生産量全国2位でも知名度低い「西尾の抹茶」 コラボ焼酎で話題喚起へ
2017年から発売している宝酒造株式会社の「寶CRAFT」シリーズ。国内の特産品を使用したこだわりのクラフト焼酎は、じりじりと人気を定着させ、スーパーなどでは定番の商品の一つとなっている。地域限定商品であり、特産品の需要の拡大、話題の喚起といった効果を持つ「寶CRAFT」シリーズの中から愛知の「西尾の抹茶」に焦点を当て、地域活性化につながる魅力を紹介したい。
お土産にもなる地域限定チューハイに
「西尾の抹茶」は2009年に登録された地域団体商標であり、「愛知県西尾市・安城市・幡豆郡吉良町で生産された茶葉を同地域においててん茶加工・仕上げ精製し、茶臼挽(ひ)きした抹茶」を指す。生産は盛んで、全国でも宇治抹茶に次ぐ2位の生産量だ。しかしお茶の生産地としての認知度は生産量から考えると低い。
それには理由がある。西尾の抹茶は茶道で飲まれる抹茶や、菓子類をはじめとする食品の加工用に使われるが、加工用が多くを占めるため一般消費者の目に入りにくいのだ。
2017年9月宝酒造株式会社は新しいチューハイシリーズ「賽CRAFT」を立ち上げた。第1弾は「栃木ゆず」。全国の特産品を使用し、ベースアルコールは素材に合うものを選ぶ「ひとてま造り」で製法したこだわりの商品だ。「ひとてま造り」とは、合わせる素材の特徴を吟味し最大限生かせる焼酎を約2万樽、約85種から厳選し、丁寧に仕込む製法である。2019年11月現在商品ラインアップは32種類になる。
2019年7月に発売した「寶CRAFT 西尾の抹茶」は東海3県で発売している商品である。東海3県発売の限定商品としては「愛知蒲郡みかん」に続く第2弾に当たる。スーパーなどではずらりと並ぶ光景を目にすることも多く、根強い人気がうかがえる。
「寶CRAFT」とのコラボレーションをしていることで、特産品であることは陳列を目にするだけで把握できる。また、地域限定商品の魅力は、その希少価値の高さにある。お土産として購入されることも多いため、商品を手にする顧客は東海3県に限らない。
「寶CRAFT」のこだわり抜いた仕上がりは高い評価を得ており、それぞれが他地域限定商品の購入意欲を喚起し合っている。地域限定商品シリーズの強みの一つだ。
なお、東海3県の「寶CRAFT」は「愛知蒲郡みかん」「西尾の抹茶」に続き、「犬山の桃」が発売している。
苦味も甘味もあることで、幅広いペアリングが可能
「寶CRAFT 西尾の抹茶」は抹茶の上品な苦みとともに、さりげない甘さと強すぎないアルコールのバランスが良い。炭酸は強くなく、より抹茶を深く味わうことができるものだ。
苦味も甘味もあることで、料理にも合わせやすい。チョコレートや和菓子といった甘味はもちろん乾き物との相性も良い。あっさりとした苦味はコクのある料理にも合う。愛知ならではの赤味噌を使った料理などうってつけである。
シンプルに特産品の名前が商品名となっていることもあり、それを目的としている人の目に留まりやすく、また、飲食店のメニューに並んでいるだけで認知度が上がる。
さまざまなメリットを含む「寶CRAFT」の話題を喚起するポテンシャルは高い。認知度を上げたい特産品にとって非常に相性の良い商品と言えるのではないだろうか。(栄養士ライター 瀬山野まり)