安全でヘルシー、美味なカンガルー肉に注目 新たなジビエマーケットの拡大も期待

近年の美食ブームの流れの中で、個性的な食材、新しいまたは伝統的な食材に対しての消費者の関心が高まっている。鳥獣類に関しては、捕獲した野生鳥獣肉、すなわちジビエに対する注目が集まる。その人気の高まりを受け、厚生労働省では平成26年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」が作成され、それに沿う形で一般社団法人日本ジビエ振興協会も衛生管理ガイドラインを作成した。ジビエ肉は衛生面・安全面で不安、という以前のイメージは、このような指針の策定により払拭(ふっしょく)されようとしている。

ジビエとして注目されるカンガルー肉

単に珍しくておいしい食材、ということに留まらず、栄養面でも注目されているのが、オーストラリアのカンガルー肉である。野生のカンガルーは、オーストラリアの人口よりも頭数が多いといわれており、食肉用のカンガルー肉は全て狩猟で捕獲されるジビエ肉である。

狩猟で捕獲される純天然ミート(ゲームミート)は、自然界で餌を自力で食べているため、餌が添加物や抗生物質に汚染されていない。しかも近代的な専門工場で精肉されているため、衛生管理も行き届いている。とりわけオーストラリアは食肉の衛生管理について世界で最も厳しい基準を設けているので、カンガルー肉は安全な食材といえよう。

カンガルー肉を用いた料理例「ルーサラダ」(写真提供:バセル)

オーストラリア国内では、一流レストランはもちろん、食肉売場でも販売されており、カンガルー肉のレシピ本も多数販売されるなど、一般にも広く普及している。欧州でも普及していて、輸入量は約5000トン以上にも及んでいる。ジビエ肉への関心が高いフランスも輸入しており、注目が集まっている。

わが国では「ルーミート」の名前で輸入され、ヘルシー食材であることから、トップアスリートを中心に需要は増え始めている。

ヘルシー食材としてのカンガルー肉

カンガルー肉はヘルシー食材だと考えられている。それはなぜか。

栄養面での特徴を挙げてみると、まず高タンパクで脂質は2%未満というのが大きい。さらに、少ない脂肪の40%は、健康面で積極的に取った方が良いとされる多価不飽和脂肪酸。当然低エネルギーで、100g当たりわずか110kcal。コレステロールは体内で量が調整されることから、かつてよりは気にする必要がなくなったとはいえ、100g当たりわずか54mg。さらに近年注目されている「共役リノール酸」が豊富という、ヘルシー食材なのである。

カンガルー肉と牛、豚、鶏、羊肉の各種栄養素の比較(筆者作成)

共役リノール酸は、体脂肪燃焼効果と筋肉増強効果が期待され、サプリメントにもなっている成分。脂肪酸の一種であるリノール酸が変化したもので、人の体内で合成することのできない不飽和脂肪酸である。カンガルー肉はこの共役リノール酸が一般的な精肉(牛・豚・羊肉)に比べて豊富で、脂肪1g当たりでは牛肉の約6倍以上含まれている。

共役リノール酸の含有率比較(筆者作成)

アスリートも注目「おいしいから長く続けられる」

このような栄養的特徴から、わが国で最初にこのカンガルー肉に関心を示したのは、アスリートだった。彼らは食べ続けることでの肉体的変化にいち早く気付き、この食習慣を継続し、パフォーマンス向上につなげている。

そのほか、ダイエット志向の人、メタボを気にする人、生活習慣病の罹患者・予備群、アレルギー体質の人などに効果が期待できるため、飽食といわれるわが国では、今後ますますニーズが高まるものと思われる。

カンガルー肉を用いた料理例「ルーランプステーキ」(写真提供:バセル)

肉の味はクセがなく、サッパリとしており、赤身の肉でありながら、とても柔らかいグルメ食材でもある。これらの栄養的効果を得るためには、継続した摂取が必要であり、そのためには「おいしい」ということが何より大切である。「おいしいから長く続けられる」のだ。ルーミートのホームページには、オンラインショップやおすすめレストラン情報、レシピのページなどがあり、参考になる。

安全性・健康面・味のいずれもが優れているカンガルー肉は、新たなジビエマーケットの掘り起こしとなることが期待できる。まだ一般には広く知られていないが、今後大きなビジネスチャンスを生み出す食材となり得るだろう。一過性のブームに終わらせないよう、じっくり戦略を練って普及させてほしいものだ。(「食生活」元編集長 清原修志)

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