーズケーキも商圏を変えながら市場として広がりを見せている。
しかし、新型コロナ禍が始まると、外食、ホテル、学校給食の需要が激減。リテールベーカリーでもアイテムの選択と集中が進むなど、依然としてマイナス傾向が進み、例年を大きく下回った市況となっているのが現状だ。
一方、各チャネルでのチーズを使用した商品に多様性が見えてきていることも事実。若年層にもSNS映えなどビジュアル面でも認識が進んでおり、CVSベンダーをはじめ、チーズを使った商品開発意欲は高い。下期以降は新たなルート開拓と需要喚起が復調の鍵を握りそうだ。
●輸入動向
海外から日本市場へのチーズ輸入量を見ると、これまで拡大を続けてきたものの、1~6月は久々の前年割れとなった。各商社、サプライヤーとの関係強化などに取り組み、調達網の多角化を進めている。特にアイルランドは日本市場に対し積極姿勢。
新型コロナの感染拡大以降は、中国にリーファーコンテナが滞留したことで、2~4月に納品の遅れが発生したり、航空便のストップなどでフレッシュの輸入が一時滞ったりするなどの影響が出たものの、現在の物流は問題なく稼働している。
しかし、冷蔵倉庫スペースの逼迫(ひっぱく)は大きな不安材料。国産乳製品の在庫も積み上がり気味で、東京五輪パラリンピックを見込んでいた食材の動きも鈍い。さらに海外相場が一時下降した際の買い付け分の保管の必要性などもあり、「秋も綱渡り状態が続く」(商社)との見方も強い。コスト面での圧迫も出てくることから、業務チャネルをはじめとした、チーズの持つ健康や情緒的価値をあらためて訴求するなど、新たな需要喚起策が必要となってくると思われる。
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